九十九を紡ぐ文筆家
⚪︎八十八 十一視点
俺の名前は八十八十一。
文筆家をやっている。
我が家は代々、退魔士を業としてきた家系でな。まあ、もっとも退魔士をやっている奴はだいたいそういった家柄の出身だが。
俺も童の頃から妖魔退治に打ち込んできたし、それが俺の世界のすべてだった。
だが、大人になった今はそればかりでは食っていけず、生活のことも考慮せねばならん。
幸いにも昔から読書が好きだったし、柄にもなく物語を書き綴る作業も嫌いではなかった。
俺に普通の会社員が務まるとも思えんしな。
そうして『幽玄堂』に拾われ、文筆家・八十八十一として活動しているというわけだ。
……ジョーの馬鹿野郎が。
一般人かどうかも確認せずに現場へ連れ出す奴があるか!!
俺は心の中で盛大に毒づいた。車へ荷物を積み込む手際があまりに素早かったため、てっきり身体強化系の能力者か何かだと思い込んでいたが、ただの素の体力(野球部仕込みの身体能力)だったとはな。
俺はキセルを深くひとふかしすると、懐から一枚の半紙を取り出した。そこへ鉛筆でさらりと文字を走らせる。
『煙管の火種と煙を束ね、妖を焼き尽くす一振りの炎刃とならん』
書き上げた半紙をキセルに巻きつけ、一喝する。すると半紙はみるみるうちにその形状を変え、長大な日本刀へと姿を変えた。俺はそれを三度ほど空で振るい、手応えを確かめる。よし、馴染んだ。
次の瞬間、俺は肉薄してきた至近距離の骸骨を一刀両断に切り伏せた。真っ二つに裂けた骨は、刀身から噴き出した炎に包まれ、一瞬にして灰へと変わっていく。
「火葬の手間くらいは省いてやる」
息をつく間もなく、さらに一振り。迫る骨の群れを薙ぎ払う。
この世には『付喪神(九十九神)』というものが存在する。永き時を経たあらゆる万物に宿る神気だ。俺はその付喪神の力を借り受けることができる。半紙に物語(文章)を紡ぎ、対象に貼り付けることで、その付喪神の性質に応じた武器へと変化させるのだ。
どのような武器になり、いかなる能力が発現するかは、文脈と対象の相性次第で変化する。だからこそ俺は、この歳になるまで……いや、これからも永遠に武芸を磨き続けねばならんのだ。
「一般人が混ざっているんだ、とっとと片を付けるぞ!」
押し寄せる骸骨の波に向け、俺は威勢よく号令をかけるのだった。




