第61話:いざ!決戦
「それでは!出場選手を紹介するわよ!
まずは、頭ガッチガチのクソ真面目、規律と秩序を司る規律神!相変わらずの好青年!でもこういう男は一緒にいると息が詰まるからおすすめできないわぁっ!」
ワハハハハハ
な、なんだあのノリノリなオネエは…
「対する挑戦者は!あの原初の神たちも手を焼くぶっとんだ頭の持ち主!最近顕現した元人間!怠惰の神ー!相変わらずかったるそうだけどキレると本気で消されるわよー!手を出さないことをオススメするわ!」
どよどよどよどよ…
やめてぇええぇ…
戦の神が前に出てきた。
「じゃあ今回のルールを説明するね。まず、怠惰ちんが勝ったら、人間界への特定の介入を許可する。規律の神が勝ったら、引き続き人間界への介入は禁止!
今回は時の神からの制約付きでね、土地や犠牲者を出さないこと。だから派手な戦はできない。そこで当人同士の勝負って形になるからね」
ブーブー
「おや、せっかく久しぶりに外に出てこれた僕をまた出られなくさせるつもりかい…?」
カランコロンと下駄を鳴らして男性が出てきた。あのお面は…時の神まで来てたのか…
本当に分身はランダムなんだなー
「じゃあ2人はそこの位置について」
ほう?
「ルールは簡単、1メートル以内のものを、あの武神の城の屋根まで飛ばすこと。神力で作っても良いし、探して来てもいい。早く達成した方が勝ち。簡単でしょ?」
城の屋根…遠いなぁ…
何百メートルあるんだろう…しかも向かい風だ…
風神様が止めてくれたらいいのに…
あれ、戦の神と風神様が笑いながらしゃべってる。
ははーん!達成困難にして楽しんでるな?
「2人とも準備はいい?」
「はい、わかりました」
「はーい」
「「「「がんばれ凪ー!!」」」」
歓声が聞こえる。
うちのひときわ巨大なもふもふ応援団が尊い…
「よーい!スタート!」
うーん。紙飛行機なんか到底届かないし…
ドローン?でも無線のドローンなんて飛ばないだろうし…そもそも無線のドローンって何で繋がって操作してるんだ?
落魂もないから鳥も作れないしなぁ…
隣を見ると、規律神がせっせとボールを作って投げたり、矢を打ってみたり色々しているが、到底届く訳がない。
でかいボーガンならワンチャン…?いや、風が吹いてるから流されて怪我人でも出たら大変だ。
それに打ったこともないからサイズ感もわからない。
1メートル以内…うーん…
まさかこんなルールだとは思わなんだ。完全に戦の神のおふざけだ。
あそこの屋根まで…
屋根まで?
「ねぇ、屋根まで飛べばいいんだよね?」
私は戦の神に確認する。
「そうだよ」
「さーぁ始まって10分経過しました!規律の神は次々と色々と作って試していますが、怠惰の神は動かない!飽きちゃったのかしら?どう思う?武神?」
「規律のほうが、普段ここに住んでいる分、いろんな長距離武器も知っているから有利だろうな。問題は1メートル以内っていう絶妙な制限だな。
怠惰は…まぁ…いつもどおりだな」
屋根まで…ねぇ…?
私は神力で紙を作り出し、地面に座って紙飛行機を折った。
確かこうして…こんな感じだったはず…
「あら!何やら怠惰の神が動いたわよ!」
折り目はきっちりきっちりして…
よし、できた。
「あれは…何かしら?見たことないわねぇ?」
「あれは……紙飛行機…だよな?でもあれは長距離を飛ばすというよりは…」という声がする。
観客の中に被神隠し人間がいるのかもしれない。
「凪、あの顔はしてやったりの顔だねぇ。何やらかすんだろぉ?」
「ろくでもないことだろうねぇ」
おかきとたぬきにはすぐばれるんだよなぁ…
「アッシュは、昔あの紙飛行機を馬鹿みたいに追いかけてたわよねぇ」
「だってあれフワンフワン逃げるから気になるんだもん」
アッシュよ、お前はそれでいいのか。ムーンにこばかにされてるぞ?
「規律の神が作ったあの玉を飛ばすやつ、面白そうじゃない?」
「スイ、水飲みたい」
「はいっ!どうぞ!」
我が家の面々はみんなでヒソヒソ話している。
きなこよ任せろ、あれは後でもらう。あとドン、公の場でスイをウォーターサーバーにするんじゃない。
と、集中しながらも内心ツッコミを入れる。
私は立ち上がって、お尻についた土を払い、ゆったりとしたストロークで紙飛行機を飛ばした。
すぅっと舞い上がり、ゆっくりと風に乗ってふわりふわりと旋回するように飛んでいる。
落ちないうちに…神力は最小限に抑えて…
「カァッ…メェッ…ハァッメェッ…ハァーーーッ!!!!」
細い閃光が武神の城の天守閣をめがけて飛んでいく。
次の瞬間、城は大きな音を立てて屋根『まで』ぶっ飛んでいた。
「よし!できた」
ちゃんと神力を最小限にしたから、被害は屋根だけだ。ふふん♪
さっきまで賑やかだった観客は静まり返っていた。滞空時間に特化した形の紙飛行機が、パサリと地面に落ちた。
「あぁああああぁ!!俺の天守閣がぁああぁ!!!」
ごめんよ、武神。再建築には芸術の神を遣わすからもっとカッコいいのをつくってくれ。
「あっはっはっはっは!!!これはやられたわね!!」
さすが言葉の神、飲み込みが早い。
戦の神は笑いすぎて実況席の机をバンバン叩いている。
「ど、どういうことだ…?」
規律の神は事態が飲み込めていない。
「1メートル以内のものを飛ばしつつ、屋根『まで』も飛ばしたんだよ。
だって、距離として、あそこまで飛ばせとは言ってなかったでしょ?私の勝ちー」
「そ、そんなことが認められるか!」
規律の神は食い下がる。
「でも私は何のルール違反もしてないよ?ねぇ?戦の神?」
戦の神は笑いすぎて出てきた涙を拭きながら答えた。
「確かに何の違反もしてない。ルールの抜け道を上手いこと見つけたな。これは僕も想定外だった」
「ほら、よく考えて。規律の神ならルールに反してないことはわかるよね?」
「ぐぅっ…」
「勝者!怠惰の神ー!!」
うわぁあああ!っと歓喜の声を上げているやつらは私に賭けたのだろう。誰1人知らん。
「ちょぉっと待ったぁ!!」
なんだ?誰だ?まぁ何と立派なキリリとした眉毛なんでしょう
「お初にお目にかかる!私は正義の神!」
あぁ…ね?




