第74話:井戸をつくる
さてさて、やることは山積みだ。さっき作った公衆トイレに、使い方を書いたパネルを設置する。
まぁ要するに昔々のボットン便所ではあるのだが、どんなとんでもない使い方をする奴が現れるかわからない。
あとは温泉にも入り方を書いたパネルを設置せねば。
中に入ると、湯気でムンッとした空気になっていた。すっかり湯船ができている!排水もきちんとできていそうだ。
さて、パネルには何を書こう…
一つ、身体をよく洗ってから湯船に浸かること
一つ、長い髪は束ねて入ること
一つ、よく水分を落としてから脱衣所に出ること
一つ、トイレは事前に済ませておくこと
あとは…走るな危険、と。これくらいかな?
せっかくお風呂に入れるのだから、炊き出しに来ていた人たちに、大衆浴場を勧めるも、気乗りしない様子だ。
しかし、ここで食い下がるわけにはいかない!頼む!入ってくれ!
「湯浴みが…できるのですか?」
ひとりの女性が、声を上げてくれた。気品溢れる仕草というか、ここにいるべき人ではないような人がいる。
私は思い切り首を縦に振って頷く。
「まぁ!何と嬉しい!後宮にいた頃以来だわ!わたくし、必要なものを取りに行ってまいります」
後…宮……?すごい人がいたもんだ…
「じゃあ私も!」と次々と女性陣がつられて行った。この辺りのカリスマなのかもしれない。
男性陣も、「あんたも臭いから入ってから帰ってきなよ!」というおばちゃんの一言に始まり、わらわらとお腹が満たされた人から大衆浴場に移動して行った。
ふぅ。このまま習慣付かせねばなるまい。
「おーい、井戸の候補、見つけたぞー!」
ダイチに呼ばれたので、息つく暇もなく井戸づくりに取り掛かる。
「何ヶ所ありました?」
私がそう聞くと、10ヶ所と言われた。
「その中から、周囲に人が住むのに適してそうなのは?」
「うーん。大衆浴場や商業エリアとの生活の動線を考えると5ヶ所かな…」
スイは転移ができないから、自分自身歩く必要性がある上に、動物好きということもあって、生態や生活の動線を見るのが趣味らしかった。
よくムーンやたぬきの動線を見て、理解できない…と家で首を傾げている。
スイの判定を全面的に信頼することにして、その場所に井戸を作る。
バケツを放り込むタイプではなく、棒の部分を上下に何度か動かすと、ドバドバっと水が出てくるタイプにした。
これなら人間も獣人も使いやすいだろう。
あとはこの井戸を中心に、芸術の神に頼んで町設計を頼もう。
「ここの水ってこのまま飲めるの?」
「うーん。どの生き物がどれくらいの汚れに耐えうるかによるからなぁ…人間は1回沸かすとかしたほうがいいかもね」
確かに。獣人と人間じゃお腹の強さが違いそうだ。立て札も立てておこう。
これをあと4回繰り返した。
神力はまだあるが、流石に疲れた…もう帰りたい……
炊き出しの場所に戻ると、風呂上がりでさっぱりした人たちがいた。
視察できた時よりは、笑ってる顔が増えた。
「ハクちゃんたち、今日は一旦もう撤収しよう。神様たちもありがとうございました。家で神力水を作ってあ…」
人の話の途中なのに転移していったぞあの4柱。おかきがここにいるから、水神様しか入れないのに…
「えっと…スイはどうせ家に帰ってくるでしょ?他のお三方はどうする?」
「久々に行こうかしら。銭湯にも寄って帰りたいし」
フウがそう言うと、エンとダイチも来るらしかった。
「しらたまたちー!運んであげてー!今日はありがとねー!フウは飛んでけるよね?」
「そうね、大丈夫よ」
いいなぁ。私もどうにかして飛べるようにならないもんか。
ちょうどフク君も戻ってきた。フク君には、空から見てこのあたりの地図を作ってもらっていたのだ。
「勇者パーティは明日もここにいる?頼みたいことがあるんだよね」
「ギルハルト…まぁいいや。わかりました。明日は狩には出ないでおきます」
この人材たちを逃してはならんと社畜時代の私の勘が告げている。あとさっきの後宮にいたという女の人!
「じゃあハクちゃん、私とおかきたちは先に転移して帰ってるね。鍋とかはどうせ明日も使うし、ここに置いていこう」
私は簡易の物小屋を作って、家に帰った。早く風呂に入って寝たい…
門の前に着くと、家に入れない3柱が外で待っていた。
「おい、入れないじゃないか」
人の話は最後まで聞きましょうね。
昨日は結局、私は早々に風呂に入ってビールを飲んで寝た。やはり人や神々と一気に会うと疲れるな…
4柱は、ドンたちにうるさいと外に追い出され、家の外で飲み明かしたようだった。
昼前に起きて、2階の窓から外を見ると、水神コンビ以外が酔い潰れていた。
わぁ。どこぞの都会の始発前のようだ…何で私の神力水で酔っ払うんだ?これも怠惰効果か?もしそうならもう何でもありだな、と思いながらその光景をしばらく眺めていた。
今日は勇者パーティと会わなければならない。あとあの美人。
さすがにまだドンたちを連れていったら住民が怯えそうだしお留守番、そしてフクくんには引き続きダミー会社の方の処理をお願いした。
「シャフくーん。今日行く?美人いたよ昨日」
「美人!?それどころじゃないっす!隣の美人に殺されます!」
「回復アイテムは捨てる前に僕に要らないか聞けるよね!?」
「はいぃっ!」
戦の神はもはやシャフ君の部屋に住み着いている。どうやら二人組で組むFPSゲームに変えたらしい。
ゲームが変われば戦略も変わるからなぁ。
「そうか、生きろよー」
昨日5分で帰った後からずっとやっているのだろうか。なんだかんだ本人も楽しそうだからまぁ良いか。
もし『この神好き』『この場面笑った』みたいなのがあれば教えてください!
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