第11話:落魂とシゴできもふもふ
「現怠惰様、お初にお目にかかります。規律と秩序を司る者でございます。以後、お見知り置きを…」
挨拶あったー!
そ、そうか、あの4人は自然由来の神だもんな。挨拶は動物の文化だもんな。
「これはご丁寧に…こちらこそまだ新神ゆえ、至らぬ点も多いかと存じますが、何卒よろしくお願い致します…」
反射的に元人間の挨拶が出た。
「この度は私どもの失態、そして眷属の至らぬ点に関しまして、誠に申し訳ございません。ただ、この眷属を解任および人間に堕とすことはご容赦頂きたく…」
「え、やだ」
思わず食い気味に言ってしまった。
「あ、おかき、結界でノウナシを逃さないように閉じ込めれる?」
その瞬間、真四角の結界が現れた。箱入りノウナシの完成です。
「昨日聞いた話だけでもあいつは本当に無能。
そして実務君たち人間は、ここでも寿命があるのでしょう?効率化すればすぐ終わるものを改善せず、彼らの時間を無駄に奪ってもいた。
人間にとっては、『時間』は『命』の単位みたいなものなのに。
自分の怠慢で、じわじわと他人の命を搾取し続けるあいつは十分罪人だよ」
皆、唖然としていた。
限りある命の使い方を、天界では、いや神々は気にもしてこなかったようだ。
規律神が重い口を開いた。
「そこまで考えが及んでいなかったのは事実です。そして私も彼の極刑については異論は元々ございません。
しかし…新たな眷属が今の私には作れないのです。手元に質の良い落魂と、神力が現在ないのです…」
?????
「落魂ってあのあそこから落ちてたやつのこと?昨日ちょうど落ちるとこ見てドンがそう言ってたけど…」
そう言うと、水神様が目を輝かせて、教えてくれた。
「ドンくん賢いねぇ!そう、それだよ。
あそこの魂たちも昔はあれより少なかったんだよ。世界線を増やした時に、その分増えたんだ。
何であそこから落ちてくるかはわかってないんだけど…
その落魂に神力を込めて眷属を作るんだよ。神々は自分の領地に落ちてきた落魂を自分のものとして管理しているんだ。
その中にも質の違いがあって、色が乳白色になるほど質が高く、透明になるほど質が悪い。
あとどす黒いような色は邪悪なものでもあるから気をつけて」
ほーん…
「それってさ、リストから漏れてたか、リストにはあったけど転生先の指定漏れなんじゃないの。まぁいずれにせよ対応漏れなんだけど」
ハッ!っと言う文字がでかでかと背後に見えるくらい、全員が目を丸くしていた。
「ほらね。あんなアナログな方法で大量のデータをさばききるなんて無理なんだって。
もしかして世界線を複製する前からやり方変えてないんじゃないの?
処理数が劇的に増えたら、対応人数も相応に増やすか、やり方を変えないとミスも漏れも出るよ」
規律の神が目に見えてしおしおになっていく。
「ちなみにノウナシを作った時の落魂はどんな色だったの」
無能な上司くらいの知性があるということは多少質のある落魂だったのではなかろうかと思い、聞いてみる。
「あの頃は落魂が本当に希少で、透けてはいたけれど、色付きだったんです。
………ちょっとどす黒かったけど」
最後小声で何かとんでもないこと言ったな!?
「それで今あいつよりマシな落魂がない上に神力もないから、ノウナシがいなくなったら困る、と」
「はい…」
規律の神が俯きながら答えた。思わず盛大なため息が出てしまう。
あいつのあの余裕っぷりはそれか。神なのに配下に足元見られてるじゃん!
「ちなみに神力がないのはなぜ…?」
「その…私の領地で問題が起こるたびに規則を増やしていったら、矛盾が出始めてきてしまって、ついに制度が破綻してしまいまして…
制度を整理するために、既存の制度をいま連日徹夜して矛盾を整理していて、そのために神力を使い、さらに御神木様にも献上をしたばかりで…」
揃いも揃って…アホなの?
「そんなもんデータをAIにぶち込んで判定させればすぐ終わるでしょ!」
「えい…あい…?それは信用に値するのですか?」
「ハルシネーションを起こすから最終チェックは必要だけど、あんたが疲弊して身体強化だか何してるんだかわかんないけど、神力キメた状態でやるよりは正確だろうよ」
この規律コンビ…ダメだ。任せられない。
「まぁいいや!とりあえず良質の落魂と神力があればいいのね!それって他神のは使えないんですか?」
私は切り替えて他の神に聞くと、地神様が答えてくれた。
「落魂はたまたま落ちた場所ってだけだから、譲渡しても影響はない。
ただ神力は…譲渡できないこともないが、多少元の神の影響が出るかもしれないな」
ならよし!もうさっさと終わらせよ!
その時ちょうどドンとアッシュが戻ってきているのが見えた。ドンの上に通常サイズのムーンが乗っている。
よくわからないがドンもアッシュもそれぞれ、光る大玉を転がしながら走ってきている。
「ただいまー!!」
「おかえりー!!それ何?」
私は3匹を両腕を広げて出迎えた。
「神力のストックを持ってきたんだ。そろそろ何かしら必要かと思って。御神木様にも必要そうだし」
ドンが答えてくれた。
へぇこれが神力かぁ…なんで球体なんだろう。どうやって、どこからできるんだろう。
「これってどうやって使うんですか?」
「「「「知らん」」」」
4柱の声が揃った。
「何で固形なの…?どう言う原理…?」
風神様がコンコンと不思議そうな顔でノックしていると、おかきが私を見て教えてくれた。
「僕の結界で閉じ込めてるのぉ。そうすれば凪が吸収するはずだった怠惰神の神力が霧散しないでしょぉ?
うまくできるようになるまで時間かかっちゃったけどぉ…
御神木様にも、このストックを湖に落として献上してたんだよぉ」
「時折感じていた怠惰の気配はそれだったのか!」
片手で太ももを叩かながら炎神様が大きな声を出した。
よくわからないけど、本来私がやるべきことを、私がいない間はみんなが一生懸命協力してやってくれてたの——?
ありがとう…ありがとね。
ストっとムーンが降りてきた。
「はい、これ!どうせ眷属作るんでしょ?」
きなこの風呂敷の包みを咥えて渡してきた。中を見ると、色んな石が大量に入っていた。
「それ落魂だな」
炎神様が覗き込んできた。
えっ!!
「キラキラしてたから、見つけたら集めてたの。なんかそれが落魂だって最近知ったんだけど」
そういえばムーンは昔から収集癖があった。
お?これで新しい眷属の材料、揃ったんじゃない…?
読んでくださりありがとうございます!
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