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女子的な趣味をオープンにしたら似たような趣味の女子達と仲良くなれて親友まで出来ちゃったお話  作者: いちくん
第二章:女子的な趣味をオープンにしたら魔王と呼ばれてしまった話(仮)
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大弥問答(ダイヤモンドウ)

☆★☆ 5月22日(月) 下校中 ☆★☆


「遼太…今日のお昼…凄かったね……」


 亜子に話かけられても、俺は反応できない。まだ気持ちが高ぶっていて、心がざわついている。


 こんな時はとにかく手を動かして、手芸をするに限る。


 落ち着くための儀式がある。そう考えると、俺は恵まれているのかもしれない。


 心を静める為の、確実なマニュアルがあるのだから……だが


「今日、作業を休もうか……」


 亜子の問いかけの答えにはなっていないが、俺は今、他人の為に仕事ができる心境ではなかった。


 プロ意識が低いと言われればそれまでだが、とにかく俺は今、疲れていた。


 昼休み俺は、いや俺たちは昼飯を食べきることが出来なかった。


 特に俺は、食欲が完全に失せていた。


 気力も体力も底をついたと言っていい。とにかく休みたい。横になりたい。眠りたい。何もしたくない。



 ☆★☆ ☆★☆



「落ち込んでるの?」


 帰り道、考え込んでしまい、黙りこくっている俺に遥香さんが声をかけてくれた。


 落ち込んでるとも落ち込んでないとも言えず、俺は別の事を口にした。


「……渡辺の奴さ、随分と喧嘩慣れしてるように見えたけど、本当に小学校の時は怒ったり喧嘩したりしたこと、無かったの?」


「ええ。前にも聞かれたけど、わたしは見たことも聞いた事もないわ」


「そっか……」


「でも、遼太も案外喧嘩慣れしてるように見えたわよ」

「うんうん。わたしにもそう見えた~」

「少し怖いくらいだったよ?」


 遥香さんをはじめ、みんなの感想は正直に言って意外だ。でも、さっきの俺は感情的になり過ぎてちょっと言い過ぎてたかもしれない。


「……俺も今まで、怒ったり喧嘩したりした事…無かったんだけどな」


「そうなの? それにしては堂々とし過ぎていたように見えたけど?」


 亜子が不思議そうに見つめてくる。


「う~ん。渡辺の、あの、大勢の前で屈服させて、さらに逃げ道を塞いでしまったやり方なんだけど……『あれは危険なやり方だ、絶対に止めなきゃ』って思ったんだ。だから、つい必死になって熱くなっちゃったのかも」


「私的にはスッキリしたけどな~?」


 しおりちゃんはニコニコしている。でもね


「俺も昔、大勢の前で似たようなことされて追い詰められたことがあって、その時『逃げられないのならいっそのことコイツら殺して自分も死のうか』って思う所まで追い詰められたことがあったんだよ……福士と太田に……」


「「「え?」」」


「でも俺には『杉見手芸店』という最後の逃げ場所があったからなんとか堕ちずに戻ってこれた。けれど、もしあいつらに逃げ場がなくて、もし昔の俺のように考えて、そして実際に暴発したりなんかしたら、怪我人が出たり、関係ない人なんかをも巻き込んだりするんじゃないかって、そう思ったんだ」


「そこまでは……」


「あり得ないと思う? ……でも、けっこうあり得る話なんだ。それにもしさ、福士や太田が自殺なんて逃げ場を選んだら、渡辺の精神にも大きな傷がつくんじゃないかって考えてさ、嫌じゃん? 自分のせいで人が死んだとか、そういう十字架を背負って一生を生きていかなきゃならないなんてさ?」


「遼太……」


「明日、渡辺と話してみるよ。今日はなんか熱くなりすぎて喧嘩っぽい感じになっちゃったけど、アイツが俺の為にあそこまで頑張ってくれたことは素直に嬉しいし、別にアイツが虐められてる訳でもないのに何を『超克』したかったのか、全然分かんないのも嫌だし。今日一日、俺、頭冷やしてさ、明日渡辺と話をしてみる。まぁ、せっかくの友達になるチャンスを逃しちゃったかもしれないってのはちょっと残念だけどな~」


「ふふ、大丈夫よ。渡辺くんは本気で遼太の事が大好きだから、チャンスなんていくら逃してもたくさん転がってるわ」


 遥香さんのお墨付きをもらった。よし、少しだけ勇気が湧いてきたぞ。


「じゃあ、今日は作業お休みと言う事で。みんな、また明日ね」


 最初に亜子。次にしおりちゃん。最後に遥香さんを送って俺も帰宅した。


 ちなみに、杉見手芸店への泊まり込みはすでに終了し、自宅には日曜日の夜から帰っている。




☆★☆ 5月23日(火) ☆★☆




 朝、登校時、コンビニに寄って菓子パンと総菜パンをたくさん買い込み、手芸用の手提げをいっぱいにする。これは渡辺が学食に行かなくてもいいようにして、昼休みにもできるだけ長く話が出来るようにする為の手土産だ。あるいは俺的に賄賂とも言う。


