第28話:あれも無いしこれも無い
私たちは酔っ払った勢いで規律神の領地に乗り込んだ。
私は場所がわからず転移できないので、先に炎神様に転移してもらい、ロケット花火を打ち上げてもらった。
「よし行くぞドンー!道場破りだー!!」と、ドンに乗っかる。
規律神の領土は夏エリアにあった。寒暖差がすごい。
そして、この領地には「ここでの⚫︎⚫︎禁止」という立て札や張り紙があちこちにあった。
ここでの焚き火禁止
ここでの井戸端会議禁止
ここでの園芸禁止
ここでの立ち食い禁止
ここでのバーベキュー禁止
炎神様は気に食わない立て札は片っ端から燃やしたし、私は「いけ!ドン!パンチだ!」とドンに薙ぎ倒してもらっていった。
『ここでの排泄物放棄禁止』
「それはマジでそう!うひゃひゃひゃひゃひゃ!」
アルコールとは恐ろしいものである。
騒ぎを聞きつけた規律神とリーマンくんがやってきた。
「これはいったい…どういうことですか…?」
規律神が戸惑いながら聞いてくる。
「あのね!あんたのとこにいたあのノウナシ!あいつのせいで天界の人間がお酒作るのやめちゃったのよ!ビールが飲みたいのに!!」
「そうだそうだ!」と炎神様が援護する。
我ながら支離滅裂である。
「ビール?何のことですか?私に何の関係が?それよりなぜ立て札や張り紙を壊すのですか!」
「こんな細かいこと気にしてっから領地のルールが破綻なんてするんだよ!そのおかげであんなクズみたいな眷属に好き勝手させて!人間はお酒禁止ってどういうことさ!?」
私と規律の神の言い合いに、眷属のリーマン君が割って入った。
「あぁ、お酒ですね。前任の、あの眷属が『天界で作った酒なら御神酒だ。御神酒は神の飲み物で、人間の飲み物ではない』などと、出鱈目を言って独占したそうですよ。
そして、人間たちは製造をやめてしまったので、今は天界に流通していません」
リーマン君は本当に優秀だ。全く状況を飲み込めていない規律の神に説明している。
もう神交代したら?と喉元まで出かかったが堪えた。
「見たまえ!この私の力を受けた優秀なリーマン君を!」
完全な酔っ払いの、だる絡みである。
「そんな報告は聞いてないぞ。そんな規律もそもそもない…」
規律神は戸惑っている。
「いやー僕も実は、人間界を覗いた時に見た、仕事上がりのビールとやらに憧れまして…
天界の人間に聞いたのですが、酒造法や設備がもう残っていないそうです。ここは夏エリア、冷えた生ビールをゴクゴクしたかったのですが…」
ビールが……ロストテクノロジー…だと…?
「あ、口喰酒とやらはできるそうですよ」
「それはなんか飲みたくない!」
口から吐き出して作ったお酒とか断固拒否!
「どうします?炎神様。
とりあえず人間界でしばらくは調達して、その間にこっちでの酒造を整えますか?人間界のもの持ち込み禁止って言われてるけどもうそれしかないですよ?」
我々はヒソヒソ相談し、一度家に帰った。
「マジであのノウナシ!今頃オムツかぶれでもしてればいい!」
私と炎神様は飲み会を続行していた。そろそろお酒が足りない。
「ちょっと人間界で追加買ってきますわー」と言うと、ハクちゃんに呼び止められた。
「凪様、我が家の家計状況、および資産運用に必要な資金、固定費を鑑みると、もう今月のおこづかいは使い果たされていますよ」
「え…?」
うち、いつからお小遣い制になったの…?私、もらう側なの…?神なのに…?
呆気に取られていると、今度は咲さんがやってきた。
「凪さーん。温泉掃除のお給料をください。そろそろ買い出しに行きたいのですが、天界のお金がもうなくて…」
こ、こちらのお金とは…?手元にないどころか見たこともない。
なんてこった!あれも無ければ、これも無い!
「お前、神なのにアホすぎんだろ!酒もねぇし俺帰るわ!」
炎神様がゲラゲラと笑いながら、ボワっと炎を上げて帰った。
あんの…酔っ払い…!
この状況を放置してタダで飲み食いして帰りやがった!私のお小遣いで買ったのに!
家の管理のために作った眷属に、いつの間にかお小遣い制度を導入されていました。
もし『この神好き』『この場面笑った』みたいなのがあれば教えてください!
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