第6話:いざ事情聴取
御神木様から2匹が勢いよく飛び出てきた。そのままこちらに向かい、急ブレーキでピタッと止まる。
おかげで上にいた2人は宙に投げ出された。
あっ…と思っていると、きなことムーンが空中キャッチした。
ナイスー!みんな偉いぞぉおおお!
私はドン、アッシュ、きなこ、ムーンをわしゃわしゃして褒める。
エンが、ぺしょぺしょになりながらも、私の容姿の変化に驚いていた。そして、ダイチが私の身に起きたことをエンに説明している。
私はきなこに手伝ってもらい、御神木の上に足組をしながら座った。
ここからなら、4眷属たちの反応と、張本人の反応をまとめて見られる。正直この4柱もどこまで信じていいかわからない。
連れて来られたのは朝会のときに見た、制服の人たちのうちの1人のようだ。おじいさんである。
事務員的な役職の制服なのだろうか。普通の人間にしか見えないな…彼らは何で働いてるんだろう?
何も言わずマジマジと観察していると気づいてしまった。
すんーごい震えてる!顔真っ青よ?冷や汗ダラダラだよ?倒れる?やめてよ?
「とりあえず座ってよ。来てくれてありがとうございます」
私は優しい声で声をかける。相手の警戒心を解かなければ話は聞き出せない。
制服の老人は、おとなしく、芝生の上に正座した。神々の眷属たちと同じ絨毯には座れないのだろう。
「単刀直入に聞くと、あなたがミスをして私が人間になったそうですね。それは誰がからの指示?言っておくけど、ここにいるこの子達は嘘を見破るからね」
にっこりと笑顔で言う。
そんなことできるか知らんけど。ハッタリは大事。
私の両脇に寝そべる猫たちが少し顔をあげて、何の感情も見えない目でじっと彼を見た。
この何もかもを見透かしたような目は、私も生前何度もゾワっとしたことがある。
お、いいぞいいぞ。今これ私、神っぽいんじゃない?
映えてるんじゃない?
「し、指示ではなく、本当に私のおかしたミスでございます。
大変申し訳ございませんでした。お詫びのしようもなく…!!」
おでこがなくなるぞってくらい地面に頭をつけている。
これでは、表情が読めないじゃないか。
「お詫びはいりません。謝られても、なかったことにはならないしね。
それにこの子達に会えたのは私が人間になれたおかげでもあるし、だから顔をあげてほしい。
それで、ミスが起きた原因は?」
もうこの様子だと、ミスの過程の説明に矛盾がなければ本当ということでいいだろう。
彼は顔を上げたが、視線は伏せたまま答えた。
「その…御身がおわした世界は、1番過酷な世界線でした。あの頃は戦争や天災で、大量の魂のリストが上がってきまして…」
初っ端からわからん!魂のリストって何だ?
私は眷属の4人のほうを、解説を求む、という顔で見ると、エンが察してくれた。
「あー、ちょっと待ってくれ、リストについて説明する。
まず、この御神木様は、星の全世界線の感情や欲求だけでなく、死んだ魂も吸い上げるんだ。
吸い上げられた魂は、根から幹へ、幹から枝へ、枝から葉へと、浄化されていく。そして葉先で雫となり、風に乗って天上にのぼり、輪廻の流れに乗る。
生まれ変わりってやつだ。上を見てほしい」
そう言われて上を見ると、天の川のようなキラキラとしたものが無数に浮かび、流れている。
わぁ、幻想的!あれが魂!?
エンは続けた。
「この、御神木様の最下層は、吸い上げた魂が溶け込んだ地底水滸になっている。
そこの水を、水の眷属が集めて球体にする。その水球に、紙の束を入れる。
中の水流で紙が馴染んだところで水を戻し、濡れた紙は俺と風の眷属の力で、空中に舞上げて熱風に晒して乾かすんだ。
そうすると、紙に文字が浮かび上がり、魂たちのリストが出来上がる」
君たちは乾燥機能付き洗濯機なのか?
「ダイチはその間、暇してるの?」
「俺はちゃんと水がなくなった状態の地底の状態を確認して補強してるぞ」
みんなちゃんと働いていた。
「要は星で死んだ人間の、全員分の魂のリストってことね」
制服の老人に続きを促した。
「リストには、どの世界線かと、魂が生まれた場所の座標、生年月日、名前が書かれています。
それを、転生先辞典から探して…
あ、転生先辞典というのは、死神様やその眷属様たちが特定の人間の死期を察した際に、予めその者の人生を評価します。
そして厳正に転生先を決めて、それを記して全魂分をまとめたものです。
その照合時に、誤ったのかと…」
「えっ?目検でリストの情報と辞典の情報とやらを照らし合わしてるってこと…?」
う、うそでしょ?
「はい…座標も生年月日も桁数が多く、そして名前も我々には馴染みがないため、辞典の膨大な情報の中から、個人を特定することが我々には易しいことではなく…」
白目を剥きそうだった。
本気で言っているのかと疑ったが、眷属4柱が彼に向ける憐れみの目が、その作業が本当だと告げていた。
フウが口を開いた。
「当時、怠惰様が不在になり、諸事情で直ぐにでも後任を立てる必要があったの。
それで、人間の中から規格に合う魂を探したら、本当に運良く見つかって我々は安心していたの。
でも、その情報が実務担当にまでいっていなかったみたいで、それも要因ではあるわ…」
報!連!相ぉおおっ!
なんで天界の方がアナログなんだよ!!
リスト作成部分はまぁ原理がわからないから一旦置いといても…
「あのさ、パソコンないの?リストをスキャンして文字起こしして、表計算ソフトに入れれば良くない?
その死神作成辞典もさ、そのソフトに入れておいてもらえば良いじゃん。
生まれた時点で魂の管理番号を付けていくなり、座標や生年月日をつなぎ合わせて、各魂のユニークIDを作るとして…
それで関数を使って、死後にリストに、転生先の情報を引っ張ってこれるようにすれば良くない?」
私が人間の頃の事務知識で話すと、実務さんは恐れ多そうに答えた。
「その…現場の上司である規律様の眷属様には、人間界では、そういう物があるらしいと伝えました。
しかし…関数とやらが消えたらどうするのか、手順を変えて間違いが起きたらどうするんだ、死神様の眷属たちと誰がどう調整するんだ、と言われてしまい…」
はーん…
よし、責任者を呼んでこい
読んでくださりありがとうございます!
こういう上司っていますよね!
もし『ここが好き』『この場面笑った』みたいなのがあれば教えてください!
ブックマークしておくと更新通知が届くので、続きが気になってくれた方はぜひ。




