第49話:時間稼ぎ
色々とめんどくさいことになった…
「ねぇ言葉の神、美の神に伝言を頼める?『承認欲求の神に相談してみな。ただ、今は嫉妬の神と会話はしちゃダメ、しても言うことに耳を傾けないこと』って」
「「ははーん、そういうことね」」
さすが言葉の神と戦の神、私の目的がわかったらしい。
そう、要は共感相手を作ることだ。人間時代にそこかしこで見かけた女たちの全く意味のない会話だ。ただひたすら、「わかるわかるぅ」「えぇ、そんなことないよ、以下相手の欲求を満たす言葉」のオンパレード。解決策など求めていないアレだ。
今、美の神は自分の美を承認してほしいのだ。あの2人は相性がいいだろう。この時間稼ぎの間に、何か作戦を考えねば…
私が楽な方法で。
「じゃ、僕の遊び相手も忘れないでよねぇー」
そう言って手を振りながら、武神とドンたちの方に歩いていく戦の神の背中に、「1ヶ月くらい遊びにこなくても良いんだよー」と伝えた。
「相変わらず怠惰の神なのに忙しいわねぇ…」
「そうだよね!?わかってくれるのはシシー姐さんだけだよ!私もっとだらけて良いよね!?」
「んーそうねぇ…でもあんた十分適当にやりすごしてるし…『怠惰』は便宜上そう呼んでるだけで、いろんな感情の根幹って、説明受けたでしょ?
まぁ、美の神は何とかしなさいよ。伝言は伝えておいてあげるわ」
そう言ってシシー姐さんも帰って行った。
「ムーン…わしはもうダメじゃ…」と、でかい肉球を吸わせてもらう。何でこう、次から次にめんどくさいことに巻き込まれるんだ…
今なら海綿動物になりたいと言った前怠惰様の気持ちがわからなくもなくもなくもなかった。
「あ、いたいたー」
今度は誰だよ!!
「芸術の神なんですけどー、あの銭湯の壁画に感銘を受けまして、天井に自分もなんか書かせてもらえないですか?」
もろ芸大にいる天才肌みたいな出立の神がいる。ちょっとシャフ君に雰囲気が似ている。
あ、芸術の神って、秋エリアにいるって聞いてた私の傘下の神か。
もう何もかもめんどくさいので「好きにして良いよ」と言おうとしたところで、ハクちゃんが口を開いた。
「それはどのくらいの期間がかかるのですか?その間、営業ができないようであれば損失の補填はしていただけるということでよろしいですか?
また、どのようなもので描くつもりでしょう?高圧洗浄機や湿気に耐えうるものですか?そう度々補修作業など入れられませんよ?」
すごい現実的だぁ…私は会話から離脱してムーンに埋もれた。
「えっと…制作期間は1ヶ月は欲しいんですけど…損失補填っていくらくらい…?正直お金はなくて…」
頭をポリポリしながら芸術の神は答える。
昔っから思ってるけど、あの手のタイプの人はなんなんだろう、あのなんかすっごい適当な感じなのに、かもし出されるオシャレ感。こなれ感?
うーん…髪型?雰囲気?と、考えていると、ハクちゃんがフンッと顔を背けながら言った。
「そうですか、ではお話になりませんね。かなりの額になりますので。どうぞ、お引き取りください」
ハクちゃんつえぇえええ!!相手は神ぞ?
芸術の神はとぼとぼ帰って行った。転移すれば良いのにしないあたり、同情して欲しそうだ。
「なんか…今日は厄日だからもう家に入ろうか…」
そう言って私たちの日向ぼっこは終わった。というか、もう夕方だし。
あー疲れた。大人なんだからみんな自分の機嫌は自分でとって欲しいし、現実的な交渉をしに来て欲しいものだ。
私は家に入ってすぐ、シャフ君の部屋に向かった。
「怠惰の神より怠惰なそこのニートよ…1週間以内にオセロ、チェス、将棋みたいな頭を使うゲームで最強のソフトを作りたまえ。AI搭載させて」
「え?なんすかそれ?」
寝っ転がりながら漫画からシャフ君が顔をあげた。
「なんかー、戦の神が戦して遊ぼうよとかクレイジーなこと言ってきてさぁ。チェスとか将棋って擬似戦争みたいなもんじゃん?
でもたぶんすぐマスターしちゃうから、プロでも勝てないAIとか搭載して遊ばせようと思って。タブレットで遊べるタイプで開発しといてー。じゃないと出兵させるぞ」
「お、おまかせください!!」
とりあえずこれで戦の神の暇つぶしはしばらく何とかなるだろう。
あとは美の神か…めんどくさいなぁ…あーなんか温泉宿でも行きたい。温泉入って、懐石料理食べて…現実逃避したい———
あああああああ!!!それだ!!!
あの更地にした双子の神のとこに、温泉宿を作れば良いんだ!
施設のプロデューサーは芸術の神と美の神にして、運営は双子の神と冬エリアの領民にすれば良い。
双子の神のとこにも他の神々や眷属が集まるようになるから、この間みたいな迷惑な暴走もしなくなるだろうし、芸術の神は壁画描けるし、美の神は好きなだけ自分の美を追求できる場所にしたら良い。
ロイヤリティとして毎月の売り上げの1割をいただこう。
天才だ。私、天才だ。おかきのヒートスライムといい、最近冴えてるぞ私。
「凪がまたなんか変なこと考えてるねぇ」
「いつものことだけどねぇ」
たぬきときなこに絶賛自画自賛中の頭の中を読まれてしまった。
えっやだ…私の頭の中ってずっと神獣化したみんなにダダ漏れなの…?はずかしい…




