青春の裏口、オカルト専門出版社
話は数日前まで遡る。
「何かいいバイトないかな」
俺は部活帰りのルーティンだった商店街を、あてもなくぶらぶらと歩いていた。
野球一筋で走り抜けてきたこれまでの青春は、自分なりにやりきったと思っている。来る日も来る日も真っ黒になりながら白球を追いかけ、仲間と汗を流した日々。そこに後悔はない。だが、残念ながら最後の夏は負けてしまった。
燃え尽きた感情の裏で、ふと湧き上がってきたのは「もっと普通の高校生らしい青春も味わってみたかった」という本音だ。友達とカラオケに行ったり、ちょっといい服を買ってみたり、美味いものを食いに行ったり。だが、そのためには何はともあれ金がいる。
「さて、何をするか……」
高校生のアルバイトといえば、コンビニやファミレス、ファーストフードあたりが定番なんだろう。だが、正真正銘の野球バカだった俺は、愛想よく客に対応するような接客業にまったく自信がなかった。
かと言って、塾の講師や家庭教師みたいな頭を使うバイトなんて論外だ。高校生活のすべてを部活に捧げすぎてきたせいで、学業の成績は赤点ギリギリの壊滅状態。頭を使う仕事なんて務まるはずもない。
何か俺の取り柄である、体力とか根性とか、そういう脳筋な部分をそのまま活かせる都合のいいバイトはないだろうか。
そんなことを考えながら歩いていると、街角の古びた掲示板の前で、ふと一枚のポスターが目に留まった。
独特なタッチの墨絵で描かれた怪しげなイラストに、毛筆で書かれた、どこか古風で力強い文字。
「何々……『幽玄堂出版社』……?」
書いてある文章をじっくり読んでみると、どうやらそこはオカルト雑誌や怪奇本を専門に扱っている出版社らしい。そして一番下には、太字で大きく『取材時の荷物持ち、および社内雑務全般のアルバイト急募!』と書かれていた。
「おっ、これはいいんじゃないか!?」
重い荷物を運ぶ取材の同行なら、まさに体力勝負だ。接客も勉強も関係ないし、ちょっと怪しくて面白そうじゃないか。
そうと決まれば、グズグズ迷っている時間はない。グラウンドで培ったフットワークの軽さだけが自慢の俺は、さっそくポケットからスマホを取り出し、ポスターに記載された電話番号へ発信ボタンを押した。
断られたらその時はその時だ。まずは体当たりあるのみ!




