第29話:怠惰神家の緊急家族会議
咲さんには、すぐにどうにかするからちょっと待ってて、と一旦帰ってもらった。
今、私、シャフ君、ハクちゃん、ロウ君でこたつを囲んでいる。
いや、ちゃっかりスイも参加している。
「えー、緊急家族会議を始めます。まずは咲さんのお給料です。天界の通貨があるとのことですが…
シャフ君は規律神から、あちらの仕事分の給料はもらっているのかね?」
私は両肘を机に突き、組んだ両手の上に顎を乗せながら話した。
「もらってるっすよ。とりあえず、リーマン君の70%でもらってて、システムが軌道に乗ったら、必要な時に依頼額を決めて引き受ける形になってるはず…」
ほう…
「それって何、現金支給なの?どこで使うの?」と聞くと、どさっと袋を持ってきた。
「これっす。なんか商業地区で食べ物とか生活用品を買うのに使うらしいっすよ。だから神々も眷属もあんまり関係ないけど…」
手に取ると、小さな葉っぱの形をしたコインのような石で、大きさや色が違う。シーグラスのようで綺麗だ。
「じゃあ当面はそこから咲さんの給料を出そう」
「え!?何で!?」
シャフ君が抵抗する。
「きみぃ、いったい誰のおかげでこの極楽生活をできていると思っているんだい?どうせ引きこもってんだから天界の通貨なんて使い道ないでしょ」
「ぐっ…」
あとはお小遣いだ…
「ハクちゃん、我が家の家計状況はいかがなものでしょうか」
思わず守銭奴相手に敬語になる。
「えーまず、各種サブスク、定期購読等の費用は固定で、凪様とシャフ君の2人の費用として分割し付けております」
「え!?私このサブスクチャンネル見てない!これ見てるのシャフ君だけじゃん!!」
「なるほど、ではこちらはシャフ君の費用としましょう」
「この動物関連の雑誌の定期購読、自分読んで無いっす!!これ主の分です!!」
「え!?私だって読んで無いよ!!契約もしてないもん!」
怠惰家一同、無言でスイを見る。
「だって…主様が……」
「でもどうせスイも読んでるんでしょ?」
「はい!!それはもう毎月素晴らしい内容でございます!ロウさんにタブレットとやらの使い方を教えていただいたおかげです!!」
「ロウ君…?」
「私は、水神様にタブレットの使い方を教えただけで雑誌の種類、購入方法まではお教えしておりません」
あの神ぃ!!
いや、待てよ、酒造りには水が重要だったはず…
「ハクちゃん、その雑誌の購読費は一旦私につけておいて。水神様とスイには労働で払ってもらいましょう…ふふふ」
「承知しました。そして、ネットの契約費、人間界の家賃、くまさんのゲーム費用も、家全体の固定費用とします。
それで、あとはこれらの漫画の購入費ですが、凪様もシャフ君も読んでいるので、こちらも分割してそれぞれの費用としております」
「ちょっと待ったぁ!私この漫画63巻までは生きてる時に読んだから要らないもん。シャフ君の分だよ。64巻以降分は半分こでいいよ」
「えぇ!?主だって1巻から読み直してたのに!?理不尽!!
待って待って!このスポーツ漫画、ロウ君も読んでた!!胸熱になって、夜中に家を飛び出して走り出したの自分知ってるっすよ!」
「えっ…見られてたんですか…」
あらやだロウ君ったら…青春ね…
「では、これはロウも合わせて3人で割りましょう。
あとはこのゲーム費用ですが…」
「おいシャフ!!ソシャゲのガチャは沼だから課金すんなって言ったでしょ!!」
「ガチャじゃ無いっす!確定で買えるスキンだもん!!」
「じゃあいいか!でもこれは全部シャフ君で!!私無課金勢だもん!!」
そんな泥沼のやり取りを繰り広げ、改めて計算し直すと、私はさっきの酒代で今月はもう駄菓子くらいしか買えない。
シャフ君に至ってはマイナスを来月に持ち越し、ロウ君は半分、ハクちゃんは手付かずで残っている。
「ハクちゃんは使い道がないなら…」
と言うと、食い気味で「私は現世の高級ブラシや、犬用シャンプー、トリートメント等、各種買う予定でございます。あ、その際は現世に取りに行っていただけますか?」
「一応、現世のものは持ち込み禁止だよ…?」
「『バレやしないよ』でしたよね?」
はい…
うちの守銭奴は強かった。
「こうして見ると毎月の小遣い少ないね…」
私がつぶやくと、ロウ君が答えた。
「なにせ元手が大きいわけでは無いので、ハクと私が交代で、家事の合間に張り付いてデイトレードしても、増やせる額がまだ少ないのです。
シャフさんは変な銘柄を買うので売買禁止にしております」
なるほど…それは仕方がない…
第1回緊急家族会議は、痛み分けで終わった。
データ入力のバイトでもしようかな…神なのに…




