第42話:狩人たちの夜
「カピバラーズ、怪我はない?」
私は駆け寄って身体を撫でる。震えている。
「ない。急に出てきた」
「バッて取られた。武器持ってた」
「怖かった。」
「そっか。怪我がなくてよかった。今日はこの敷地内に居な。うちの温泉入りたかったら入っておいで」
あの子たちが、震えていた。
神相手にも物怖じしないあの子たちが。
「ドン、やばい。この凪やばい。ガチギレの時だ。最悪みんなで抑えるしかない」
「だね…」
ムーンとドンの会話が頭に響いているが内容が入ってこない。
「白狼ファミリー、フク君、狩りの時間だよ。生捕りで連れてきて。今すぐ行って」
全員、元の大きな狼とフクロウの姿になり、森へ出て行った。
「ドンは玄関前、ムーンとたぬきは屋根の上から見張って。この家を守って。
おかきは、結界で牢屋を作って準備しておいてね。
きなことアッシュはカピバラーズと一緒にいてあげて」
「何事っすかー?」
自分の部屋に戻っていたシャフ君が呑気に部屋に入ってくる。
「シャフ君、最低限のものでできて効果的な拷問方法を検索しておいて」
「えっ…?」
「はい!動いて!」
私の言葉を合図に一斉にみんな動き出した。4柱は、何か手伝おうかと気を遣ってくれる。
「いや、大丈夫です。
夜のこの森は、あの子たちの狩場です」
私たちから逃げられると思うなんて、何て愚かなんだろう
ァオーン!
遠吠えが3回する。3人捕まえたのだろう。
待ってる時間、風神様が説明してくれた。
「実はね、前の怠惰様も、こうやって襲撃を受けたり、武神や戦の神がしょっちゅう挑んできたり、色々と煩わしいことが重なって…何もかも嫌になってしまったのよ…
だから私たちは、あなたの生活基盤を優先していたのだけど、まさかこんなに早く手を出してくる神がいるとは」
へぇ。
アオーン!
あと1人か。
「凪が黙ってやられっぱなしにするわけないのにねぇ…」
おかきが呟く。
最後の1人はフク君が捕まえてきて、そこそこの高さから門の前にいた私の前に落とされた。
捕まえた5人全員を、おかきが作った結界牢にぶち込んだ。
多分3人は親子、子供は中学生くらいだろうか。お互いを抱き合って、励まし合っている。
残り2人は大人で、ずっと喚いている。
うるさいな。
「だまれ」
ピタッと2人は声が出せなくなった。
「どういう状態だった?」
白狼ファミリーと、フク君に尋ねる。
「この親子は囮みたいでした。抵抗もせず、なんだか様子がおかしかったので攻撃していません。
こっちの2人が金持ちで、我々で捕まえた1人は、ハクが派手に噛みつきましたが、ご覧の通り生きてます。おそらく眷属なのでは?」
「私が捕まえた者も、爪で刺して運びましたが、痛がるだけなので眷属かと」
「そっか。ありがと」
私は、さっきこの親子が話していた人間界の言葉が気になっていた。
『あなたたち、もしかして神隠しにあった人間?』
私は留学時代に覚えた言語で話しかけた。
『え…?この言葉が話せるのですか…?
そうです。私が神隠しにあい、妻は神隠し2世で、妻の親の出身国が私と同じ国でした。
こんなことをしておいて、言い訳にしかなりませんが、もう1人子供がいて、娘が人質に取られています』
悪質だな。
『主犯は誰?大丈夫、天界の言葉じゃないから、あとの2人には通じないよ』
『双子である、嫉妬と承認欲求の神です。
あの2柱が、怠惰様の領地にたくさんの神々や眷属が入り浸っていることが気に食わないと…だから嫌がらせをしてやるって…』
『そう…話が本当なら人質は絶対に取り返してあげる。片付いたらすぐ解放するから大人しくしてて』
嫉妬と承認欲求…私が人間だった頃から、散々私を苦しめてきた感情…
忌々しい…
あ、そうだ!
『ところで、あなたたちの出身国ってビールの本場だと思うけど、酒造法知ってる?』
『え…?ビ、ビールですか?
あ、妻の父親が人間界ではビール酒造をしていましたが…』
「おかき、この3人だけ出してあげて。ドン、念のためこの3人が逃げない様一応に見張っててくれる?」
よし!全部片付いたらこの親子は秋領地に来てもらうことにしよう。




