表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/34

【第3話】断罪の儀式は、撮影禁止ですわ!


 「……くっ、(かがみ)から()()してくるなんて、悪趣味(あくしゅみ)魔族(まぞく)ですわね! これだから下等生物(かとうせいぶつ)(きら)いなのよ!」


 リリシアは、咲季(さき)()せられたセーラー(ふく)(みじか)(すそ)()にしながらも、和希(かずき)(まえ)毅然(きぜん)()ちはだかった。


 (かがみ)()こう(がわ)から(あらわ)れたのは、漆黒(しっこく)(うろこ)(おお)われた不気味(ぶきみ)なトカゲ(おとこ)――魔王軍(まおうぐん)下級(かきゅう)兵士(へいし)だ。その()には()びた短剣(たんけん)(にぎ)られ、ドロリとした粘液(ねんえき)(ゆか)()()らしている。


「ギギギ……()つけたぞ、聖女(せいじょ)……。その魔力(まりょく)なき姿(すがた)、ここで(いき)()()めて……魔王様(まおうさま)への手土産(てみやげ)にしてくれるわっ!」


「うるさいわよ、この下等生物(かとうせいぶつ)が! 魔力(まりょく)さえ潤沢(じゅんたく)にあれば、貴方(あなた)なんて一瞬(いっしゅん)()(ずみ)にして、(はたけ)()やしにしてやるわ……!」


 リリシアは高飛車(たかびしゃ)態度(たいど)(くず)さないが、その(ほそ)(あし)小刻(こきざ)みに(ふる)えている。それもそのはず、彼女(かのじょ)魔力残量(まりょくざんりょう)(いま)やゼロ。生身(なまみ)(おんな)()()わらない状態(じょうたい)なのだ。


 そんな彼女(かのじょ)(ほそ)(かた)を、和希(かずき)(ふる)える()力強(ちからづよ)(つか)んだ。


 「リリシア、()がってろ! ここは(おれ)が……勇者(ゆうしゃ)()()くこの神代(かみしろ)和希(かずき)が、(いのち)()えても(まも)ってみせる!」


 「……な、(なに)()っているの、この不潔(ふけつ)ジャガイモ! 貴方(あなた)みたいな最弱(さいじゃく)個体(こたい)が、魔族(まぞく)()てるわけないでしょう! ()(ほど)をわきまえなさい!」


 リリシアは(かお)()()にして和希(かずき)怒鳴(どな)りつけた。だが、その(ひとみ)には、自分(じぶん)(かば)おうとした和希(かずき)への(かく)しきれない動揺(どうよう)と、ほんのわずかな(ねつ)()じっている。


 「い、いいから、はやく(わたし)とパスを(つな)ぎなさい! 魔力(まりょく)がないと(たたか)えないから、不本意(ふほんい)だけど、この()()わりみたいな気分(きぶん)()っているんですからね! 勘違(かんちが)いしたら承知(しょうち)しないわよ!」


 必死(ひっし)早口(はやくち)()(わけ)(なら)べながら、リリシアは和希(かずき)のシャツをぎゅっと(つか)み、その(かお)強引(ごういん)()()せた。


 その背後(はいご)では、咲季(さき)がスマホのレンズを限界(げんかい)まで()せ、冷徹(れいてつ)(きわ)まりない(こえ)実況(じっきょう)録音(ろくおん)していた。


 「はい、現在(げんざい)時刻(じこく)午前(ごぜん)7()15(ふん)和希(かずき)くんが(なぞ)留学生(りゅうがくせい)不純異性交際ふじゅんいせいこうさい……というより、公然(こうぜん)わいせつに(ちか)行為(こうい)(およ)ぼうとしています。証拠映像(しょうこえいぞう)は4K画質(がしつ)保存中(ほぞんちゅう)です」


 「咲季(さき)本当(ほんとう)にやめてくれ! これは世界(せかい)命運(めいうん)()けた、(せい)なるエネルギー変換(へんかん)なんだってば!」


 「和希(かずき)くん、その(くる)しい供述(きょうじゅつ)少年課(しょうねんか)取調室(とりしらべしつ)でたっぷり()いてもらうわね。あ、リリシアさん、もうちょっと(ひだり)()って。逆光(ぎゃっこう)()えにくいわ」


 絶体(ぜったい)絶命(ぜつめい)空気(くうき)(なか)、トカゲ(おとこ)がしびれを()らして(した)をチロチロと()しながら(おそ)いかかってくる。


 「……ああもう! 外野(がいや)がうるさすぎるわ! カズキ、()()じなさい! ジャガイモ(きん)(うつ)(まえ)に、一瞬(いっしゅん)()わらせるわよ!」


 リリシアは(みずか)(さけ)ぶと同時(どうじ)に、和希(かずき)(くちびる)自分(じぶん)のそれを(いきお)いよく(たた)きつけた。


 ――ドクン!


