第47話:スライムコート
あれから、正式にマイヤー一族が引っ越してきた。
私は神々の出入りする銭湯の隣に人間用の風呂を作った。
咲さんだけでは掃除が大変になるので、ビール作りに関与しないマイヤー家の女衆には、風呂掃除の仕事を任せた。
大昔ビール酒造に携わっていたおじいちゃんも加わり、これでビール製造も進展するだろう。
私は今日も今日とてコタツでダラダラしていた。
寝転がって首から上だけ出ている姿を見た水神様が、「おかきみたいだね」と動物雑誌を読みながらチラッとこっちを見てつぶやいた。
「それだ!!!」
「え!?今月号はまだ読み終わってないから渡せないよ」
「ちがう!コタツ!亀!」
「凪ー、『文章』って知ってる?」
きなこに突っ込まれるが、それどころではない。ひらめいてしまった。
私はすぐにロケット花火を打ち上げて強制的に炎神様を呼び出した。贅沢に2本も打ち上げたのだからすぐくるはずだ。
なぜかエンの方が先に来た。
「え?何でエンが来たの?」
「例の地下の岩を熱してたんだよ。ちょうど終わったから声をかけに来ただけ。炎様に用事か?俺が手伝おうか?」
「眷属って神力を込めれるの?」
「それは無理。なぁ、ところでお前ん家の風呂入って行ってもいいか?」
「ん?いいよ「200リーフです」
すかさずハクちゃんが割って入った。
そうですね、お金は大事ですね。
そうこうしているうちに炎神様がやってきた。
「何だよ?今、次はどの世界線の山を噴火させようかなーって選んでたとこだったのに。」と不満気である。
「え!?そんな気まぐれに噴火させてんの!?めっちゃ迷惑!!無慈悲!!まさかダーツで決めてるとかじゃないでしょうね!?」
「どっちみち定期的に噴火させないといけないの。まぁ生物にも被害が出ちゃうんだけどなぁ。ところでダーツってなんだ。なんか面白そうだな」
「ダーツはシャフ君に動画でも見せてもらってくださいな。
そんなことより、ちょっとこの水に神力を込めてくれません?そして私に、炎神様の神力を譲渡してください」
天界にきたばかりの頃に、規律神に私の神力を譲渡し、眷属を作らせた時に、怠惰の影響を受けた眷属ができた。
つまり、炎神様の神力を譲渡してもらって眷属を作れば、炎神様の力の影響を受けるはずだ。
「え?何でそんなことしなきゃいけないんだ?神力は貴重なんだぞ」
この神、長年の神力の枯渇で節約が癖になっているようだ。
「まー!そんなケチケチして!この間、ここでタダで飲み食いしてった人間界のビール代とおつまみ代、人間界のお金で返してくれてもいいんですよ?それに神力枯渇はこないだの双子の件で満たされたんでしょ?」
詰め寄ると、大人しく水に神力を込めて譲渡してくれた。
私は落魂を手に取り、神力を込める。
むむむむむむ…
おかきと気が合って仲良くなれて、あったかい子………
ぼいんっ
できた!!火系スライム!!
「何それー!!」と、水神様も寄ってくる。
いつもの邪悪な浄化スライムとは別で、このスライムは人をダメにするクッションのような形をしたタイプに作った。
「ぼく、わるいスライムじゃないよ」って言ってみて!と要望すると答えてくれた。
邪悪な落魂でスライムを作るとすぐに閉じ込めるので、あまりちゃんと見たことがなかったが、落魂が透けて見えている。
落魂は核とか心臓みたいなものなのかなぁ…と考えつつ、指で突いてみると、ぷにんぷにんしている。そして何より暖かい。なんというわがままボディ…
実は私はこのエリアの季節がおかきにとっては寒すぎることを、ずっと気にしていた。
この間の冬エリアに行ったときなんか特に。
私が前世でやっていたゲームのように、火属性のスライムなら、形も変形できておかきを温められるのではないかと、さっきの水神様のコタツ発言で思いついたのだ。
縁側で日向ぼっこをたしなんでいた、おかきを強制的に炬燵の横に運んでくる。
「ぅわぁああぁ。連れてかれちゃうよぉおお」とおかきがおかしな声をあげる。
私はスライムに、このコタツの布団みたいに、おかきの甲羅を包んでみてほしいと伝える。変形して甲羅を覆う様になった。
「わぁ!あったかいぃ!」
おかきが喜んでいる。
「家の中とか、僕がいらないとき、どうしてたらいい?」とスライムが聞いてきた。
おかきをあっためるだけが存在意義じゃないのだよ!!君がいるだけでも十分だよ!!と愛情を込めてむにんむにんする。
「なるべく、いつも一緒にいれた方がいいから、スライムの原形になって、おかきの上に乗ってたら?」
そう言うと、スライムは「こんな感じ?」と小さなぷよぷよになっておかきの甲羅の上に乗った。
なんと…!鏡餅の完成だ!かわいい!!めちゃくちゃかわいい!
思わずあらゆる角度からスマホで写真を撮りまくる。
水神様もあらゆる角度から堪能している。
「なぁ…」
「なぁ!!ちょっと!!」
あ、炎神様がいたのを忘れていた。
「お前んちの風呂、入って行ってもいいか?」
「300リーフです」
ハクちゃんは安定の耳と反応速度の良さをしている。
「え、今エンが入ってますよ?何で2人とも?銭湯じゃダメなんですか?」
あっちの方が広いのに…
「実はな、俺たちカピバラに出禁にされたんだよ…俺が入るとお湯がどうしても熱くなるんだ…他の神々が熱すぎて嫌がってな…
俺たち見た目が似てるだろ?だから見分けがつかないみたいで、俺もあいつも入れてもらえなくなったんだ…」
なんと!!
我が銭湯初の出禁ではないだろうか!
あの傲慢の権化である美の神ですらリーフのために出禁を食らってないのに…
色んな温度の風呂があってもいいかも知らんな…
これは銭湯事業拡大か…?
そんなことを考えながら、おかきとスライムが早速仲良くしているのを見て頬がほころぶ。
この時の私は、この後に水神様が色々しでかすとは思ってもいなかった。