 普段よりかなり早く学校についた俺は、しおりちゃんの席付近で待機する。なんか緊張。


 しおりちゃんと亜子が俺を見つけて挨拶をくれる。


「遼太~おっはよー。今日は早いね~」

「おはよ。遼太」


「おはよう。亜子。しおりちゃん」


 すぐに遥香さんも来てお互い挨拶を交わす。


 やがて、渡辺も登校してきた。けど、もうあまり時間がないな。だから


「渡辺。昨日は熱くなって言い過ぎた。すまない。今日、お前と話がしたいんだが、昼休みと放課後、時間を作れないか?」


 とりあえず、昼か放課後の約束だけは取り付けたい。


「お、おお。実はオレもお前とは話をしたいと思っていた。昼は学食から戻ったら、ここの仲間に入ってもいいのか?」


 渡辺と話をすることは昨日、遥香さんからも許可を得ている。


 遥香さんもそろそろ渡辺の事を許して、普通に接するようにしようと思っている、と話していた。だから


「もちろんだ。でも、少しでも長く話をしたいと思って手土産を用意した。見てくれ」


 俺は手提げカバンを丸ごと渡辺に差し出す。


 中を見た渡辺が驚いて「おお。すげえな」


 6種類×2個づつの計12個の菓子&総菜パン。


「飲み物はさすがに(ぬる)くなるだろうと思って買ってこなかったが、話す時間を貰えるならと思って買ってきた。食えないものとか無いか?」


「ハハハッ」と、渡辺が笑う。


「流石に全部は食えないな。でもイイ。食えないものという意味では好き嫌いはないぞ。ありがとよ」


「じゃあ、今はあまり時間がないから、昼休みにここで」


 そう言って俺は自分の席に戻った。




☆★☆ 昼休み ☆★☆




 昨日の件で、足りなかった言葉。そして言い過ぎた言葉。


 俺は改めて渡辺に謝罪し、先に俺から聞いてもらいたいことを話す事になった。


「俺は実は、小5の頃、学校に行けなくなるほどの悪意を向けられて登校拒否をしたことがある。福士と太田こそがその悪意の張本人だ」


 そう前置きして俺は続ける。


 俺は、遥香さんを救うことで、ガキの頃の自分の敵を討って報われた。悪意と十分やり合えると言う事を自分自身に証明して、満足を得ることが出来た。

 その結果、悪意が俺に向くことの可能性もちゃんと計算していたし、対策も考えていた。

 まさか、福士と太田がまた俺に絡んでくるとは予想外だったが、今の俺が虐めや悪意と戦えるようになれたのはアイツ等を『仮想敵』にして、何度も対抗策を調べて考えた結果だったんだ。


 それで、ちょっと欲を出しちゃったんだな。自分の手でアイツ等を葬れるチャンスなんじゃないかってな。


「だから昨日はオマエに獲物を攫われて、ムカついた部分もあったのかもしれない……と、一晩置いて冷静になったら思えるようになった」


「そうか……そうだよな。確かにアイツ等はお前の獲物だった……だが、昨日のあの場面。オレがいなくてもお前たちは本当に勝てたのか?」


「ああ。100%勝てた」


「そうか、そうだったのか。だったらオレの方こそ済まない。オレはお前らが心配で、た、()()()()()()をオレが守ることで、トラブルというか、噂の種を蒔いてしまった自分にケジメをつけたつもりだったんだ」


 エッ?俺を遼太って呼ばない? たけなかくんって……まさか…いや…


「……やっぱり、気にしていたのか。自分が噂の種の出どころだったと……」


「ああ、クラスの中ではお前らを悪く思っている奴はいなくなった。だが、学食とか外で聞こえた話、他のクラスの奴らには情報が歪んで伝わっていた。『魔王』という言葉に悪意を感じた。お前に『魔王』と仇名したのはオレしかいない。その事が原因で悪意がこもった噂を知った時、オレはお前たちに対して物凄い罪悪感を感じたんだ」


「罪悪感……それを振り払う事が、昨日オマエが言ってた『超克』って事だったんだな。……やっとわかったよ。だったら、俺が昨日言った『ただの八つ当たりだ』と言った事を改めて謝る。オマエの気持ちも考えずに言い過ぎた。ゴメン」


 俺は手を膝の上に揃え、頭を下げる。手は机の下だ。キチンと揃えたところで渡辺からは見えないだろうが、これは俺の誠意だ。気持ちの問題だ。


「いや、謝らないでくれ! 顔を上げてくれ! 俺だって昨日はついカッとなって、八つ当たりと思われても仕方のない事をした。本当は冷静に、これ以上の失言をしないよう()()()()()を払ってお前たちを援護しようと思っていた筈なのに、気がついたら我を忘れて奴らを正面から叩きのめしてしまった」


