第86話:予想外と計算通り
しばらくはムーンさんをどうどうしつつ、住民たちの様子を見ていたものの、大きな揉め事もなく進んでいるようだ。
中にはやはり登録をしたくないとギルド前で話し込んで迷っている人もいるが、それはもう本人の自由だ。自分で決めてもらうしかない。
ギルマスの受付もスムーズだった。文字が書けない人は代筆をしてあげたりと柔軟に対応している。
特にリーさんが流石の動きをしている。その背後にいるヴァルトの威嚇も効果てきめんだ。
好奇心の神一派も流石に今日は働いている。というか住民の相手が面白いらしい。
「さわってもいい!?さわってもいい!?」と前のめりで聞き、尻尾やら鱗やら獣人たちを触りまくっている。
マイヤー長女も一生懸命、親身に相手をしてくれているようだ。
今さら…名前、聞きづらいな…今度こそっと誰かに教えてもらおう。
私は帰るから何かあったら呼びに来てとだけ伝えて、帰宅した。
あぁ!久々の我が家…!いや、毎日帰ってきてはいたんだけど心ここにあらずというか…ひと段落ついた開放感がすごい。
いつもの通り一通り、おかきやもふもふたちに飛びついてこねくり回したあと、自分の部屋でひたすら寝た。
寝て起きては漫画を読み、アニメを見て、みんなをこねくり回して寝る、何という素晴らしい日々でしょう…
とはいえ、あれから2週間くらいだろうか。そろそろ登録票を取りに行くか。データに起こさなければいけない。
ひとまずギルドに転移すると、住民たちで賑わっていた。すでに住民登録も終わってクエストボードがクエストボードとして機能している。
ボードを見ると、風呂掃除、解体作業、農家、牧場、いろんな手伝いのクエストが貼られていた。
ほぉ、もうこんなに…と感心していると、目の前の獣人さんの耳に目が止まった。犬?猫?の耳に、輪っかのピアスに付けられた、メープルの住民証が揺れている。
よく見ると、ブレスレット、チョーカー、色々なものに加工して身に付けられている。
その発想はなかった!感心していると、突然リーさんの声がした。
声がした方を見ると、リーさんがツカツカとすごい勢いでギルドの扉に向かっていく。
「まぁ!とっても大変なお仕事をしてくださったのですね!」
リーさんの視線の先を見ると、泥だらけの虎の獣人が扉を開けて入ろうとしていた。
「せっかく素敵な毛並みが乱れていらっしゃいますよ。報酬は逃げません、先に湯浴みをして疲れを癒して来てはいかがです?」
そうにっこりとした笑顔に、一瞬虎さんはポッとして間が空いたあと、自分の泥まみれさに気付いたのか、急いで出て行った。
さすがだ…「そんな泥だらけで入ってくるな」とあんなに上品に言えるとは…
マイヤー長女が受付のカウンターの中で猛烈な勢いで何かメモをとっているのが見えた。
よく見るとリーさんは、髪を結っている簪に住民証がついている。ぷらぷらと揺れるその美しさに、この流行を作ったのもリーさんだと確信した。何気に木彫りの小さい狼もくっついている。
まっ!見せつけやがって!
でも狙い通りだ。リーさんに会うのに小汚い、臭い、そんな格好で来る人はそういない。美少女のマイヤー長女も然り。
現に今ギルド内にいる人間、獣人は清潔な人ばかりだ。
よしよし。でも2人じゃ休みが取りづらいから他にも受付嬢を探さねば。「あんた!そんな汚れた格好で入ってくんじゃないよ!」とかズバズバ言うおばちゃんも良いな。
クエストに求人を出しておこう。
ふとクエストボードとは反対側の壁を見ると、ものすごく大きな絵画が飾られている。
な…!?なんだあれは!?
「ちょっと!?あんなもの飾った覚えはないんだけど!?」
私は急いでカウンターの中にいたギルマスに詰め寄る。
「え?そうなんですか?芸術の神が2晩くらいで描きあげていきましたよ。これがあれば、大抵の神もその眷属も、ここに手を出す気にはならないでしょうっておっしゃってました」
あの神…ただでかいキャンバスが欲しかっただけだろう!
そこにあったのは、爆風に黒髪がなびき、全てを薙ぎ払う女の絵だった。絵画の下のプレートには『全てを無に帰す荒神』と書いてある。
どう見ても私だろ!
読んでいただきありがとうございます!
どこまでも破壊神扱い!
もし『このキャラ好き』『この場面笑った』みたいなものがあればぜひ教えてください。
ブックマークしておくと更新通知が届くので、続きが気になった方はぜひ。
もし宜しければ評価もいただけると、大変励みになります!




