第70話:好奇心の神
好奇心の神って今どこにいるんだろう…名前からしてどう考えても、うちの子たちに興味を示すはずなのにな。見たことないな…
強制召喚できる時の神は今日は家に来てないし…水神様もいない。
うーん。会ったこともないしなぁ…
「おーい、戦の神ぃ!好奇心の神ってどの辺に出没するか知らない?」
今日もシャフ君の部屋に来ていた戦の神に聞くと、ゲームの画面から目だけ逸らさず、窓の外を指差した。
外…?
「ぅえっ!?誰!?何!?何で窓から部屋の中覗いてんの!?」
そこには、塀のすぐ外に生えている木に登って、こちらを見ている神がいた。
ヒヨコのような黄色で、くるくるの癖毛の女神だった。
「い、戦の神のストーカー的な何かですか…?」
ガラッと窓を開けて聞くと、首を横に振った。
「違います。そのゲームを見ているの。人間界を覗いた時よりも近くで見れるから。シャフ君が前からやってたのは見てたんだけど、戦の神との連携が面白くて」
「シャフ君は…あの神と面識が…?」
「いや、なんかいつも見てくるなとは思ってたっすけど、いつももふもふ部隊が追い払ってたから気にしてなかったっす」
こいつには自分のプライバシーを気にするという概念はないのだろうか。
「あなたが好奇心の神ってことね?」
大きな声で木の上にいる女神に話しかける。
「はい。あなたが顕現してから、度々来ていたのですが、なかなか気づかないので、いつ気づくかなって気になって…実験してました。いよいよ見つけましたね。初めまして」
奇妙な初対面である。
「は、初めまして…つまり、うちの周囲をこそこそ覗き見するのに一生懸命で、領地の運営をほっぽり出していたと…?」
「まさか!ずっとじゃないですよ。
もちろん銭湯も冬エリアの双子の神の温泉も行ったし、戦の神のイベントも見てたし、小角さんを見つける旅にも出てましたけど…
居住エリアの運営ならちゃんと眷属に任せてますよ?え?まさかあいつ何もしてない?」
ほぼストーカーじゃないか!!
「居住エリアならスラム街になってたけど…」
「え!?」
「え!?」
…………………。
「とりあえず、そっち行くからそこにいて…」
玄関から出ようとすると、ちょうどきなこがお散歩から帰ってきた。
「ねぇ、あの神知ってる?」
「あぁ、いつもいるから気づいた時にはシッシッてしてたよ。ほら、凪がよく庭のミニトマトに鳥が来てた時みたいにさ」
気づいてなかったのは私だけなのか…
とりあえず、塀の側の木に向かうと、好奇心の神が誰かと言い合ってるのが聞こえた。
「何で神様がここにいるんですか!?僕置き手紙書いてきましたよ!?」
「あんたこそ何でここにいるのよ!しばらく留守にするから居住エリアよろしくって言ったじゃん!」
眷属と思しき、言い合い相手も、ヒヨコのような黄色い髪の青年だった。
ピーチクパーチク言っている。
「もしもーし。話を聞く限り、お互い行き違いで管理が漏れていたってことね?」
言い合っていても民の腹は膨れない。とっとと片付けてしまおう。
「いえ!あたしはちゃんとこいつに、伝えました!」
「僕は聞いてません!いつ言ったんですか?絶対聞いてません!」
「言いましたー。あんたが家になんかドミノ倒しで仕掛け作ってる時に言いましたー」
それ集中しすぎて耳に入ってないやつやん…
「はぁー?それいつの話ですか?」
「前怠惰様が海綿動物になったときよ!前怠惰様を見に行って、しばらく海を満喫してくるからよろしくって言ったじゃん!」
それ……つまり100年は放置されてたってこと…?
「ストップ!とりあえずすぐに炊き出しと救援活動!」
私はすぐに自分の眷属を全員緊急招集した。
戦の神がシャフ君を「もう1戦だけ…」と離さず、「どうせ1位取るまで辞めないでしょ」と引っ張り合いになり、「私のために争わないでっ!」などと本人はどっちつかずな態度を取ったので、ドンと協力して戦の神を抑えて、何とかシャフ君も引きずり出せた。
商業エリアの売上の一部は、きちんと別の徴収専用の眷属が集めているはずだと言うので、好奇心の神の家に行く。
徴収専用の眷属はいなかった。
『ちょっと春エリアに遊びに行ってきます』という書き置きだけがあった。
こいつらー!!!
好奇心に抗えなさすぎだろー!しかし、売上の一部と思われるリーフが入った小袋がたくさん家の周りに積まれていた。
商売人たちがまともで良かった…
それで食糧を買い込み、人間時代に災害時のニュースで見たような大きな鍋を神力で作り、溶き卵や塩で味つけした重湯を調理して炊き出しを行った。
匂いにつられて、獣人や人間が集まってくる。とてもじゃないが幸せには見えない。
ど、どこから手をつけたら良いんだ…
とりあえず衣食住の確保だ。本格的な建築と街づくりはおいおい芸術の神に任せるとして、無職の人たちには職ならいくらでも用意できそうだが、今はそんな体力はないはずだ…
久々に原初の4大元素の神々を召喚するしかない!




