肉を斬らせて……
⚪︎八十八十一視点
「簡単に言ってくれる」
雪墨の叫びを聞きつけ、俺はぽつりと呟いた。
鳥居は八咫烏に掴まって空を舞い、羽や棍で敵に打撃を加えている。俺と琴がその合間に攻撃を差し込むものの、決定的な一撃には至らない。
雷喰いの巨大な骨の腕が振り下ろされる。攻撃をかわすと、腕は激しい音を立てて地面を叩き割った。敵が腕を引き抜く前に、俺は槍で深く突きを入れる。確かな手応えはあるが、敵の体力が生半可ではないようだ。
ただ、雪墨が俺に無茶を求めてくるということは、後方も相当に切羽詰まっている証拠だ。急がねばならない。
俺は槍を横になぎ払い、押し寄せる骸骨どもを力任せに排除した。
「鳥居、宮板。顔面に一撃を叩き込む。援護を頼む」
バックステップで距離を取ると、槍を構えて一気に全速力で突進する。道中、雑魚の骸骨が放つ攻撃が肌を掠めるが、構わず無視した。速度を最高潮まで引き上げ、跳躍する。
だが、雷喰いの反応も速い。すぐ横から巨大な手が迫ってくる。
「ちょ、十一さん、先に言ってや! これ結構難しいんやで!」
飛び立つ寸前、琴が俺の足元へスライディングで滑り込んできた。そのまま倒立し、足から放たれる風の衝撃波を俺の背中に叩きつける。
雷喰いの手が届く前に、俺の身体は爆発的に加速した。空中での回転から天井を強く蹴りつける。重力を味方に向け、全体重を乗せた極限の一突き。
槍が顔面に深々と突き刺さり、雷喰いがおぞましい絶叫を上げた。その悲鳴がもたらす音圧で俺の身体は吹き飛んだが、宙を舞っていた鳥居にしっかりと受け止められる。
「十一さん、無理しすぎですよ! せめてもっと早く指示を出してください」
「四の五の言っている場合じゃあるまい。文字通り『肉を切らせて骨を断つ』だ」
全身の感覚を確認するが、動かない部位はない。俺は再び槍を構え直した。
「作家の先生なのに、意外と脳筋やなぁ」
隣で宮板が呆れたようにぼやくのだった。




