第12話:初めての眷属作り
「落魂、30個くらいあるね」
私はそう言いながら、先ほど教わった基準でランク順に並べていた。
ガラスのような完全クリアなものをレベル0とし、最高ランクをレベル10とした。
物騒な色をしたものはとりあえず除外した。
「魂たちを管理するのには、どれくらいのレベルが必要なんだろ?」
並べた落魂を見ながら、そう聞くと規律の神がレベル4を手に取った。
「今の眷属はこのくらいでしたかね…」
低っ!
今度は地神様が1つ手に取った。
「怠惰のいうダイチは、これくらいだった」
おぉ、レベル9か。
他の3柱も同じだと言っていた。
最古参の最側近眷属が9なら、レベル8あれば十分だろう。私はレベル8の落魂を規律の神に渡した。
問題は神力だ。
「神力どうしましょうねぇ…」
「そうねぇ…」
風神様も一緒に頭を傾けた。
「体内に取り込まないといけないからねぇ。他の神の神力ってどうやって取り込むのかしら…自分の分は領地で呼吸していれば取り込まれるらしいけど…」
うーん…
その時、視界の端でドンが大玉の1つをドボンと湖に落とした。
「ドン?何してんの?」
跳ね返ってきた水滴を振り払ってからドンが答えてくれた。
「こうした後に、おかきが結界を解くと、神力が湖に溶けて、御神木様が吸収できるらしい。他の神々は、体内に取り込んである神力を湖に祝詞と一緒に献上してるんだって」
ほぅ…
「じゃあ水に溶けるのか!おかき、この大玉の周りに空間ができるようにもう一個結界かけて!」
その中に水を入れて、1個目の結界を解けば神力水が出来上がるはず。あとは水…
「スイ、水出せる?ここに入れて欲しいんだけど…」
エンがファイアボール、フウが竜巻を起こしていたくらいだから、水を生成することもできそうだ。
「出せますよ。おかき様、2つ目の結界の上部だけ開けることは可能ですか?これが我々の初めての共同作業ですね…ふふ…」
「ちょっと待ったぁ!僕がやる!!」
水神様が割って入った。
私はいったい何を見せられているんだ。おかきもちょっと照れているのはなんなんだ。
どっちでもいいから早く水を入れてくれ。あとおかきは誰にもやらん。
結局水神様とスイが同時に水を出して入れた。おかきが1つ目の結界を解く。
溶けてる…?混ざってるのかなこれ…
「よし!みんな!円陣ボール遊びだよ!ドンとアッシュは力加減気をつけてー」
そういうと、猫と犬が円に並んでゴロゴロとお互い向けに転がし合っている。こうすれば中身が混ざるだろう。
バレーボール部時代を思い出すなぁ…
ボールが来ない仲間はずれが出ないように、誰が何回触ったかカウントしてたっけ…
だが今目の前で広がる光景は平和そのものである。もふもふたちが、前脚でちょいちょい触って転がし合っているのだから。
私はしばらくおかきにもたれかかって、並んで日向ぼっこした。
「そろそろいいんじゃないか?」
ふっと影が落ち、目を開けるとエンだった。
「ん?おーい、ボールちょうだーい」
声をかけると、すごい勢いで転がってきた。
アッシュのバカー!!潰れるっ!私が!
筋肉自慢のダイチがボールを止めてくれた。
ありがたやぁ…ありがたやぁ…
炎神様が「それをどうするんだ?」と聞いてきた。
「え?飲んでみれば良いのでは?体内に吸収されればいいんですよね?」
ちょうど『外の応接間』のローテーブルの上にあったフルーツが盛られた深皿が目に入った。それを手に取り、神力水をすくって規律神に渡す。
「はい、イッキ!イッキ!」
私は規律神にとっとと飲み干せと促す。これが現世なら、立派なパワハラだ。
だが今はそんなこと言ってられない。早いとこ新しい眷属を作ってくれ。
2杯ほど飲ませるとギブアップされたが、十分眷属を作れそうとのことなので、成功だ。
私も飲んでおこう。グラスを取ってきて飲んでみると、ただの水だった。
でも味は水だが、なんだか力がみなぎってくると言うか、身体中に巡るのがわかった。
これが神力か。もう一杯いっとくか…とすくっていると、パァッという光が見えた。
どうやら規律神が眷属を作ったらしい。
おぉ!今度は仕事ができそうなサラリーマンみたいなのが出てきた!
アプデされている!
