第50話:温泉宿大作戦
善は急げ、とはよく言ったもので、めんどくさいことも早いところ他人にぶん投げるのが善い。
ということで、私は嫉妬と承認欲求の双子神のところに美の神と芸術の神を呼び寄せて、温泉宿の制作を説明した。
すっかり美の神と承認欲求の神は打ち解けたらしく、中身のない会話を延々としている。それを嫉妬の神がおもしろくないと言った顔で見ている。
人間由来の神だけあって再現性高いなぁ、あの3人の関係性…と観察してしまった。
そんな3人を一旦だまらせて、別に温泉だけでなくても、スパでもサウナでもエステでも好きにしたら良いと伝え、資料を渡した。
双子神はトラウマなのか芸術と美の神の2柱の後ろに隠れていた。そっちから仕掛けてこない限り何もしないのに失礼しちゃうわ…
芸術の神には事前に、人間界の温泉宿特集を見せてある。高級路線からスーパー銭湯のようなものまで様々見せたところ、すでに設計デザイン等の資料案を作ってきていた。
ロイヤリティとして売り上げの1割を毎月支払うことを記載した契約書に、双子神にサインさせた。
念には念を…この2柱は、人間時代の記憶も相まってか、どうも信用ならんからな…簡単に手のひらを返すからな…
とりあえず伝えることは伝えて、私は家に帰った。
疲れた…ここのところ他神との関わりが多すぎる…2週間に1回誰かに会うのでも多いくらいなのに…
家についた私は、縁側でドンに大きくなってもらって、すっぽり埋まるように抱きついた。頭をドンが顎でスリスリしてくれる。
背後にはアッシュが寝転がって囲んできたため、完全に埋もれてしまった。
私はもふもふに囲まれて気づいたら爆睡していた。
ぺしっぺしぺしっ
誰かの尻尾か何かで叩かれている。どうせムーンかきなこでしょと思って無視していると、ムーンが「起きなさいよぉおおぉ」と肉球パンチしてきた。
ありがとうございます
「なんだよぉ」
「チ⚫︎ールはどうなってるの?」
忘れてたぁ!私としたことが!あんな神々の欲求を満たすよりよっぽど大事ではないか!!
急いで呪いの神に資料を届けなければ!
「おーい!シャフくーん!チ⚫︎ールの資料印刷してー!原材料とか公開されてるものだけでいいよー」
しばらく待っていると印刷した資料とともに、面白い戦争ゲームを思いついたとニヤニヤしながら報告された。
好きにしてくれたまえ。何せ私は戦の神からも1プレイあたりでリーフを取るつもりなのだから…!
「アッシュー。冬エリア行こうー。ムーンとたぬきも。おかきときなこはお家の守りをよろしく!ドンはカピバラーズの今日の売り上げ運ぶの護衛担当ね」
アッシュの犬ぞりに乗って、双子神のところにまずは向かう。呪いの神がどこにいるのか知らん。
おぉ、まだやってる。美の神、芸術の神、双子の神が更地で企画書とデザイン画を広げて話し合っている。
背後から忍び寄って盗み聞きしてみる。
「ほら、ここの壁面のスペースが余るから、何か描いたら?花とか華やかな感じで」と美の神が言うと、「ここは空白だからいいのだ。絶妙なバランスを保ってるんだよ。引き算の美学、余白の美を知らんのか?」と芸術の神が却下する。
「ここ、フォトスポットになるようになんかオブジェとか置いたら?」と承認欲求の神が言う。
「そんなとこに置いたら動線が詰まって人が集まった時に空間美が台無しになるだろうが。
大体カメラもないのにフォトスポットなんか作ってどうなる」とまたも芸術の神が却下する。
嫉妬の神は、芸術の神の主張が理解できてしまうのかムスっとしていた。才能が妬ましいのだろうか。
芸術の神は機能美までも加味できるようだ。あの神、仕事できるなー!っていうか自分のデザインに一切口を出されたくないタイプか。
「あのー盛り上がってるとこ悪いんだけど、呪いの神の家どこ?」
嫉妬の神が、むすっとしたままここをまっすぐいけば着くと単純明快な指示をくれた。
「ありがとー」と伝え、呪いの神の家に向かう。
こ、ここだよな…扉がお札だらけなんだが……怖い…幽霊屋敷かよ……
スマホで写真を撮って、シャフ君に「見て見て。呪い屋敷」とメッセージを送る。たぬきが近くにいるのでネットが使えるのは便利だ。
シャフ君から返信がすぐきた。
「そのお札、その門の横についてるシステムロックの暗号のヒントになってるっすね。ハッキングというか解除方法伝えましょか?」
あいつやるな!
と感心していると、呪いの神が自ら出てきてくれた。
「うちの門まで更地にしないでくれ…」
あーん、私すっかり更地キャラになってるぅ…