 昨日(きのう)以上(いじょう)(はげ)しい衝撃(しょうげき)二人(ふたり)(つつ)み、視覚(しかく)(うば)うほどの黄金(おうごん)(ひかり)(ろく)(じょう)(ひと)()部屋(へや)()たした。


 リリシアは(かた)(いき)()らしながら(かお)(はな)すと、(かお)(みみ)(うら)まで()()にして、和希(かずき)(むね)ぐらを小刻(こきざ)みに(ふる)えながら(つか)(なお)した。


 「……っ。い、(いま)のは(たん)なる魔力(まりょく)供給(きゅうきゅう)! 事務(じむ)(てき)手続(てつづ)きなのよ! 『意外(いがい)(わる)くないな』とか、『リリシアの(くちびる)(あま)(にお)いがした』とか、(ぜっ)(たい)(おも)わないでよね! そんなこと(かんが)えたら、(つぎ)(たましい)ごと浄化(じょうか)してしまうわよ!」


 「いや、(おれ)(なに)(くち)()してないんだけど……。でも、おおお! ()()()た! 勇者(ゆうしゃ)のパワーが五臓六腑(ごぞうろっぷ)()(わた)るぞ!」


 和希(かずき)(からだ)から(はな)たれる、そして地球人(ちきゅうじん)には()えない黄金(おうごん)のオーラが、部屋(へや)(すみ)(ころ)がっていた「あるもの」に宿(やど)った。


 それは、サキが(あさ)の「お目覚(めざ)(みず)鉄砲(てっぽう)(よう)()ってきた予備(よび)の「透明(とうめい)ビニール(がさ)」だった。


 「カズキ、それを使(つか)いなさい! (いま)貴方(あなた)なら、その(やす)っぽい(ぼう)でも(せい)なる武具(ぶぐ)として(あつか)えるはずよ!」


 「よしきた! この650(えん)聖剣(せいけん)で、異世界(いせかい)のゴミを掃除(そうじ)してやるぜ! ()らえ、トカゲ野郎(やろう)! 必殺(ひっさつ)! ルミナス・ジャッジメント・アンブレラ!」


 和希(かずき)黄金(おうごん)(かがや)(かさ)(するど)()()すと、そこから(はな)たれた(すさ)まじい(ひかり)奔流(ほんりゅう)がトカゲ(おとこ)(むね)直撃(ちょくげき)し、(かがみ)()こうへと(はじ)()ばした。


 「ギギェェェーッ!? バ、バカな、そんな貧弱(ひんじゃく)装備(そうび)に、これほどの(せい)(りょく)宿(やど)るはずが……ぐはぁっ!」


 (かがみ)がパリンと派手(はで)(おと)()てて()れ、(くろ)(きり)とともに魔族(まぞく)次元(じげん)彼方(かなた)へと()()った。


 静寂(せいじゃく)(もど)った部屋(へや)で、和希(かずき)()()がったビニール(がさ)を、あたかも伝説(でんせつ)(せい)(けん)であるかのように格好(かっこう)よく(かま)(なお)した。


 「ふっ……。やはり(おれ)勇者(ゆうしゃ)としての才能(さいのう)は、この世界(せかい)(やす)(もの)(かさ)すらも超越(ちょうえつ)してしまうようだな」


 「……和希(かずき)くん。(いま)のシーン、()った動画(どうが)()(かえ)すと、本当(ほんとう)(すく)いようがないわよ。必死(ひっし)形相(ぎょうそう)(かさ)(かべ)に|突き()して、『ルミナスなんとか』って(さけ)んでる……。おばさんに()きつかれるわよ、(わたし)


 サキが()せてきた動画(どうが)(なか)には、(ひかり)魔物(まもの)(うつ)っておらず、ただ(あさ)から一人(ひとり)(かさ)()って奇声(きせい)()げる和希(かずき)の、(いた)すぎる日常(にちじょう)(おさ)められていた。


 「う、(うそ)だろ……。(おれ)(ぜん)(れい)(りょく)()めた一撃(いちげき)だったのに、デジタルの(かべ)()えられないのかよ……」


 「……ふん、当然(とうぜん)でしょ。この世界(せかい)(ひと)には、魔力(まりょく)()()こす物理(ぶつり)現象(げんしょう)()えないんですから。……でも、まぁ、その……」


 リリシアは、ツンと(あき)らかに不自然(ふしぜん)角度(かくど)(よこ)()きながら、(みみ)まで(あか)()めたまま、()()りそうな(ちい)さな(こえ)(つづ)けた。


 「……貴方(あなた)にしては、(すこ)しだけ……ほんの微粒子(びりゅうし)レベルで、(たよ)りになった……と()ってあげなくもないわ。あくまで、(わたし)()(まも)(たて)としての性能(せいのう)(はなし)ですけどね!」


 そう()って、()(かく)しに和希(かずき)背中(せなか)をポカポカと(たた)くリリシアの足元(あしもと)に、(あたら)しい「(あい)のドロップ」が2つ、カランと(かる)(おと)()てて(ころ)がった。


 「あ、またドロップ。……リリシア、(いま)のは(おれ)への『(あい)』の(あらわ)れってことでいいのか?」


 「な、(なに)をバカな寝言(ねごと)()ってるのよ! これは、咲季(さき)さんの『あまりの痛々(いたいた)しさに(すく)いようがないと(おも)(こころ)』と、(わたし)の『不潔(ふけつ)ジャガイモに()れられてしまった屈辱(くつじょく)』の結晶(けっしょう)()まってるでしょ! 自惚(うぬぼ)れないでよね、この鈍感(どんかん)ジャガイモ!」


 リリシアは(かお)湯気(ゆげ)()そうなほど(あか)くして(さけ)ぶと、和希(かずき)(あし)(おも)()()みつけて部屋(へや)から()()した。


 「……(いた)たた。和希(かずき)くん、あの()本当(ほんとう)大変(たいへん)そうね。……ま、(わたし)がしっかり見張(みは)っててあげるから安心(あんしん)しなさい」


 「咲季(さき)……その『見張(みは)る』の主旨(しゅし)が、警察(けいさつ)への通報(つうほう)準備(じゅんび)じゃないことを(いの)るよ……」


 和希(かずき)()れた(かさ)(にぎ)りしめ、これから(はじ)まる(あらし)のような学園(がくえん)生活(せいかつ)予感(よかん)して、(ふか)いため(いき)をつくのだった。


 ((だい)4()(つづ)く)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