↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(株)幽玄堂出版社の副業DAYS ~あなたの未練、私たちが叶えます。成仏エネルギーも回収します~  作者: 三海 古風


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
103/105

少年の戸惑いと男達の応援

⚪︎矢木剛斗視点

「おう、矢木。どうだった? ちゃんと綺麗に謝れたのか?」


 ジョーさんが、青白い煙草の煙をくゆらせながら、面白がるようにニヤニヤと聞いてくる。


「メールの効果、ちゃんと発揮されたみたいでよかったですね」


 涼さんが、どこか楽しげな声音で問いかける。琴さんと仲が良いだけあって、このいつもは穏やかな涼さんも、実はけっこう茶目っけのある人なんだよな。ただ、そのサポートの効果が効果抜群すぎたせいで、今の俺には返す言葉が見つからない。


「おかげさまで、なんとか。今度、お詫びにケーキビュッフェを奢るということで無事にまとまりました」


「ほう、それは良かったじゃないか。お詫びとはいえ、堂々と女の子とデートにまでこぎつけるとは、矢木もなかなかやるな」


 ジョーさんが楽しそうに意地悪く笑う。


「いやいや、デートなんてそんなロマンティックなもんじゃないですよ。ただ二人でビュッフェに行って、一緒に甘いもんを食うだけですってば」


 俺は必死に笑って否定した。すると、その言葉を聞いた途端、ジョーさん、十一さん、そして涼さんの三人が、揃って不思議そうに首をかしげた。


「いや、どう見てもそれは100%デートだろうが」


「それ以外の何ものでもないな」


「さすがに大勢の前で『可愛い』って絶叫して女の子を誘っておいて、『デートじゃない』と言い張るのはちょっと無理がありますね」


 ――マジか!? これって、やっぱり世間一般で言うところの「デート」なのか!?

 そういえば、よく考えたら俺は今まで女の子と二人きりで出かけたことなんて一度もないぞ……!

 一気に血の気が引いた俺は、ジョーさんを見て、十一さんを見て、最後に一番頼れそうな涼さんの顔を見て必死にすがりついた。


「涼さん、俺、生まれてこのかたデートなんてしたことないんです……! 一体どうしたらいいんですか、教えてください……っ!」


「おい矢木、俺と十一を華麗にスルーしたな!?」


 ジョーさんからすかさず容赦ないツッコミが入る。だって、この二人はそういう恋愛事情とか疎そうなんだもん……!


「まぁ、俺とジョーに聞かないのは、至極賢明な判断だな」


 十一さんは愛用のキセルを片手に、クククと楽しそうに肩を揺らして笑う。


「ふふ、大丈夫ですよ。当日はそんなに気負わず、いつもの感じでいけばいいんです。デートだからって変に肩肘張らずに、ただ二人で楽しめばいいんですよ」


 涼さんからいただいた優しくも的確な金言に、俺はすーっと肩の力が抜けて少しだけ気楽になった。

 その時、静かな車内に涼さんのスマホの通知音がピンと響く。涼さんは画面を覗き込み、ふと柔らかな笑みを浮かべた。


「そういえば……小夜さんは、本当に可愛い方ですよね。正直、私から見てもすごく魅力的だと思います。学校でもすごく人気があるんじゃないですか?」


 涼さんが、興味深そうに鳥居の話題を振ってくる。さっきすでに「可愛い」と盛大に叫んでしまった後だからか、不思議とさっきほどの強い恥ずかしさは薄れている。俺は少しだけ頬を染めながら、照れくさそうに答えた。


「そうなんですよ。鳥居って、普段は目立たないようにしてるみたいですけど、実は密かに男子どもから人気あるみたいで……。もし学校の同級生とかに見つかったらどうしようって、今からちょっとビビッてます。変にからかわれたりしますかね?」


「へえ、やっぱりそうなんですね。矢木くんもなかなかの幸せ者ですね。私たちは日頃からあの子の巫女姿は見慣れていますけど、あの子なら何気にどんな服装を着ても絶対に似合いそうですよね」


 涼さんは楽しそうに話を続ける。


「例えば、フリルがいっぱいついたとびきり可愛いお洋服とか、あるいは意外性を突いて琴さんみたいなハンサムなパンツスタイルとか、さらに思い切って鈴々莉さんみたいな最先端のギャルルックとか……。矢木くんとしては、デートの時に小夜さんにどんな格好をしてきてもらったら一番嬉しいですか?」


 涼さんはニヤニヤしながら、肘でグイグイと俺の脇腹をつついて探ってくる。俺は顔を真っ赤に茹でダコのようにしながら、ボリボリと頭を掻いた。


「やっぱり……王道ですけど、可愛い系の服ですかね。俺、あんまりファッションの細かいところは詳しくないですけど……」


「ふむふむ、フリルとかリボンとか、そういう女の子らしい飾りが沢山のやつ?」


「いや、そこまでガチガチに女の子っぽくなくてもいいかな……。なんていうか、もうちょっとシンプルですっきりした感じの服の方が、鳥居には似合うと思うし好きっすね」


 言葉を選びながら、恥ずかしがりつつも素直な気持ちを口にする。すると、涼さんは俺の返事を聞きながら、手元のスマホを何やら「ポチポチ」と楽しそうに高速で打ち込んでいた。


「さすが我が社の敏腕営業担当だな。大方、琴あたりに探りを入れろと言われたんだろ。実にいいリサーチだ」


「恋は盲目とは、まさに今日の矢木のためにあるような言葉だな」


 少し離れた場所で、ジョーさんと十一さんが笑いを必死に噛み殺しながら、ヒソヒソと何か話しているような声を漏らしている。


「――はい、お疲れ様です。矢木くん、当日は思いっきり楽しんできてくださいね」


 スマホの画面で送信ボタンをピッと押した直後、涼さんは満面のニッコリとした笑顔で俺の背中を応援してくれる。


「ありがとうございます……!! デート、死ぬ気で楽しんできます!! たとえ途中で同級生に見つかって『ロリコン』とからかわれたとしても、一切気にしません……ッ!!」


「「「お前な……そういうとこだぞ(ですよ)!!」」」


 三人の見事なハモりによる強烈なツッコミが、駐車場に盛大に響き渡るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。