「昨夜、ちょっと現世を覗いて勉強して参りました」
規律の神が少し照れくさそうにしている。
えらい!本当はちゃんとした人なんだな。融通が効かないだけで。
「これで本格的にノウナシは要らなくなりましたね。
処しましょうか、極刑に。ここの記憶を持ったままとかできます?」
そう聞くと、地神様が教えてくれた。
「そもそも極刑とはそういうものだ。
ここでの記憶があるのに、誰にも話せないという呪い付きだ。1番過酷な世界線に、適応していかなければならない、そして死があるという苦悩と恐怖、誰にも言えないという孤独、それがこの極刑の本質だよ。
しかも100年、死ねない。
怠惰の場合は元々人間として生きて死んで、神になるはずが人間になったから、ここでの記憶はなかったがな。
ただ、完全な人間の魂ではないがために、適応しきれないという苦悩と孤独はあっただろう…」
4柱、4眷属は気の毒そうにこちらを見る。規律神は申し訳なさそうに俯いている。
「………確かにつらかった。
人間たちとはどれだけ頑張ってもうまくやれなかった。でも、この子たちがいましたから!」
私はしんみりした雰囲気を吹き飛ばすように笑った。御神木様も笑うように風になびく葉音がする。
フウが「さすが極刑を生き抜いた怠惰様はタフね!」と言い、空気を変えてくれた。
私は箱入りノウナシを覗き込んで、「ねぇ、今どんな気持ち?」とニヤニヤ聞いてみた。
自分を捨てられるはずがないと思って、自分の主神すらバカにしたような態度をとっていたのに、今や顔が真っ青だ。
「お前ら!規律と秩序がいない魂管理なんてうまくいくはずがない!このクズどもが!必ず後悔するからな!」
おやおや、本性が出てしまいましたね。
「あんたの上位互換の有能な眷属さんがもういるので、大丈夫ですー!文字通りお払い箱だね。ガンバッテ⭐︎」
どす黒い落魂には要注意だな。
地神様がヒョイっと箱入りノウナシを連れて行った。
「いやだぁああぁ!!」
背後から聞こえるが、自業自得だもの。あの人の両親になる人、スパルタだといいな…
規律の神は、すでに新たな眷属に色々と説明をしていた。すごい、決定事項に対しては切り替えが早い。
「私も眷属を作りたいのですが、どうやればいいですか?また規律の神の眷属だけだと、効率化できないだろうし…」
私がそう言うと、炎神様が教えてくれた。
「まず落魂を両手で包んで、どういう眷属を作りたいか具体的にイメージする。
それから、両手に神力を集めて落魂に注ぎ込むんだ。
落魂の質が良いほど複雑なイメージを取り込んだ眷属が作れるぞ」
ほーん…まずは練習した方がいいだろう…
私はレベル1の落魂を手に取り、イメージする。神力はさっき神力水を飲んだ時に身体を巡ったあれだろう。
それを手に移動させて…なんだか吸い取られていく感覚がする。
うぬぬぬぬ…と力とイメージをこめる、
すると、パァッ!と光った。
できた!!!
「な、何これ…」「「シマエナガだ!!」」
風神様の声に、水神様とスイの声が被る。
わぁああぁ!かわいい!でかいシマエナガかわいい!!私はシマエナガのおなかにもふっとうずまる。
「今日から君は『しらたま』だ!」
「わたしのなまえ…しらたま」
おぉ!しゃべった!そうか、眷属は話せるのか。
「ど、どうして鳥を眷属に…?普通人型をつくるのよ?」
風神様が当たり前のことを聞いてきた。
「え?かわいいからですけど…?大きなシマエナガがいたら、もふもふしてみたいなぁってずっと思ってたし…」
「わたし、かわいい。おそらもとべる」
知能があまり高くないのだろう、幼児のような話し方だ。これは落魂のレベルの影響ってことか…
「スイー!この子、スイとも会話できるだろうし、仲良くしてあげてよ。
空も飛べるし、スイの移動も手伝ってもらえるんじゃないかなぁ…色々教えてあげて欲しいんだけどお願いできる?」
スイは目を輝かせて首を縦にブンブンして頷いている。水神様も隣で何故かスイと同じくブンブンしている。
いや、うちの子であることには変わりありませんからね?あげませんよ?
よし、しらたまの教育係はお願いできた。
天界のことがわからなすぎるから、眷属に何を教えたらいいかわかんないんだもん。
眷属作りのコツは掴んだし、次はいよいよ効率厨眷属作成だ!!




