一般人、怪異の餌食になる
各自懐中電灯を手に、ゆっくりと廃病院の中へ入っていく。俺は撮影道具がギッシリ詰まった肩掛けカバンを担いでいた。ズシリとした重みが肩に食い込む。俺は恐怖で足がすくみそうになっていたが、みんなは割とズケズケと奥へ進んでいく。
映子さんが、ビデオカメラで入り口付近の風景を撮影していた。気になって画面を覗き込んでみると、そこにはぼんやりとした白い何かが写っている。俺は普段、オカルトなんてまったく信じないタイプだが、流石に鳥肌が立って身がすくんだ。
「これって……本物の幽霊ですか!?」
思わず小声で尋ねると、全員が一斉に首を縦に振った。
「あー、下り階段の方に向かってますね」
映像の中で、その白い何かはスーッと階段を下りていく。
「俺たちに勘付いたかな」
「まあ、待ち構えてるだろうな」
ジョーさんと十一さんが落ち着き払った声で交わす。いくらオカルト雑誌の社員だからって、冷静すぎるだろ!
その時、ポンと肩をつつかれ、俺は声にならない悲鳴を上げた。
「矢木くん、大丈夫? 顔が強張ってるよ」
「び、びっくりさせないでくれ……口から心臓が飛び出るかと思った」
情けない声を漏らす俺に、鳥居が優しく微笑みかける。
「大丈夫、何かあってもフォローするから」
暗闇の中で見る鳥居の笑顔が、やけに眩しかった。
そして、全員で地下へと下りていく。
「ほら、来おったで」
琴さんの言葉と同時に、暗闇の奥からカタカタと音を立てて骸骨が現れた。眼球がないはずの眼窩が、不気味に赤く輝いている。
「こりゃ涼さんに任せておけば、いいか」
鈴々莉さんが頭の後ろで手を組み、呑気な声を上げる。
「最終的には。ただ、少し数が多すぎますね」
「オッケー。じゃあ減らしますか」
俺がガクガクと足を震わせていると、一斉に骸骨たちの首が向きを変えた。……心なしか、全員が俺のことを見ているような気がする。
次の瞬間、すべての骸骨が一斉に俺に向かって襲いかかってきた。
——これが、俺が『幽玄堂』にアルバイトとして採用されてからの出来事のすべてだ。
この時はまだ、自分がとんでもない事に巻き込まれたのだとは、思いもしなかったんだ。
⚪︎次の投稿より、各人の一人称を繋いでいく形式になります!!




