第57話:死神としての役割
大型ディスプレイを水神様に取られた時の神は、ぐしぐし言いながらこたつに入って、机に頬をつけてうなだれている。
「ねぇ、死神様ー」
顔を覗き込んで話しかけると、今余韻に浸っているから放っておいてくれと言われた。
「魂の管理についてちょっと相談があるんですけどね。あ、シャフ君もちょっと来て」
アッシュにこびりついた鼻水を拭っていたシャフ君を呼び寄せた。
「ねぇ、僕の話聞いてる?今傷心中なの」
「それを乗り越えてこそのオタクですよ。ほら、死んだ推しも、神様が元気じゃないと命張った甲斐がないじゃないですか」
とりあえず適当なことを言いながら話を進める。
「魂の転生先を、眷属たちにこのタブレットでデータで入力してくれるように言ってもらえません?
ほら、いまあまりにもアナログすぎて…あのバカノウナシのせいで色々あったし」
「あぁ、あの子ね。今どうなってるか知りたい?ひどいおむつかぶれに悩まされてたよ。君、言霊使った?」
ハッ!
ビールをロストテクノロジーにしてくれやがったとわかった時にそんなことを言ったかもしれない!
「ま、まぁあんなやつのことはどうでもいいじゃないですか。
問題は魂の管理ですよ。オフラインで保存して、天界でWi-Fiに繋がってからデータをアップロードしてくれればいいんです。
その辺はこのシャフ君が上手いことやりますんで」
「んー。いいけどタブレットはどうするの?とんでもない台数いるよ?しかもそんなデータ量アップロードできるサーバー用意できるの?」
詳しいな!
確かに言われてみれば無理があるのか…となるとやはり紙ベース?
「そんなら、同じフォーマットの紙に書いてもらいましょう。今、眷属ごとで書き方とかバラバラなんすわ」
現場をよく知るシャフ君の言葉が一番、最適解だろう。
「確かにそれなら製紙の労働先も取らなくて済むし、人員削減しすぎて働き口なくなることもないし、まぁ落とし所か…」
と、私とシャフ君が話していると、時の神がマジマジとその様子を眺めている。
「何ですか?米でもくっついてます?」
「いや、今度の怠惰ちんは働き者だなぁと思って」
「楽できるのに、何もしないで被害者ぶって文句ばっか言ってる奴が嫌いなだけですよ。
あと早いとこ気になることをつぶして、何の気兼ねもなくダラダラしたい」
私たちがダラダラ話していると、水神様が立ち上がった。
「よし!ホワイトタイガーを作ろう!ムーンさん!今日の落魂ない!?
あれ?ムーンさんは?」
「そういえば今日ムーンちゃんに会ってない!ムーンちゃんはねぇ、僕が誰とも話ができない時にいっぱい話を聞いてくれて仲良くなったんだよねぇ」
「ム、ムーンは…今お散歩中でいないですねぇ…
あと、水神様に落魂はあげるなって言ってあるからもうもらえませんよ。必要なら資料を整えて、きちんと私にプレゼンしてからにしてください」
「ぷ、ぷれぜん…?」
「ムーンちゃんいないのかぁ…いつも何時くらいにくれば会えるの?」
「ムーンは気まぐれだから、時間は決まってないですねぇ…」と答えると、何も見えないけれど、私の腕にスルっと頬擦りする感触がした。
貸しだぞ、ムーン。




