第25話:引きこもり生活始動
武神はその日、最終的に負けてヨロヨロと、しかし楽しげに帰って行った。
アッシュとドンも満足気だし、神々も宴もたけなわと解散して行った。
入れ違いで咲さんが帰ってきた。
水洗トイレ付きアパートと、銭湯を案内すると、泣きながら「おぉ神よ…」と拝み倒された。
アパートは、コンセントがない代わりに、セントラルヒーティングに加え、温水も水道から出るようにしてある。
「スマホを使わせてあげたいんだけど、万が一ハッキングとか、SNSに書き込んだりされると困るから、Wi-Fiは使わせてあげられないんだ。ごめんね」
私が謝ると、「友達ゼロの私がSNSやってると思います…?」と返される。
いや…だから返事しづらい…
「あ!だから全然構いませんって意味です!でも漫画とかアニメとか小説は読みたいなぁなんて…」
それくらいなら…と言わざるを得ない。
結局、うちで都度充電と、ダウンロードをしてオフラインで楽しんでもらうことにした。
咲さんが「職場のトイレがバケツなのがなぁ…」とぼやいている。
そうか!職場もか…!
「どうしても、あそこで働かないといけないの?他の人間は気にしてないの?」と聞くと、天界に不慣れな状況で他の仕事が見つからない、そして他の人間はかなり古い文明から来た人間ばかりらしく、抵抗がなさそうだということだった。
「なら、銭湯の掃除係する?
ちょうどその人手が欲しかったんだよね。カピバラしかいないし。今は使う人は咲さんと多分神々が遊びに来た時くらいじゃないかな。」
「辞表出してきます!!!」
帰ってきたばかりだというのに、走って戻って行った。
私は、シャフ君の部屋をノックすると、ハクちゃんが中からドアを開けてくれた。
シャフ君が机に突っ伏している。
「どうしたの…?」
「人間界の株で資産を増やしたいと言うので、私も横から見ていたら仕組みが理解できたので、最近のニュース、データから予測し、どれをどれだけ買うべきか解説していたのですが、パンクしたそうです」と淡々と説明してくれる。
お、おぉ…
我々が温泉だ何だとキャッキャしてる間にシャフ君たちはそんなことをしてくれていたのか…
申し訳ない。
「何でも、あと2つサブスク動画サイトを契約したいのと、欲しいゲームの発売が間近だそうで」
あ、それは自分で稼いでくれ
「ところでシャフ君、魂管理の進捗はどうなの?」
「進捗も何も、あっちでネット使えないじゃないっすか。主オススメの漫画なら24巻まで読んだっす」
お前、100巻以上あるのに電子書籍で全巻一括購入したんじゃないだろうな。
私は、自分のタブレットで確認すると、シャフ君はやはり全巻一気に買っていた。
もう!キャッシュフローを考えてよね!
と思いつつ、1巻から読み直していたらいつの間にか眠っていた。
朝起きると、みんなひとっ走りしてきたようで、各々ダラダラしていた。
囲炉裏の横に落魂が置かれている。またムーンが拾ってきたのだろう。
シャフ君はコタツで漫画を読んでいる。
こいつ、このままだと働かないぞ…
ノウナシを処刑した手前、何もしないというわけにはいかない。
たぬきの電波を御神木様内で受信する方法を考えねばな…
落魂でたぬきを複製する…?
それはなんか嫌だな。
たぬきはたぬきだけだもん。
「あれは?もこもこにひたすら針を刺す苦行。たぬきの抜け毛でやったら?」とムーンが言う
苦行…?羊毛フェルトか!
めんどくさいな…
生前も、手をつけてみたものの何千回、何万回刺せば良いんだよって嫌になり、結局得体の知らない物体ができてすぐにやめた。
「たぬきー、ちょっと大きくなってー」囲炉裏のそばに転がるたぬきにお願いする。
「えぇ?今いいとこなのに…」
何が?
と、言いつつもなんやかんや大きくなってくれた。
私は生前たぬきが好きだったブラシを神力で作り出し、ブラッシングをした。
抜ける抜ける!
あれよあれよと毛が集まる。
それを集めて、ひたすら手のひらで転がしてボールを作る。
ちょっと耳の部分も引っ張ったりして作った。
問題はこれで受信できるかだ。
「シャフ君、ちょっとこれ持って。
きなこ、シャフ君を御神木様まで連れて走って」
私がシャフ君に、毛玉を渡すと、きなこが勢いよくシャフ君を咥えて走って行った。
そろそろかな。
「どう?受信できてる?」とチャットを送ると、「できてます」と返事が来た。
おぉ!!すごいな!たぬきの毛!
毛だいぶ余ったので、ロウくんに捨てておいて欲しいと頼んだ。
さて、私はひとっ風呂浴びるか!
庭の露天風呂の初使用だ。
神は汗もかかないし、特に風呂に入る必要はないが、こればっかりは習慣なんだろうな…
熱めのお湯に、吹き抜ける風が気持ち良い。
長湯したあと、きなこと縁側でダラダラ漫画を読んでから、囲炉裏の部屋に戻った。
……ん?
さっき適当に作った猫の頭の形をしたルーターに、胴体まで付いて、招き猫の形に綺麗に仕上がっていた。
「ふふっ」とロウ君が後ろを通った。
手芸までできるのか…!
翌日、招き猫型ルーターは、私が適当に作ったものよりも爆速回線だったとシャフ君が感動していた。
なんだこの敗北感は…