「ハハッ、援護射撃にしては強力過ぎたけどな」


 少しだけ緊張が解けてきて、笑う余裕が出来た。まだ、ぎこちない感じはするけど。


「やっぱりやり過ぎだったか? その……自分ではあんまり良く分からなくてな」


「う~ん。冷静に考えてもやっぱりやり過ぎだったと思う」


 俺は自分の考えをなるべく冷静に、言葉を選んで話すように気を付けて言う。


 第一に、今回の『俺を対象とした噂』は、疑惑が残るほどの内容ではないと言う事だ。たとえ自然消滅でも俺に被害はない事。例えば『二股』とか『犯罪者だ』とかだったら噂が消えても、事実なんじゃないか? と言う疑惑が残る。でも、今回はそうじゃない。だからそこまで徹底的に叩きのめす必要が無かった。


 第二に、福士と太田の行動だ。ヤツらは俺に恥をかかせたい。遥香さんから愛想を尽かされろ。と言った程度の動機で、俺の過去を暴露するというやり方だ。俺はもう過去を隠すことはやめようと思っていたから、俺個人としてはノーダメージだ。それを分からせて、ちょっとお灸を据えてやる程度で良かった。

 ただ、俺と仲良くしてくれてるみんなからしてみたら、結構嫌なことだったんだね。『他人に気を配れない』って言われてた意味がこれでやっと分かったよ。


 で、第三に、『逃げ道を失った敗者は何をするかわからない怖さがある』と言う事なんだ。俺も昔、虐めや悪意に追い詰められて、その時『どうせ逃げられないのならいっそのことコイツら殺して自分も死のうか』とか思ったし、もしヤツらが自殺なんてしたら『オレが追い詰めたせいで』ってお前も傷つくんじゃないかって考えるとさ、逃げ道くらい用意してやんないとな。それに、ヤケになった奴ってのは周りが見えなくなることが多いから、全然関係ない人を巻き込んで怪我をさせてしまったりとか言う事も恐れてた。


「だから俺は、やり過ぎだって言ったことは、取り消さないし謝らない」


「竹中、オマエ…死のうとしたことがあったのか……?」


「いや、無いよ。一瞬考えたことはあったけど、すぐに逃げ場所を見つけたからな」


「いや、それでもオマエ、一瞬でも考えたって……」


「もし、俺が自殺したら、アイツらには一生消えない十字架を背負わせることが出来たかもしれないけど、両親やばあちゃん、それに親戚でもないのに息子扱いしてくれるおじちゃんとおばちゃんに悪いと思うからね。『死』なんて考えないよ、もう」


「そうか……今度はオレからも質問したい。昨日お前は『優しい気持ちが開かれる可能性』と言った。アイツらが本当に優しい気持ちを持つ事になると思うか?」


「それについては分からないし、実は興味もないんだ」


「おい、興味もないって!?」


「まあ、聞いてくれ。基本的にはアイツらが復讐や自殺をせず、関わらないでいてくれれば、それだけで俺は満足なんだ。ただ、自分が虐めていた奴から情けを掛けられたって言う記憶が、将来ちょっとだけいい方向に向くんじゃないかな、と思っただけ。今すぐじゃなくて、たぶん何十年かの未来、俺との関わり等ない、いつかどこかで」


「おいおい、なんか凄いスケールの話だな。ちょっと意外だ」


「さて、俺も聞くよ? 昨日アイツらを脅してた時、お前、時々ポケットからメモを出して見てたよな? アレ何だったんだ?」


 観客席から見てると、ちょっと不自然で気になってたんだ。


「そ、それは…だな、実はオレって、テンパってると、今何を言ってるのかとか、何を言うべきなのかとか、わからなくなってしまっておかしな事を口走るようになるんだ」


 それはわかる。最近知った。


「それでよ、いつか学食で聞いたアイツらのセリフと、それをやり込めるオレのセリフを忘れないようにと前から用意していてな、たまたま昨日そんな場面になって、活用する機会があったからよ、念のため言い忘れていることがないかチェックしてたんだ」


「なんだよそれ? メチャメチャ面白いな! 喧嘩の最中にカンペ読むとか? ある意味凄いよ」


「だろ? 熱くなりながらも冷静さを保てていたと、自分でも凄い! 上手くやった! って思ってるんだ」


 おお、論点がずれてる!


 そうか、渡辺にはこんな面白さがあったのか。




 この後も俺と渡辺は考え方の違いや、お互いをどう思っていたのかなど、遥香さんや亜子、しおりちゃんも交えて、時間の許す限り会話をした。


 俺たちは昼休みだけでは物足りず、放課後も教室に残りひたすら話をした。


 この日、渡辺大弥と意気投合した俺は


 お互い「遼太」「大弥」と呼び合うようになり


 後に、たまにだが、昼休みに昼食を一緒に食べるようになった。


 数日後には


 『ダイヤ者’S(ダイヤモンズ)』と名乗る渡辺一派の


 原田 関口 奈良 の3名とも気兼ねなく話せる友人になり、


 俺の高校生活は益々楽しくなっていくのだった……


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― 新着の感想 ―
[良い点] 良かったです、今回の主人公と渡辺君とのやり取りで、私も共感出来ました。 二人には本当の友達になってもらいたいと思っていましたので。 信頼関係を築いていくのはこれからかもしれませんが。 あと…
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