第51話:水神コンビのやらかし
「うちによっぽどの手出しをしなければ更地になんてしませんよ」ふふふ
「どうだか」ふふふ
お互い不敵な笑みで笑い合う変な絵面になっている。
「それで、何の用だ?」
そんなに警戒しなくても…というくらい距離を取られている。
「チ⚫︎ールと猫缶の件ですよ!はい、これ資料。どうにかこうにか作ってくださいね。さ、ムーンさん、たぬきさん、思いの丈をどうぞ!」
話を振ると、2匹の勢いが止まらない。まずペーストの程よい粘度、味の種類の豊富さ、程よい量、そして香り———
まだ続きます…?———あ、そのまま猫缶の話に入るんですね。
私はとりあえずアッシュで暖をとった。寒いねぇと話していると、呪いの神がそろそろ止めてくれと言う目でこちらを見てくる。
「ムーン、たぬき、あとは試作品が出来てから調整でいいんじゃないかね?」
「「たしかに!!」」
2匹にご納得頂けた。
「それで呪いの神様、どんなものかわかりました?」と聞くと、「座学は夢にも出てきそうなくらいには十分だ」と答えが返ってきた。
あとはよろしくどうぞと家に帰る。
帰り道、まだ温泉宿の話し合いが続いていた。芸術の神と美の神が言い争っている。
「お前は見た目だけで頭の中はからっぽか?よくそんなハリボテで美の神を名乗れたものだな。美しさとは感性と知性、空白とのバランス、緩急から成り立つ。お前には何も伴っていない!」
あー!!言っちゃったー!!
「そんなこと言ったってじゃあ具体的に何が必要なのよ!!」
大変だなー…めんどくさそうだし、放っておいてそのまま通り過ぎた。
家に着くと、水神様とスイが門の前で待ち構えている。何で入らないんだ?あの2人は自由に出入りできるのに。
「おかえりー!!待ってたよ!やっと完成したんだ!シャフくんのとこに通い詰めた甲斐があったよ」
あー。最近なんかコソコソやってたなぁ…と思い当たる。
「何をしたんです?」
そう言うと、得意げに門を開いた。
門の向こうには、角の生えた白馬がいた——
「これは…ユニコーン…?」
そう聞くと、さすが!と返事が来る。
でも何だかユニコーンは不機嫌そうなのが気になる。
「こないだ怠惰様が火系のスライムを作ってたでしょ?だから、僕たちにも架空の生物を落魂を使えば作れるんじゃないかと思ったんだ」
スイ、イキイキしてるなぁ…
「最も美しいユニコーンにしたくて、シャフくんに片っ端から色んな画像を見せてもらって、イッカクやら馬まで調べたよ。
そして角の部分は、ただの角じゃなくてクリスタルにしたんだ!」
水神様もイキイキしてるなぁ…
「ねえ、ユニコーンさん。角、重くない?」と聞くと、角の部分がシュルシュルと小さくなっていった。
「あー!もう気づいたの?怠惰みたいに、眷属の身体の大きさを変えられるように作ったんだけど、角が重いらしくてすぐ短くしちゃうんだよぉ」
何とまぁ気の毒なユニコーン…おでこにクリスタルの塊をつけられるなんて肩こりすごそう。いや、首か?
「水神様って領地ないのに落魂はどこから?」
「ムーンちゃんに鰹節の手配と引き換えにもらった」
ムーン……
「イッカクのあの角の長さは海の浮力があってこそだろうし、馬っていうよりヘラジカとかの骨格を参考にした方が良かったかもね」
その手があったか!と水神コンビは目から鱗になっていた。
「それで…この子はどうするんですか?」と言った頃にはすでに水神コンビはいなかった。
ヘラジカを調べにいったんだろう…
「えっと…どうする?うちの領地で良ければ好きに滞在してもらって構わないけど…」
「お前は角を長くしろとか言わないのか?」
ユニコーンは不貞腐れたように吐き捨てた。
「え?別に楽な長さにしといたら良いんじゃない?重いし邪魔でしょ?」
そう答えると、ユニコーンは安心した様子を見せた。
「ここに住ませてもらう。水場を案内してもらって良いか?水神の神力で作られたから水場が必要なんだ」
「あーそっか。近くの湖は案内するよ。おーい!しらたまたちー!」
私はシマエナガ3匹衆を呼び寄せた。
みんなで一緒に家のすぐそばの湖まで行き、座り込んだ。しらたまたちは大きくなっていて3羽並ぶとなかなかの迫力のもふもふだ。
順番にぼふっ!ぼふっ!ぼふっ!とおなかに抱きつく。やっぱり大きいもふもふは心の安寧…
「ねぇユニコーン…いや、名前があった方がいいな…君は今日から小角さんだ!」
小角さんが嬉しそうに笑った気がした。
「だいふくー、この辺りに他の水場あるよね?案内してあげで欲しいんだー」
そういうと3羽で案内すると、小角さんと遠くへ消えていった。
ムーンにもう落魂を水神コンビに渡さないように伝えねば…
後に、水場に出てきた小角さんを見かけると、幸せが訪れるという謎の迷信が神々の間で流行り、銭湯に来る神々と眷属がまた増えた。




