第55話:時の神の号泣と水の神の告白
翌日、2階の自分の部屋で、きなことダラダラしていると、ムーンがやってきた上に、スゥッとステルスモードになった。
「どしたのムーン?」
私がそう聞くと、声だけがする。
「私はいま外にお散歩中ってことにして」
ほう?急にどうしたんだろうと思うと、下からフクくんの声がする。
「凪様ー!お客様ですー!」
「だれー!?」
「僕だよー!」
誰だよ。しょうがないので1階に降りると、門の前に布の面をつけた少年が立っていた。
あの面…
「もしかして少年は時の神?」
「そうだよー。アニメ見にきたよー」
「どうなってるの?昨日は大人で女装だったじゃないですか。本当に時の神ですか?」
ジトォとした目で見ると、ちょうど水神様がやってきた。
「お、時の神じゃん。やっほー」と言って、するっと結界の張られた門をくぐって家に入って行った。
その姿を少年は二度見していた。どうやら時の神というのは本当らしい。
「とりあえずどうぞ…」と言うと、時の神が門を潜り抜けた。
「水神は顔パスなの?どうしたら顔パスになれるの?」
「みんなから好かれたらですかね」
「じゃあきっとすぐだね!」
と期待に満ちた顔をしているが、ムーンがあの様子じゃその日はきっと来ない…なんて言えない…
「あのー…何で今日は少年の姿?」
昨日の妖艶な姿はいったいどこへ。
「君なら人間時代に経験したことあると思うけど、時間って早くすぎたり長く感じたり、濃かったり薄かったり、その時の自分の状態とか感情によって感じ方が違うでしょ?
それのせいなのか、分身を作ると性別と年代がランダムなんだよねぇ」
「女装が趣味じゃなかったんですねぇ…女装趣味ならそれはそれで楽しめたのに」
「あらやだ、今度ファッションショーでもする?」
時の神…軽いな…これから見るアニメで推しの最期に号泣するであろうことも知らずに…
とりあえず大画面でのアニメの見方を教えていると、たぬきがロウくんに何か話している。
「たぬっちー、アッシュー、一緒に見ようよー。もふもふさせてよー。続きは何話目だっけ?」とたぬきたちと一緒に見始めた。
なぜかロウ君がバスタオルをたぬきの横に置いた。
水神様がドンのブラッシングをしている横に座り、私も降りてきたきなこのブラッシングをする。
「時の神と再会できて良かったね」
私がそう言うと、水神様は嬉しそうに笑った。
「あのね、言わなきゃいけないことがあるんだ」
いつになく神妙な面持ち…
「死神に会えないって前、話したでしょ?」
確かに、魂の管理改修が死神様に会えないことで滞っている時に、そう言っていたので、うなづいた。
「死神って、時の神なんだよね」
「えっ!!??」
思わず振り返ると、本人はちょうどバスタオルで顔面を押さえ、推しの最期に嗚咽をあげて号泣していた。
水神様は続けた。
温度差!とツッコミたかったが堪えた。
「前に怠惰がさ、『人間の命の単位は時間だ、それを怠慢で搾取していたノウナシは十分罪人だ』って言った時、ドキッとしたんだよね。
時の神が、死神だって知ってるの、本人と僕だけだから。バレるかもしれないって思った」
「バレちゃいけないことなの?というかなんで水神様しか知らないの?」
知らない方がいいことはあるが、もうここまで聞いてしまったら後戻りできない。全部聞いてしまうしかない。
「かつて御神木を中心に、僕たち4柱と時の神が生まれた時に、最初に時の神、その後に僕の2柱だけが、先に目を覚ましたんだ。
それが僕の中にある最初の記憶。
その時は状況がよくわからなかった。多分、時の神が目覚めたことで時間が流れ始めて、星で生命が誕生し始めたんだよ。海は生命の母っていうでしょ。僕たちも最初は楽しんでたんだ。
でも、どんどん増えて、このままじゃ飽和状態になって自然とのバランスが取れなくなると分かった時に、弱肉強食以外でも、時の流れで生物は死ぬことにしたんだ。要は寿命だね。
もちろん、見ている子たちが死んでいくのは思うところがあったけど、もっと進化が見たいっていう好奇心が勝ってしまった。
命あるもの、皆死ぬと決めたのは、僕たちなんだ。」
それは……あまりにも…
『必ず訪れる死』に一体どれだけの恐怖、悲しみを生み、永遠の命に欲をかいて、どれだけのものが無下に犠牲になってきただろう。
「僕と時の神、御神木様だけで決めたんだ」
ん?
んん?
「御神木様って会話できるの?」




