第33話:美の神とカピバラーズ
ある日の早朝、私は甲高い声に起こされた。
「ちょっとー!?誰かいないのー!?もう!何でこの門、開くのに入れないのよ!」
しばらく無視していたが、一向に帰ってくれない。
ドンたちは散歩で留守かぁ…
ハクちゃんとロウくんたちも、今頃はログハウスだしフクくんも寝てるよなぁ…
あれ?うちって夜型ばっかじゃない?
朝が手薄じゃない?
しょうがないので、1階に降りていくと、たぬきとおかきが我関せずを決め込んでいる。
ムーンはどうせなんか変なもん拾いに行ってるんだろう。
ボサボサな状態で玄関を開けた。
門には美人がパントマイムみたいなことをしていた。
おかきの結界で、門の扉は開けられても入れないのだ。
玄関から門は、少し距離があるので、その場から少し大きな声を出した。
「朝からうるさい。迷惑です」
「えぇ!?ちょ、ちょっと待ってよ!!」
言うことは言ったので、そのまま玄関を閉めようとしたが、と止められた。
「私は美の神よ。あなたの領土の温泉について話があるの。
それにしてもあなたひどい格好ね。髪はボサボサだし…服もシワだらけね。
まぁでもいいわ、話を聞きなさい」
何だこいつは。張っ倒してやろうか。
「傲慢の神の間違いなんじゃないの?自分のタイミングで自分の話を都合良く聞いてもらえると思うなよ。こっちは寝起きなんだよ」
そういうと、美人も台無しに顔が真っ赤になった。
「なっ!この美しさを見て何とも思わないわけ!?」
「美しいから何なの?美しさに惑わされて何でも言うことを聞くはずだとでも?
うちのムーンの方がよっぽど美しいよ。でかい猫だけど。
美の神だか、傲慢の神だか知らんが、こっちは怠惰の神だからね。あんたの理屈で言うなら、この私が玄関を開けただけでもありがたいと思ってよ。じゃ!」
ピシャッと引き戸の玄関を閉める。
さっ二度寝二度寝…と階段に足をかけたところで、ピシャーン!!と勢いよく引き戸が開く音が響いた。
ムーンが帰ってきた。
「もう!ドアは静かに開けてよね!あと開けたら閉めてよね!」
私が玄関を再度閉めに行くと、門のところに、地面に膝をついて項垂れる美の神が見えた。
「ムーン、あの人に何かしたの?」
「別に?普通に帰ってきたら『あなたがムーンね?』って聞かれたけど、めんどくさそうだから無視した」
ふふふ。うちのムーンさんの美しさと妖艶さに心を折られたな。
さ、今度こそ二度寝二度寝
後で朝型の眷属でも作ろうかな。
どうせシャフ君も夜型だし…
二度寝から起きると、すでに昼だった。
カピバラーズが来ていた。とんでもない量の天界のお金を持って。
「ど、どしたのこれ…」
「ドンに手伝ってもらった」
「いや、どう運んだかではなくてね。温泉でこんなに稼いだってこと?」
「「「ちょろかった」」」
カピバラたちには特に稼げとも言ってないのに、自分たちで営業をし始めたのか…?
「1回につき、神様は300リーフ、眷属は200リーフもらう」
「咲が人間界の銭湯について教えてくれた」
「風の神様に噂を広めてもらった。『風の噂』ってやつ」
3匹がそれぞれ言いたいことだけ言った形だが、話は分かった。
神々相手に商売していた上、風神様を使って宣伝までするとは…多分その風と風神様は無関係だけど付き合ってくれたんだろうな。
「このお金どうするの?」と聞くと、「「「気分を変えたい」」」と言われた。
なるほどわからん。
話を聞くと、咲さんから果物や何かしらの葉っぱ、花びらを浮かべたり、匂いや色を変えるという風呂文化を聞き、それをやってみたいということらしかった。
また、常連の美の神から、新しい風呂はないのかと、執拗に催促されて困っているとのことだった。
あー!それで今朝美の神が来てたのね。
と、私の中で話がつながった。
果物やら花びらやら、色んなものを試すのは好きにやったらいいと伝えた。
咲さんなら、商業地区のこともわかるし、色々と案内してくれるだろう。
美の神は出禁にしてもいいよ、と言うと、あの神からは1日1000リーフもらってるから必要ないと言われた。
美の神らしく、利用頻度も高いし、滞在時間も長いので、咲さんと結託して1日1000リーフで入り放題と、さも特別扱いしているかのように仕向けたらしかった。
何という商才!!
咲さんとカピバラーズに頼んでおけば、温泉事業は安泰だろう。
咲さんにもボーナスを出さねば…




