第85話 住民集合!
「おおぉお!集まってきたー!」
昼過ぎになると、わらわらと人がギルド前の広場に集まってきた。私たちは、階段を上がったギルドの入口の前にいるので、他の人よりも高い位置にいる。
なんだか天界で目が覚めた時を思い出す。あの時のようにいろんな獣人、人間がいる。そしてスラム街状態だった頃よりは多少表情がマシな様子だ。
あ、あれはメリケンおばさんじゃなかろうか。すっかりしょんぼりしちゃって…着てる服もすっかりここの住人だ。
まぁ…罪ある成金が莫大な借金を負った平民になったにすぎない。牢屋にぶち込むということも一瞬考えたが、生かしておく維持費がもったいないのでやめた。やはり働いて返してもらうのが一番だ。どうせ逃げられないし。ハクちゃんがやつらを逃がすわけないもん。
「そろそろそろった頃かと思います」
そんな物思いにふけっているとギルマスが教えてくれた。私は持ってきたスピーカーとマイクの電源を入れる。
「あーあーマイクテストマイクテスト。本日は晴天なり。後ろの人たち聞こえるー?」
一番後ろにいるロウ君が腕で丸を作ってくれたが、狼の聴覚で聞こえてもなぁ。
「人間の皆さん聞こえるー?」
私がそう言うと、いつも炊き出しと銭湯を往復している常連のおばちゃんがロウ君と同じように大きな丸を腕で作ってくれた。
「皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます。初めましての人は初めまして、怠惰の神です。最近まで人間やってたのですが、死んだら神になりました。なので、皆様のご状況は他の神よりわかっているつもりです」
そういうと、住民たちはざわざわし始めた。神が自分たちに丁寧に話していること、元人間とは、などいろいろと聞こえる。
「えーそこでまず、皆様を苦しめることになった元凶の好奇心の神一行からの謝罪と、これからここの長を務めることになるギルマスから自己紹介をどうぞ」
「「えっ!?」」
聞いてないという神と人間の声がそろった。まずは前任の謝罪と新担当からの挨拶、当たり前だろう。
そこからはギルドのシステム、住民登録やメープルの証、先日の断罪イベント、商人地区の居住禁止、家の抽選などなど今まで取り決めたことを話した。住民からは時々色々な声が上がったがマイクの音量の暴力でもみ消してとりあえず一気に話した。
「さ、それでは質問やご意見がある方はどうぞ」
ここからは質疑応答の時間です。
「なぜそこまで清潔にこだわるんだい?俺たちは濡れるのが嫌いなんだよ」
むむ!あれは猫獣人さんですね。それはそうでしょう!そうなんですが…
「排泄した直後で手も洗ってない人から渡されたもの食べられる?嫌でしょ?そういうのは病気も運ぶんだよ。ここには獣人含め、いろんな人がいる。誰に何が毒や病気の原因になるかわからないんだ。
それに何と言ったって、秋エリアには大きなビアホールができるのです!あ、ワインも飲めるよ。あと獣人の皆さんが喜びそうなメニューもいっぱい考えてるところだから楽しみにしていて!」
それを聞いた住民たちは沸いた。今日一番の興奮ぶりだ。そうでしょう、そうでしょう。お酒が飲める場ができるとなれば、清潔な人から提供されたいでしょう。
「楽しみですね!?ね!?なんて言ったってあの広い商店を作り替えるのだから結構な広さになります。飲食店が一番、清潔でないといけないんだよ。だから最低限ここの住民は清潔にしてもらう。だからちゃんと大衆浴場で身体も頭も洗って、トイレの後も手を洗って。はい、他には?」
「俺は管理されるのは嫌だ。住民登録なんかしない」
「どうぞ?好きにすれば?」
「は?強制じゃないのか?」
「強制じゃないよ。登録したくない人はこの領土を出ていけばいい。
それか、ここにいてもいいけど大衆浴場は使えないし、不審者扱いされることになるけどそれでもいい?
あと、今住んでいる家があるならそこも所有者なしになるから、芸術の神たちの計画しだいだけど取り壊しか、他の人が住むことになるよ。それでもいいなら好きにすればいい。
それに私は何かあなたにあっても何もしないよ。私の庇護下の住民じゃないからね。はい、次はー?」
おや、静まり返ってしまった。当たり前のことなのに。
「あの…それは…登録したら、逆にもし私たちに何があれば助けてくれるということですか…?」
「基本的にはさっき説明した通り、住民の皆さんを手助けするのはギルマスたちになる。さらにその後ろには好奇心の神がいる。
ただ、今回好奇心の神には前科がついたからね。好奇心の神も頼りにならない上に、ギルマスたちの手に負えないことがあれば、私ができる限りのことをするよ。
ただ、悪いことをしているとわかったら容赦はしない。ビアホール予定地の元商店を経営していたあそこの人たちのこと、知ってるでしょ?
自分の領民が死にかけたり理不尽に虐げられていると気になって心置きなくダラダラできないからね」
「凪、最後に本音出ちゃってるわよ」
「あれ、ムーン、なんでステルスモードなの?」
いつの間にかムーンがステルスモードで後ろにいたらしい。私はマイクを切って小声で背後に話しかける。
「なんか知らないけど、ふらふらしてたら私にそっくりなでっかい石像ができてたのよ!何あれ!?それを聞きにきたのよ」
あ…伝え忘れてた…
ムーンがあのサイズになってここらを夜にでもふらついたら、石像が動き出したなんて怪談ができてしまいそうだ…
私は一旦無視してもう一度マイクの電源をだ入れる。
「じゅ、住民のみなさん、できれば今日、このままギルドで住民登録を!今日がどうしても難しい人は2週間以内に住民登録を済ませてくださいね。
今行っている炊き出しは、あと2か月毎日続けますが、そこまでです。それ以降は自分で生きられるようにしていってください。じゃ!解散!」
「やっぱりあれ、私なのね!?あの像は私なのね!?なんで!?これじゃあいろんなもの拾いにこっち来れないじゃない」
そろそろ住民がギルドに入ってくるので入口から離れたものの、その間、後ろからずっとムーンは文句を言っていた。
ごめんって…
読んでいただきありがとうございます!
なんやかんやムーンさんは心配で来たんだろうなっ!
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