第5話:怠惰の神2
働かなきゃいけないの…?
やだやだ!私は引きこもりたい!!
「そういえば前任?の怠惰の神はどうしたの?世界線が複数あるから消えないはずなんでしょ?」
そういうと、フウが気まずそうに教えてくれた。
「その…前怠惰様は、『本当にもう何もしたくない。海綿動物になりたい』とおっしゃって…
持てる神力を全て使って転生し、今は天界の海にいらっしゃいます」
「か…かいめん?あの海のスポンジ的な———?」
何言ってんだこの人、と思いながら思わず聞き返してしまう。
スイが穏やかながらも興奮気味で早口で捲し立てる。
「そう、海綿動物です。さすがですよね。
彼らは脳も筋肉も全部捨てて、岩に張り付いてるだけ。
食事だって、ただ体を通り抜ける海水から、栄養をかすめ取るだけだからぼーっとしていれば済むという、素晴らしく怠惰を極めた生物ではないでしょうか。
やはり神は着眼点が違いますね」
あ、この人は生物オタクで確定だ。顔はいいのに話すと残念な人の典型だ。
「そ…それでその海綿動物の代わりに、新たな怠惰の神が必要になって、私が後任になるはずだったけど人間にしてしまったと……」
「「「「はい…」」」」」4人の声が揃った
なにそれぇええ!!!
何もかもどうかしてるよー!!!
私はこの絶景の明後日の方向を見ながら、しばらく呆然とした。
しかし、ここなら死ぬこともなく、みんなと生活できるのはうれしい。仕事とやらがあるそうだが、まぁ人間時代に比べたら楽なもんだろう。
私は腹を括り、言葉を発した。
「私を下界に手違いで落とした担当者は今もいる?
いるならここに呼んで。今すぐ」
エンは少し戸惑いながら答えた。
「いるにはいるが、本来、神とは合間見える立場の者ではないぞ」
立場など関係ない。
「私は、この世界でこの子たちと、だらだら暮らしたい。
もし、意図的に人間にされたのなら今のうちに消しておきたい。ただのミスならそれでいいよ。」
そう言うと、わかったとエンは立ち上がり、御神木の中に向かおうとした。
え!?もしかして今からまたあの階段登って連れてくるの!?
めっちゃ時間かかるじゃん!
「ちょ、ちょっと待った!!メッセージ送るとか、電話とか、なんか呼び出しできないの?」
「文なら使えるが、結局持っていくことになるから、往復は変わらんぞ」
ダイチが腕を組み、首を傾げながら答えた。
なんてこった…
「わ、わかった…ドンとアッシュ、ちょっとこっち来て」
ふたりは素直に根の上から降りて来てくれる。
「ちょっとこの人を乗せて上まで行って、もう1人連れて帰ってきてくれる?猛ダッシュしていいから」
「わかったー!!」
良いお返事です。
アッシュがエンを咥えると、ポーイっとドンの背中に投げる。
「えっ…?」
エンは状況が飲み込めていなかった。
「振り落とされないように、しっかり捕まってー!どこにいるのか指示出してあげてねー!」
バビュンっ!!
2頭は風のように走っていった。
遠ざかっていくエンの叫び声的に、すぐ戻ってくるかな!
待っている間、私はスイに足元をウロウロしているコリドラスを触るかとお勧めした。
遠慮がちに、ぷにぷにしたり、ナマズ系自慢のお髭をサワサワしている様子を見て楽しんだ。
私は目の前にある果物らしきものを食べてみようかと観察してみる。
ぶどう?プルーン?すもも?
人間時代は大概の果物は皮のまま食べたものだが、皮のままいけるのだろうか。
手にとってまじまじと見ていると、フウがこのように食べるのですよ、と見せてくれた。
どうやらナイフで半分に切れ目を入れて、くるっと回すと種を中心に綺麗に割れる。
フウは綺麗に4分割して食べていたが、2分割で十分だろ、と齧り付いた。
うまーーーーいっ!!!
甘いけど酸っぱい!独特の香りがする!
私はその時にふと、
初めて地に足がついたような、
身体と心の輪郭がわかるような、
自分の身体を巡る命を感じた。
なんだろう…
なんだろうこの感覚…
「怠惰様、お姿が…!」
スイが驚いた声で言う。
へ?
確認すると、ウェーブがかっていた髪が真っ直ぐに、そして20代の頃のような完成した大人の身体つきになっている。
次から次にまぁ不思議なことが!
ところでスイ、驚いてるくせにコリドラスのヒゲをもしょもしょし続けてたの見逃さなかったよ。
その子、あげないからね?
そんなこんなしているうちに、叫び声が2人分になって近づいてきた。
さて、ここからは取り調べのお時間です。
読んでくださりありがとうございます!
『あちら』な食べ物を口にすると『あちら』の存在になってしまうと言いますよね。
コリドラス、めちゃくちゃかわいいんですよ。
もし『ここが好き』『この場面笑った』みたいなのがあれば教えてください!
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