出来損ない魔女のハッキング
⚪︎日影映子視点
私の名前は日影映子。
幽玄堂でカメラマン、およびパソコンなどの機器全般を担当している。
私もみんなと同じで魔導師の家系に生まれた。
だけど、みんなと違って私はそんなに強くない。使える能力だって、ちょっとした物を動かすのが精一杯。
正直、一族の中でも出来損ないだった。
だから私は、機械に力を求めた。霊力を動力にする機械。私自身は強くないけれど、これならみんなをフォローすることができる。
退魔の世界は古いしきたりを受け継ぎ守ることが伝統で、新しい技術に目を向ける人は少ない。
だからこそ、私はジョーさんに憧れた。
彼が開発したエンドライトの技術は、この業界でも革新的だと注目を浴びている。そうして憧れの幽玄堂に入社した私は、ジョーさんの協力も得ながら日々霊動機器の開発に励んでいるのだ。
幽玄堂こそが、私の本当の居場所だった。
「矢木くん!! 大丈夫!?」
「俺なら大丈夫です!!」
私の問いかけに元気な答えが返ってきて、ホッと胸を撫で下ろす。
さっきは思わず突発的に矢木くんを引っ張ったけれど、周囲のみんなが察してカバーに入ってくれたおかげで助かった。私は矢木くんが背負っているバッグに、霊力で編み上げたコードを飛ばして接続し、誘導する形で強引に引っ張ったのだ。
私の能力は『トリッキーコード』という。霊力のコードを接続した物体を自在に操作できる能力だ。ただし重量制限があり、操作できるのは五十二キロまで。つまり、私自身の体重以下の物しか動かせない。能力の適用範囲を少しでも広げようと頑張ってご飯を沢山食べたのだけれど……悲しいかな、増えた体重は全部胸にいってしまい、これ以上の制限解除は諦めるしかなかった。
私はビデオカメラのモニター越しに、群がる骸骨と矢木くんの様子を観察する。
「どういうことかしら……?」
ふと疑問が口をついて出た。矢木くんばかりが集中攻撃を受けるということは、操り主から直接命令が出ているか、あるいは彼自身にターゲットを引き寄せる呪いがかかっているかの二択。だが、怪異の波長を捉える特殊カメラのレンズを通しても、そういった反応は一切検出されない。
私は黒いローブの裏から手のひらサイズの金属円盤を取り出し、そこへ霊力コードを素早く接続した。すると私の目の前の空間に、蒼く光る霊力のホログラムモニターとキーボードが浮かび上がる。
「みんな、ちょっと霊場を乱すわよ!」
声を掛けつつ、プログラミング操作で円盤を天井付近まで一気に浮上させた。そして仕上げに空中キーボードのエンターキーを強く叩きつける。円盤から高濃度の霊波が全方位へと散布され、骸骨たちの意識を強力に惹きつける囮となって弾けた。




