第72話:大衆浴場をつくる
まったくもう。自分がなんか規格外なのは分かったから、周りも慣れてほしいものである。
次は…とりあえず大衆浴場かな…
「ねぇ、勇者、あの辺も人は住んでない?」
「あの…勇者でなくてギルハルトと申します。あの辺も同様です」
なんか強そうな名前ですな。
「ところで水神様、この辺って水源あります?」
巨大化したしらたまに埋もれていた水神様を引っぺがして聞いてみると、川が近くにあるとのことだった。
「じゃあ地神様とダイチは、ちょっとこの辺に大衆浴場作るので、水引くの手伝ってください」
「私たちは何のために呼ばれたのかしら…?このあたりの整備をしてるってことよね?」
あ、説明してなかった!
私は、あのぴーちくぱーちくな好奇心の神と眷属たちが管理をできておらず、スラム街になってしまったことや、その責任をとって急いで復興をしていることを伝える。
「なるほど、話はわかった。それで俺たちは何をしていれば良い?」
炎神様が風神様が、頼もしく頷く。
「炎神様と風神様の出番はもう少し先なので、ちょっとあの例のT字になって温風だすやつを、炊き出しの人に向けてやってくれます?ほら、寒そう。フウとエンのペアでもできるよね?
よろしくどうぞー!」
そう言って私は地神様と水神様、ダイチにスイと、大衆浴場を作ろうとしているあたりに向かう。
振り返ると、炎神様とエンが納得いかないと言う顔で腕を組み、仁王立ちで風に吹かれていた。
やっぱり神と眷属は似てるんだなぁ。
「あ、ここここ、この辺り」
もはや屋根に草が生え、一部崩れ落ちているような家が並ぶ一角で止まる。
私はしゃがんで石畳でもなくなっている地面に指で絵を描いた。
「こんな感じで、川から水路を引いて、途中に濾過スペース、で、排水が川下に流れるようにもう一個水路を作って、その間にも濾過スペースを作りたいんですよね」
説明すると、地神様がふむふむ、と答えてくれた。
「要は地面を凹ませて道を作れってことだよな?でも泥水になるんじゃないか?」
「いや、そこは私が神力でコンクリかなんか作って固めるから大丈夫」
「ほぉ?まぁなんかよくわからんがやるか」といった雰囲気だ。
地神コンビはとりあえずまぁやってやるかという、頼もしさがある。
「それで僕たちは何をしたら良いんだい?」
水神様が聞いてきた。
「この川の水って、どれくらいなら引き込んで大丈夫なのかとかを見て欲しくて。あと早くあの人たちに身体洗って欲しいから、また水溜めるの手伝って欲しいんですよ」
「どれくらいの大きさのものを作る予定なの?大衆浴場だっけ?あの銭湯より大きいの?」
おや、スイは珍しく真面目モードだ。と思ったら、小さくなって肩に乗ったしらたまに頬ずりをしながら喋っていた。
「うーん25メートルプールくらいは欲しいよなぁ…銭湯の、男湯と女湯を合わせた広さの3倍くらい?」
「それは結構な量だね。他からも水脈を引っ張ってきた方が良いなぁ…足りるかな、天界の神力…また時の神が出て来られなくなって拗ねられるとめんどくさいなぁ…」
水神様の本音が漏れている。
「私が神力の献上回数を増やせば何とかなる?」
「君の神力量、本当にどうなってるの?まぁそれなら大丈夫だけど」
神力の量は知らん!たぶん無尽蔵に近い。
話し合った結果、とりあえず建物を先に建てることにした。
「おーい!名前なんだっけ…勇者ー!ちょっと来てー!」
強そうな名前だったこと以外もう忘れた。
勇者が走ってくる。
「ギルハルトです。何でしょう?」
私は作ろうとしている施設と、今後にお湯を沸かしたり、掃除など、実運用面などの労働力の確保をここの住民で賄えるかという話をしていた。
農耕の仕事がもうできないお年寄り、女や子供でも掃除や火の管理をすることはできるし、十分運用できそうとのことだった。
お湯を沸かすタンクを別の部分に作って、そのお湯が浴槽に流れ込むようにすれば良い。
私は漫画で読んだ古代の大衆浴場と、学校のプールの記憶を合わせる。
私の学校のプールには、出入り口にシャワーがあって有無を言わさず身体を流されてから入った。
それをイメージして…
「はい!どーん!!」
イメージ通りの巨大施設ができた。町の景観にも馴染む外観、中は入り口の左右で男女に分かれる。
進むと、ロッカーがある脱衣所、そしてそこを進むと、シャワーが降り注ぐ場所を通り抜け、浴場になる。
我ながらよくできたものだ!
「「す、すごい…」」
なぜか好奇心の神と、あの眷属がいる。今は家の周りのお金を処理しているはずだ。
「何でここにいるの——?」
「何やら面白いことが起きていると聞いてきました!」
ほぉ…?
「怠惰の神の私が働いてるのに…遊びに来ちゃったんだぁ…へぇ?
もう、好奇心の神、いらないかもしれないなぁ…?
仕事しないならあの領地の家もいらないね?こういう風に、外に出るから家空けがちだもんね?
もう更地にしちゃおうかなぁ…?」
思い切り笑顔で凄む。許さぬ…私が責任をとって働いているのに自分だけ遊んでいるなんて許さぬぞ…
「ひぇええぇ!すみません!仕事に戻ります!」
好奇心の神たちは走って戻って行った。後ろ姿に向かって叫ぶ。
「転移をしろ転移を!走るな!効率が悪い!」
「なんか…なんだかんだお前も苦労してるんだな」
地神様がなぐさめてくれた。
その同情もあってか、水路もサクサクでき、私がコンクリートでコーティングし、水神様コンビも加熱用タンクに水を注いで時間短縮してくれた。
「しらたま、ちょっとおかき連れてきて」
濾過スペースには、いつもの邪悪な落魂を使うので出て来られないように結界を張ってもらわないといけない。
あっという間におかきとおかき専属暖房スライムが到着した。しらたまの首に何か布が巻きついている。
大量の邪悪な落魂が入っていた。
「ムーンが取れたての色が濃い邪悪な落魂の詰め合わせって言ってたよぉ」
さすがムーンさん!やることを分かっていらっしゃる!
いつもの手順でポイポイ濾過スペースを2箇所作る。
排水の方は汚れた水だから、邪悪感の濃い落魂にしてやろう。生前の悪行を反省したまえ。
徐々に風呂に水が溜まっていく。
「炎神様ー!エンー!出番ですよー!」
加熱用タンクの上に登って、遠くに向かって大声で呼ぶと、炎神様はエンの肩に手を置き一瞬で同時に転移してきた。
「さ、この水の中に入ってください」
「「は?」」
「ほら、ふたりが浸かってるとお湯が熱くなるから、うちの銭湯を出禁になったんでしょ?今、お湯を沸かせる労働力がないんで、とりあえず浸かっててください」
ばしゃーんとお湯を沸かすタンクに突き落とす。
さ、次々!トイレの整備かな!やることは山積みだ。サクサク行こうー!
読んでいただきありがとうございます!
凪の怠惰は効率化に振り切れると原初の神々すらこき使う様になるくらい、天界に馴染んできましたね!
もし『この神好き』『この場面笑った』みたいなものがあればぜひ教えてください。
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