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【第29話】姉妹の断絶と聖女の決意


 月光(げっこう)()らす神代(かみしろ)()(にわ)は、刹那(せつな)にして殺気(さっき)渦巻(うずま)戦場(せんじょう)へと変貌(へんぼう)した。()(じょう)(さき)から(したた)るような(くろ)魔力(まりょく)芝生(しばふ)()がし、(あま)空気(くうき)腐敗(ふはい)させる。


「ベルリナ……どうして、貴方(あなた)魔王(まおう)(がわ)に……! (わたし)たち、二人(ふたり)(ちか)ったはずでしょう? 世界(せかい)平和(へいわ)(まも)り、人々(ひとびと)平和(へいわ)()らせる未来(みらい)(つく)るのだと!」


 リリシアの(さけ)びは、夜風(よかぜ)()って(むな)しく(ひび)いた。ベルリナは冷笑(れいしょう)()かべたまま、(ほそ)(ゆび)()(じょう)(あやつ)る。その所作(しょさ)に、(じつ)(あね)であるリリシアへの(いつく)しみは、もはや欠片(かけら)(のこ)されていなかった。


平和へいわ? 未来みらい? ……あはは、(なに)寝言(ねごと)()っているの、お姉様(ねえさま)(わたし)たちが()きてきた過酷(かこく)世界(せかい)において、それはただの弱者(じゃくしゃ)戯言(たわごと)強者(きょうしゃ)こそが正義(せいぎ)魔王(まおう)(さま)(もと)でこそ、(わたし)たちは(しん)価値(かち)()られるのよ」


 ベルリナの(ひとみ)(おく)宿(やど)漆黒(しっこく)()(もん)が、(あや)しく明滅(めいめつ)する。その光景(こうけい)に、ステラは無表情(むひょうじょう)分析(ぶんせき)(くち)にした。


「……演算(えんざん)結果(けっか)対象(たいしょう)魔力(まりょく)波動(はどう)(きわ)めて異常(いじょう)精神(せいしん)中枢(ちゅうすう)魔王(まおう)による強制(きょうせい)介入(かいにゅう)()けていると推測(すいそく)されます。…… ベルリナと()ばれる個体(こたい)は、(すで)魔王(まおう)(あやつ)人形(にんぎょう)()しています」


「そんな……」


 リリシアは(こぶし)(ふる)わせる。(となり)では咲季(サキ)が、妖艶(ようえん)()みを()し、(するど)眼差(まなざ)しでベルリナを見据(みす)えていた。


和希(かずき)くん、準備(じゅんび)はいい? あれはただの(いもうと)じゃない。魔王(まおう)分身(ぶんしん)だわ。生半可(なまはんか)(あい)(いど)めば、(わたし)たち全員(ぜんいん)()深淵(しんえん)()まれる」


「わかってる」


 和希(かずき)は「(ひかり)のペン」を(にぎ)()めた。(まち)修復(しゅうふく)使(つか)ったペンは、(いま)和希(かずき)意志(いし)呼応(こおう)して黄金色(こがねいろ)火花(ひばな)()らしている。


「ベルリナ! (わたし)貴方(あなた)(たたか)いたくない。だけど、(みんな)大切(たいせつ)日常(にちじょう)を、貴方(あなた)()には(わた)さない!」


 リリシアが(にわ)へと()()す。聖女(せいじょ)(ひかり)と、ベルリナの(はな)()(だん)(はげ)しく衝突(しょうとつ)し、衝撃(しょうげき)()(よる)静寂(せいじゃく)粉砕(ふんさい)した。


「……あはは! 綺麗(きれい)ねぇ、お姉様(ねえさま)(ひかり)は。でも、そんな(ぬる)(ひかり)で、魔界(まかい)絶望(ぜつぼう)()らせるのかしら!」


 ベルリナは()(じょう)(そら)()()げた。すると、彼女(かのじょ)(かげ)から数多(あまた)魔物(まもの)()()し、神代(かみしろ)()屋根(やね)へと駆け(かけ)()がる。(たたか)いは一瞬(いっしゅん)にして神代(かみしろ)()全体(ぜんたい)()()大乱戦(だいらんせん)へと拡大(かくだい)した。


「ステラ!咲季(サキ)! 左右(さゆう)からの迎撃(げいげき)を! リリシア、正面(しょうめん)(おれ)(おさ)える!」


「……了解(りょうかい)目標(もくひょう)排除(はいじょ)します。(わたし)回路(かいろ)(ぜん)出力(しゅつりょく)解放(かいほう)


 ステラが()(かざ)すと、無機質(むきしつ)空間(くうかん)転移(てんい)(じゅつ)発動(はつどう)(おそ)()かる魔物(まもの)たちを異次元(いじげん)へと()(はら)う。咲季(サキ)妖艶(ようえん)()(おど)り、魔物(まもの)たちを(あま)魅了(みりょう)(かお)りで混乱(こんらん)へと(おとしい)れた。


 一方(いっぽう)和希(かずき)はペンを(はし)らせる(たび)に、(いえ)()()される「防御(ぼうぎょ)言霊(ことだま)」で防壁(ぼうへき)構築(こうちく)(こわ)されては(えが)き、(ふせ)いでは上書(うわが)きする。オタクの想像(そうぞう)(りょく)と、ペンによる現実(げんじつ)改変(かいへん)(のう)(りょく)極限(きょくげん)まで(ため)される。


「カズキ! ベルリナの本命(ほんめい)は、貴方(あなた)()にあるそのペンよ! 彼女(かのじょ)()(じょう)には、次元(じげん)そのものを(けず)(のろ)いが()もっている。ペンを(まも)って!」


 リリシアの(さけ)びと同時(どうじ)に、ベルリナが縮地(しゅくち)(ごと)速度(そくど)和希(かずき)眼前(がんぜん)()()んだ。漆黒(しっこく)(かま)(おも)わせる()(じょう)が、和希(かずき)喉元(のどもと)(ねら)う。


「……(いただ)くわ。その、(ことわり)をも(つく)える傲慢(ごうまん)古代(こだい)魔法(まほう)(ちから)をね!」


「させない……っ!」


 和希(かずき)間一髪(かんいっぱつ)足下(あしもと)(ゆか)にペンを(たた)()み、「弾性(だんせい)結界(けっかい)」を展開(てんかい)。ベルリナの猛攻(もうこう)(はじ)(かえ)すが、その反動(はんどう)咲季(さき)とステラが(はじ)()ばされる。


「あはは! やっぱり和希(かずき)くんは、お姉様(ねえさま)(まも)るためなら、自分(じぶん)仲間(なかま)すらも(こわ)しちゃうんだねぇ! (いびつ)(いびつ)だよ!」


 ベルリナの嘲笑(ちょうしょう)(いた)い。自分(じぶん)(まも)ろうとしているのは、(しん)平和(へいわ)なのか、それとも彼女(かのじょ)たちとの(あま)生活(せいかつ)維持(いじ)したいという、独占(どくせん)(よく)なのか。


 (まよ)いが、ペンの(せん)(かす)かに(にぶ)らせる。


「カズキ! (まよ)っちゃダメ! (わたし)たちは、大丈夫(だいじょうぶ)貴方(あなた)(つく)ってくれたこの日常(にちじょう)で、(しん)(あい)(まな)んだの。……貴方(あなた)()(ふる)えるのは、(みんな)への(やさ)しさのせいでしょう? でも、今日(きょう)だけは、その(やさ)しさをベルリナを(すく)うために使(つか)って!」


 リリシアの言葉(ことば)に、和希(かずき)(つよ)(くちびる)()()めた。そうだ、ベルリナを(たお)必要(ひつよう)なんてない。魔王(まおう)(のろ)いを、このペンで「修正(しゅうせい)」すればいいんだ。


「ステラ! ベルリナの魔力(まりょく)回路(かいろ)特定(とくてい)しろ! 咲季(サキ)(おれ)背中(せなか)(まも)って!」


了解(りょうかい)! (わたし)魅力(みりょく)で、その(いもうと)ちゃんを足止(あしど)めしてあげる!」


 咲季(サキ)(あや)しく(ひかり)(はな)(ちょう)()れを召喚(しょうかん)し、ベルリナの視界(しかい)(さえぎ)る。ステラが(そら)(うつ)()した複雑(ふくざつ)魔力(まりょく)幾何(きか)(がく)模様(もよう)和希(かずき)はそれら全て(すべて)(ひとみ)()()け、ペンを()()く。


対象(たいしょう)――魔王(まおう)(のろ)い、除外(じょがい)(さい)設定(せってい)!」


 (そら)(えが)かれたのは、複雑(ふくざつ)解法(かいほう)術式(じゅつしき)。ベルリナの周囲(しゅうい)幾千(いくせん)もの(ひかり)粒子(りゅうし)(あつ)まり、彼女(かのじょ)(つつ)()む。漆黒(しっこく)()(もん)()がれ、ベルリナの(ひとみ)宿(やど)っていた(にご)りが(うす)れていく。


「……ッ!? (なに)を、(わたし)に……っ! (あたま)が、()けるように……!」


 ベルリナが悲鳴(ひめい)()げ、()(じょう)()とす。彼女(かのじょ)(しば)()けていた魔王(まおう)支配(しはい)が、和希(かずき)の「修正(しゅうせい)」の(ちから)によって、強引(ごういん)()()られたのだ。


「ベルリナ!」


リリシアが(くず)()ちる(いもうと)()()める。ベルリナの(ひとみ)(もと)()(とお)った(あお)(もど)り、呆然(ぼうぜん)とした表情(ひょうじょう)でリリシアを見上(みあ)げた。


「……お姉様(ねえさま)? (わたし)……魔王(まおう)(つか)まって......(なに)を……」


「もう大丈夫(だいじょうぶ)(かえ)ってきたのね、ベルリナ!」


 リリシアが(なみだ)(なが)して()()める。その姿(すがた)を、和希(かずき)たちは安堵(あんど)表情(ひょうじょう)見守(みまも)った。しかし、頭上(ずじょう)(そら)突如(とつじょ)として紫色(むらさきいろ)反転(はんてん)する。(そら)()てから、巨大(きょだい)魔王(まおう)(ひとみ)(のぞ)()んでいた。


「……修正(しゅうせい)完遂(かんすい)確認(かくにん)排除(はいじょ)シークエンス、開始(かいし)


 ステラの冷静(れいせい)報告(ほうこく)が、()てつく戦場(せんじょう)(ひび)く。ベルリナの(のろ)いを()いたことで、魔王(まおう)本格的(ほんかくてき)にこの神代(かみしろ)和希(かずき)標的(ひょうてき)(さだ)めたらしい。


「ベルリナを(たす)けたのはいいけど、魔王(まおう)本人(ほんにん)逆鱗(げきりん)()れちゃったみたいね。……和希(かずき)くん、(つぎ)はもっと(おお)きなミラクルが必要(ひつよう)みたいね!?」


 咲季(サキ)苦笑(くしょう)しながらも(するど)(かま)える。和希(かずき)はペンを()右手(みぎて)(つよ)(ちから)()めた。(まも)()くべきものが、()えた。その事実(じじつ)が、(かれ)内側(うちがわ)(ねむ)(しん)(ちから)を、(さら)なる(たか)みへと(いざな)う。


(だい)30()続く(つづく)



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