疾風と激流の共闘
⚪︎八十八十一
鳥居は呼び出した八咫烏の足にすがりつくようにして上空を滑空し、宮板は両足にまとわせた「かまいたち」の刃風を爆発させて地面を疾走する。
機動力と速度に優れる二人が、先陣を切って輪入道の群れの中へと突っ込んでいった。
「――フン、後押しなら任せろ!」
俺も遅れをとる気はない。愛用の長槍をぐっと握り直し、地を蹴ってふたりの後に続いた。
ジョーの放った聖水と、雪墨が低空に描いた矢印の術式が見事に決まり、足元を払われた輪入道たちが豪快に転倒する。隙だらけになったその車輪の中央――苦悶に顔を歪める醜悪な面へ向け、俺は一点突破の突きを繰り出した。
ズドォン! と手応えが柄を通じて腕に伝わる。
「グアアアッ!?」
断末魔の叫びを上げ、狂ったように回転していた車輪が勢いを失っていく。ゆっくりと回転速度を落とした輪入道は、やがて灰のような霊素となって空気中に消滅した。
一撃離脱を見舞ったものの、ボイラー室の内部は灼熱の気流に覆われており、息をするだけで喉が焼けそうだ。すると熱気のアジトの奥から、さらなる増援の輪入道たちがゾロゾロと姿を現した。奴らはその車輪の顔をこちらへ向け、口を大きく開くと一斉に烈火の炎を吐き出してきた。
「そうはさせん……!」
俺は咄嗟に槍を目の前で激しく高速回転させた。槍身から溢れ出る霊的な水の流気が巨大な渦を描き、襲い来る灼熱の火炎を真っ向から受け止める。凄まじい水蒸気が立ち込め、皮膚を焼く熱気が伝わってくるが――これくらい、大した痛手ではない。
水幕の向こう側へ向かって、俺は声を張り上げた。
「鳥居! 宮板! こいつら遠距離攻撃も持っている、気をつけろ!」
いちおうの注意を飛ばすと、すぐさま上空と前方から声が返ってきた。
「大丈夫です、十一さん! 十一さんも気をつけてください!」
八咫烏の上から冷静に状況を見極めている鳥居の声。続いて、風を切って走る宮板の威勢のいい声が響く。
「わかってますって! 十一さんこそ、私と違って足回り(移動力)がないんだから無理しないでよ!」
――ふっ、逆に心配されるとはな。
俺は敵の火炎が途切れた絶妙なタイミングを見逃さず、回転させていた槍の軸をピタリと止めた。一瞬の隙を突き、柄を構え直して一気に間合いを詰める。
あがきのように再度炎を吐き出そうとする輪入道に対し、今度は技に頼らず身一つで最小限に体を捻って回避。すれ違いざま、渾身の力でその顔面を貫き、床へと叩き落とした。
「――心配は無用だ」
背後に倒れ込む敵を一顧だにせず、俺はボソリと呟くと、群がる怪異たちを払うべく再び力強く槍を振るうのだった。




