↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やる気のない魔王とヤル気の一般人女性、とキツネ。  作者: 紫藤しと
一、逃げ出した世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/47

6.人外しばり?

 庭でのデート?の後はちゃんと部屋まで送ってもらった。なんせ私一人だと迷って帰れない。城の中は薄暗くて、駆け下りてく途中で蹴飛ばしたスリッパは見つけられなかった。

「ねぇ魔王様」

 歩きながら私は魔王の腕に腕を絡ませようとしたが、身長差があり過ぎてどうにも不自然になりそうだった。できるのは手を肘ごと上げる小さな娘&親スタイルの手繋ぎだけだ。なんだか悔しいのでとりあえず魔王の体にぶつかってみた。

「なに……?」

 魔王は迷惑そうな顔をしている。

「魔王様はどうしてそんなに背が高いの?」

「……王族は…みんな背が高い。血筋だろう。」

 すっごい真面目な返事きた。

「小柄な子と結婚したくなったらどうするの?」

「結婚したくなったら……変わると思う。」

「何が? 誰が?」

「お互いに……」

「どうやって?」

「…………色々だ。」

 はぁ? 答えになってませんけど!? と思ったが魔王の顔はほんのり赤かった。つまり何かを知ってるけど恥ずかしいから誤魔化した? なんなのコイツ。中身十二歳かよ。

 呆れていると魔王は早足になってあっという間に部屋に着いてしまった。

「じゃあ、俺こっちだから。」

 それだけ言うと魔王は隣の部屋へと入っていった。こちらを見もしなかった。好感度が低すぎる。

 仕方ないので私も大人しく自分の部屋に入った。まだ寝るには早い……いやどうなんだろ。ここは時間の経過がさっぱりわからない。窓のそばに立って外を眺めるとどこまでも続く森が見えた。少し前まで私は森の外にいた。ちゃんと一歩ずつ歩いてここまできた。正しい人生ではないけれど、あの村で生きていくよりずっとマシだったと思う。

 冷たい隙間風に身震いして私はベットに入った。ぬくぬくとした布団に満足しているうちに眠ってしまった。


 目が覚めると雨が降っていた。どのぐらい眠っていたのだろう。雨の音と微かに聞こえる生活音。この城には何人の悪魔がいるんだろう。私も早く悪魔になりたい。人間をやめたい。てきるかな? できないなら早く私を……

 短い夢と覚醒を繰り返し頭が痛くなって起きた。何時間経ったのか、もしくは数日経ったのか。わからないけどよく寝た気がする。

 ベットから下りると扉の横に靴があるのが見えた。蹴飛ばしてなくしたと思っていたスリッパと、村から履いてきた革靴だ。一階の部屋に置きっぱなしだったと思うけど、いったい誰が持ってきてくれたんだろう。しかも人が寝てる部屋に黙って置いていくとか……気持ちわる。

 革靴を持ってもう一度ベットに戻った。紐で調整するタイプなので履くのに時間がかかる。これは私の持ち物の中で一番高いものだ。父親の店でタダ同然で働く代わりに手に入れた靴。これ以上高いものは人生で手に入れられないかと思ったりもしたけど……どうだろう。まだわかんないな。

 靴を履いて気合をいれる。流石に寝てるだけじゃゲームだってゲームオーバーだ。情報を集めよう。

 戸を開けて左右の廊下を見る。誰もいなかった。この階は小さいから下への階段をすぐ見つけられる。問題は三階からだ。

 キツネの教え通り壁を触りながら歩いた。そうしてキョロキョロしなから歩いていると、一本道にしか見えない場所でも視界の隅に脇道や階段が見えたりする。おそらく迷いの魔法とやらは正面の道以外見えづらくなる魔法らしい。

 それでもぐるぐるぐるぐる歩かされ、一階に着く頃にはすっかりお腹が減っていた。ほんのり漂う食べ物の匂いを辿り、食堂を覗く。以前見た青いヒトが鍋をかき混ぜていた。

「こんにちはー」

 入口から声をかけると青いヒトが振り向いた。むちゃくちゃゴリラに似ていた。いやゴリラ? ゴリラそのもの?

 混乱してると青いゴリラは無言でスープを器に入れ私に差し出した。袖のない服を着ているので上腕二頭筋の筋肉がよく見える。そしてなにより妙に色っぽかった。フェロモン?

「あ、ありがと。」

 柄にもなく緊張して受け取ると、青いゴリラはまたこちらに背を向けて鍋を搔き回し始めた。なんでだろう。まったくタイプじゃないのにちょっとドキドキする。これって恋? いやでも青いゴリラに恋する準備はできてない。どうしよう。

 いつまでも背後に立つ私を不審に思ったのか青いゴリラが振り返った。

「ひゃあ! あ、すみません!」

 目が合う前に慌てて厨房を飛び出した。やばいやばい。魔王の嫁になりにきていきなり人外に恋するのは急展開すぎる。でもよく考えたら魔王も人外か……キツネも人外だし、これって人外しばりの乙女ゲー?

 廊下でしばらく考えた後、馬鹿らしくなって溜息をついた。真面目にやれよ、自分。選べる立場なのかよ、自分。てかホイホイ惚れるな安っぽい。

 とりあえず目の前にあった扉を開けて椅子に座った。以前も来た部屋だが誰もいなかった。今日はまだ青いゴリラにしか会っていない。この城って何人いるんだろ……五人とかだってりして。

 私はやけくそ気味にスープを器から啜った。スプーンをもらってこなかったから仕方ない。相変わらず薄い味で細かい具材が浮いていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。