締め切り嫌いの天才絵師
⚪︎雪墨鈴々莉視点
うちの名前は雪墨鈴々莉。
一応、幽玄堂でイラストレーターとして仕事をもらってる。
うちにとって絵を描くことは命そのものだし、自分の世界を紙にぶつける時間が何より大好きだ。
……ってか、これしか出来ない。
うちに、普通の会社員ができるとは思えないしね。
……まあ、締切なんていう無粋な約束を守るのは大の苦手だけどね! 締切直前になると現実逃避したくなるのはクリエイターの性でしょ?
そんな締め切り破りの常習犯であるうちを見捨てず、なんだかんだ面白がって絵を描かせてくれるこの幽玄堂には、それなりに感謝してるし愛着もあるんだよね。
「分かってるっつーの!!」
十一の号令に、うちは間髪入れずに言い返す。別にスルーすればいいんだけど、十一が相手だとついつい張り合いたくなっちゃうんだよね。
うちは筆を滑らせ、空間に黒々とした墨で線をいくつも描く。墨は重力に逆らうように、空中へピタリと留まった。
「行けっ!」
短く叫ぶと、墨の線は鋭い矢となって一斉に飛翔し、迫る骸骨たちの胸を容赦なく貫通していった。今度は空中に大きな円を描き、それを高速回転させながら解き放つ。回転する墨の刃は、群がる骸骨を数体まとめて真っ二つに切り裂いた。
「よっしゃ!」
うちは思わずガッツポーズを作る。
実をいうと、うちは陰陽師の家系出身だ。それなりに由緒正しい血筋らしいんだけど、詳しい歴史なんて覚えてない。普通の陰陽道なら、紙に呪文や文字を書いて護符にして使うのが当たり前。だけど昔、護符作りにすっかり飽きちゃって適当に筆を振り回してたら、なんと空間に直接墨で絵や文字が描けちゃったのだ。うちの一族でこんなこと出来たのは、後にも先にもうちだけ。
……もしかしてうちって天才?
そんなわけで我流を極めた結果、護符を介さずに直接墨で攻撃したり防御したりできるようになっちゃったってワケ。
「ねぇ、十一! どっちが多く倒せるか勝負しようよ!」
「仕事だぞ、ふざけるな。……それに、俺はお前に負けるのが怖いから断る」
「ちっ……先を読まれたか」
断られたら「負けるのが怖いんだ~?」って煽って無理やり乗せるつもりだったのに。先手を打たれてニヤリと笑う十一に悔しがりながら、うちは再び筆を豪快に振るい、骸骨どもを蹴散らしていくのだった。




