第64話:話し合い
規律の神との勝負に勝ち、武神の天守閣も直し終わって家に帰ると、ハクちゃんとシャフ君が小躍りしていた。
「そんなに儲かったの?」
「はい!それはもう!今月はお小遣いアップです!」
私に賭けた人、あんまいなかったのかなぁ…
「ホームとアウェイの違いってやつだね!」
たぬきが得意気に私の心の声に返事した。まぁ儲けたんならよし!
最近回線が遅くていらいらしていたネット環境も強化できるし、人間界のものも堂々と買いにいける!
これが勝者の特権…
ふふふふ…
清々しい気持ちで風呂に入り、人間界で買い溜めしておいたビールとおつまみで祝杯をあげ、そのままこたつで寝てしまった。
翌朝、時の神と規律の神、戦の神がやってきた。
ムーンにベシベシ顔を叩かれ、寝起きで玄関を開けたところで気づいた。
あ、やばい…ビールの空き缶とかそのままだ…前々から勝手に人間界に行って買い物してたことがバレる…!!
誰か証拠隠滅を…!!と思い、急いで振り返ると、スイが熱帯魚のコリドラスたちと協力してごみを大急ぎで床下の証拠隠滅スライムの穴へ片付けてくれていた。
助かるー!!さすが水槽のお掃除係の定番コリドラスさん!スイはいつの間にか熱帯魚とコミュニケーションが取れる様になっていた。
時計を見るとまだ9時。人の家を訪ねる時間じゃない。大変非常識である。
「人の家を訪ねるときは、もう少し遅い時間が常識ではないですかね?」
一言文句を言うと、規律の神に始業は9時からです、と言われた。
知らん。私はだいたい11時過ぎから活動するのだ。
「それで、何の用ですかー?取り決めは御神木のとこでって話だったじゃないですか」
そう言うと、戦の神がまぁまぁと割って入った。
「あそこだと多分、話にならないんだよ。とりあえず中入れてくれない?」
家の中を見ると、スイがグッと親指を立てて合図してくれた。ありがとう!
「どうぞ」
中に招きつつ、何故御神木のところじゃダメなのかを聞くと、今日は青年の時の神が答えた。
「いやぁ、実は正義の神がね、割って入ってきそうなんだよねぇ…
何か彼、最近暴走しがちらしくて…」
それは面倒くさいな。おかき製結界で入ってこれないうちは最適な場所だろう。
「僕もこの間、小角さんの件について色々言われた。身勝手すぎるって」
スイが、たぬきの肉球で遊びながらぼやいているが、それは正義の神が正しいと思うぞ。
「それで本題なんですけど…」
私たちは取り決めをした。まず、魂の管理に影響が出る可能性がないとも言い切れないので、戸籍の改竄はせず、「企業」を作ることで、資金の運用やらお金周りのやりくりをすることになった。また、介入していいのはあくまで資産運用と購買行動や消費活動のみ。
ダミー会社の設立なら、シャフ君のハッキング能力で簡単にできてしまうだろう。何てったって、アニメの人間離れしたチート級ハッカーをモデルに作った眷属だもの。
人間界からしたら完全にアウトだが、天界からしたら、まぁそこが落とし所だ。
なんか決算だか源泉徴収だか何があるのか知らないが、そこはフク君に任せようと勝手に私の中で決めた。納税は義務だからな!
そして、私から出した条件は、私がいた最難関の世界線に介入できるのは私だけにして欲しいということ。
他の神々に好き放題荒らされたら、たまったもんじゃない。
しばらく黙って聞いていた戦の神が口を開いた。
「でもさぁ、今回の件で、規律君に勝ったら、人間界に介入できるようになるって面白がる神が出てくるんじゃない?」
それは…確かに…
「毎回毎回、勝負ふっかけられるなんて嫌ですよ。そこは武神様に助けて欲しいですが、武神様が助けてくれるとは思えませんね。むしろ負けない様に鍛えろとか言ってきそうですし…」
気の毒だ…!規律君!
「じゃあ、人間界への介入について規則の変更を要望する際は、必ず怠惰の神を通すことって規則にしたら?たぶん、話しかけたら消し飛ばされると思ってる神が多いから大丈夫だよ」
と、時の神が提案した。
私、破壊神扱いされてるの…?
「でも凪は朝機嫌悪い時とかにぃ、目覚まし時計を投げて壊してたよねぇ。あとはスマホの画面割れたぁとか」
おかきさん!?そんな暴露話はいらないよ!?
その他諸々話し合い、神々は帰っていった。戦の神を除いて。
戦の神は、せっかく家の中に入れたからと、タブレットでしばらくゲームをしたり、アニメを見たりしていた。
もうすっかり夜である。私が、縁側でアッシュとダラダラしていると、戦の神がやってきて隣に座った。
「いやぁ、今回は僕も楽しませてもらったし、儲けたし、助かったよ」
いつもの本音を隠したにっこり笑顔で話しかけてきた。
私に賭けたのか…
戦の神は話を変えて続けた。
「そういえば、ここ数ヶ月この家の外から色々見聞きしてたけど、怠惰ちんの眷属はみんな怠惰ちんの影響を受けてるよねぇ。
シャフ君は働き者だけど最短ルートを選びがちだし、ロウくんは割と青春ってやつに憧れてるよねぇ…あとハクちゃんのお金への執着、あれは人間時代のキミの影響なのかなぁ?」
「ねぇ…戦の神はさ、何が聞きたいんだい?そんな遠回しに探るなんてまどろっこしい。
君、神力がうまく集められなくなったんでしょ」
私は最短ルートを選んだ。




