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女子的な趣味をオープンにしたら似たような趣味の女子達と仲良くなれて親友まで出来ちゃったお話  作者: いちくん
第二章:女子的な趣味をオープンにしたら魔王と呼ばれてしまった話(仮)
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俺は目を逸らさず、奴は目を逸らした

☆★☆ 5月21日(月) 渡辺大弥視点 ☆★☆



 この日、竹中遼太が1週間ぶりに出校してきた。


 クラスメイトが注目する中、アイツは周囲の目など気にもしていないといった自然体でオレの席に近づいてくる。


 いや、近づいたのはオレの席ではなく、森口の席だった。


 オレはすぐにでも竹中と話がしたいと思っていたが、いざ話しかけようとするとやはり緊張する。


 隣の村上、そして森口の席に来て楽しそうに話をしている竹中には、どこか話し掛けづらい雰囲気があった。


 仲が良すぎるのだコイツら。


 近くにいるのに話し掛けられないもどかしさ。


 こんな気持ちになったことなど、今までに無かったことだ。


 いや、あった。


 たった一度だけ。


 森口をオレの家に誘って、葛原との事を問い詰めようとした時だ。


 あの時オレは、森口と葛原が付き合っていると言う事を『噂』で聞いて知っていた。


 だが、もう別れているかもしれないと思い、思い切って聞こうとした。


 それなのに、勇気を振り絞ってもオレは、なかなか言葉が出せずにいた。


 今にして思えば、好きな人を前に、オレは緊張していたのだ。


 あの時の感覚が、今のもどかしさと酷似している。


 オレはもしかしたら、本当に好きな奴の前でだけは『コミュ障』になってしまうらしい。


 言葉足らずになったり、余計なことを言ったり。


 あの時も、葛原の名前は直接には出せず、ただ『付き合ってる奴はいるのか?」と、前置きも何もなく単刀直入に問うた。


「いない」と言われた。


 あの時は、オレと森口の1対1だったから何とか話しかけることが出来たが、今この場面では、竹中に話かけられないもどかしさをオレは強く感じている。


 分かっていた。オレは竹中遼太の意志の強さに惚れたんだ。憧れたと言い換えてもいい。



 話かけることが出来ないまま、始業のチャイムが鳴り、HRが始まった。



☆★☆ 昼休み ☆★☆



 学食に向かう途中、福士と太田とすれ違った。


「今日、竹中が学校に来てるってよ」


「じゃあ、竹中に奇襲でも仕掛けてやるか」


 奴らの話し声が聞こえて、チャンスが来たと感じた。


 竹中がガキの頃の自分の敵を討ったように、オレもまたこの間の自分の過去を清算する時が来たのだと思った。


 迷いはない。


 オレは一緒にいた友人の原田に千円札を渡し「何でもいいからパン3つと500㎖の牛乳買ってオレの席に届けろ! 釣りはいらねえ!」と、そう言い捨てて教室に戻った。


 教室前の廊下、ドアの前で一度立ち止まり中の様子を窺う。


 考え無しに突入して、以前のような失敗を繰り返さないように細心の注意を払う。


 福士、太田が竹中たちに話し掛けている。


 竹中も森口も…いや、みんな迷惑そうな表情だ。


 何か嫌なことを言われていないか。

 何か酷いことを言われていないか。


 何を話しているのか気になり教室に入る。


 福士と太田は今、オレに背中を向けて立っていて、オレの存在にまだ気付いてはいない。


 奴らの会話が聞こえやすい位置で待機。


 竹中と森口には見つかったが2人はスル一してくれている。


 オレは奴らの会話に集中する。


 前後の会話は聞き取れなかったが、次の言葉ははっきりと聞こえた。


「森口さんともあろう人が、何でこんな奴とつるんでんの? こんな冴えない奴が美女5人に囲まれてるなんてさ、ちょっとあり得ないんじゃない?」


 オレが話かけることを禁じられた森口に、奴らは話かけていた。


 そればかりか、オレの竹中の事を馬鹿にする発言も含まれていた。


 細心の注意? なんだそれ? 何かいいことがあるのか? それ。


「あり得ないのはお前らの方だ!」


 気がつけばオレは、奴らの前に立ちはだかっていた。




☆★☆ 竹中遼太視点 ☆★☆


「あり得ないのはお前らの方だ!」


 渡辺の叫びで、俺は作戦の変更を余儀なくさせられた。


 当初の予定では、コイツらに俺の事を散々に馬鹿にさせて、醜い発言をたくさん引き出す。

 遥香さんの歓心を買いたいコイツらはいずれ、キモい発言を遥香さんにするはずなのだ。

 動画撮影は亜子に任せている。

 しおりちゃんは時々コイツらを天然で言葉を選ばない、素の発言で煽る。


 俺が動じなければコイツらは焦って、より攻撃的な言動をすると仮定し、一応殴られる覚悟を俺は決めておく。実はこのことは彼女たちには内緒だ。


 もし殴られればこちらの勝ちだ。


 拡散して居場所をなくすぞと脅しても良し。

 教師に証拠として提出し、退学に追い込むのも良し。

 切り札として取って置き、コイツらを脅す材料にしても良し。


 どの道、コイツらは遥香さんを口説くどころか、軽蔑されて終わりである。

 俺はただ、黙ってコイツらから目を逸らさずに睨んでいるだけでいい。

 簡単で勝率100%のただの消化試合だ。


 だが、状況が変わった。


「あり得ないのはお前らの方だ!」


 まさかの乱入で、俺たちが主演の舞台から降ろされ、『観客』の立場に立たされるとは思ってもみない事であった。


 そもそも、学食に行ったはずの渡辺が5分足らずで帰って来たことが計算外。


 飯はどうした?


 だが、俺の…俺たちの疑問を他所に、渡辺大弥主演の茶番劇(バーレスク)は始まってしまっていた。


「おい、福士、太田。お前ら、森口を慰めて、お前らの女にしてやるって言ってたよな?」


「え? あ、渡辺くん?」


 福士が主犯なのだろう。焦りと怯えで動揺が激しい。


「さあ、慰めてみろや」


 ドスの利いた低い声だけではない。見ただけで人を射殺せそうな眼光。言う事を聞かなければ何をするかわからないぞと言った極悪な表情で、渡辺が福士を睨む。


福士光流(ふくしひかる)。時間ってのは無限じゃないんだ。さっさと慰めろよコラァ!!」


 手加減も何もあったもんじゃない。いきなりのラッシュ。福士君は青ざめている。


「福士は使いもんになんねぇ。おい、太田!」


「は、はい?」


「お前、確か言ってたよなァ? いっそ、ボコってみるかァってよ? 遼太様をよ~?だがな、その前にオレとやり合って倒せたらだけどなァ!? オオォオ!?」


 太田君も顔面蒼白。逃げるなら今だよ?だって…


 こんな状況で、のんびりとした声を渡辺に掛ける強者がいた。


「おい、大弥。パンと牛乳買ってきたぜ」


 状況はよく理解できないが、渡辺の援軍が到着したようだ。あの二人、もうダメかも?


「おう、原田サンキュ。今俺の席は村上さんと西村さんに使って()()()()()から、後ろの『(わたり)くん』の机に置いておいてくれ。あ、そうだ原田。教室のドア塞げ。関口と奈良もだ。行け!」


 あ~あ。退路を断たれた。窮鼠猫を嚙まなきゃいいけど。


「おい、福士。そろそろ落ち着いたか?」


「あ、ああ」


 全然落ち着いてなどいなそうだが、そう答えるしかないよね。だって怖いもん。


「だったらサッサと慰めろや! ゴラァ!」


「ヒッ!」


「おう、お前の慰めの言葉ってのは『ヒッ』なのか? エエ!? そんな短いセリフで、ダレガナグサメラレルンジャァー!!!」


「ご、ごめんなさい~~」


「よし。その謝罪に免じて、もう一度チャンスをやる。お前の心情を事細かに綴った正直な気持ちで、もう一度慰めてみろッ! 今すぐにッ!! さあッ!」


 もはや福士君は戦意喪失。椅子からずり落ちている。


「ほう? 脅かしてダッセー姿を晒すって言ってたのは自分の事だったのか~? オレ勘違いしていたよ。済まないな。てっきりオレが()()()竹中くんの事を言ってるのかと思って、ムキになっちゃったよ」


 太田が退路を探すかのように後ろを見まわしているが、1年2組のクラスメイト達がドアの前をメッチャ固めてる。もう、絶対に逃がさない体制だ。


「おい、太田。いじめられっ子の本性暴露って、こんな感じでいいのか? アァ!?」


「はいっ。いいです!」


「ほう? 見事な手のひら返しだな。ここまで綺麗な手のひら返しは初めて見たぞ」


 悪人顔で嬉しそうな渡辺劇場…まだ続くの?


「おい! 福士! お前、太田にとってはいじめられっ子って事になってるぜ? なんか反論ある?」


「な、無いです」


 即答。


「ハアッ!? 無いのかよ? お前らいじめっ子なんだろ? もうちょい根性見せろや!!」


 ……主役は確か俺だったよね?その俺が観客席の特等席(最前列)で観劇している茶番劇。うん。意味わからん。


「福士はもう駄目だ。だから太田、もうお前しかいない」


 嫌な予感に表情がゆがむ太田。もう逃げて~って、逃げ道は無いのか~。


「オレを殴れ。そうすればお前を認めてやる。強者としてな」


 あれ? 渡辺時々ポケットからメモ出してチラ見してね?


「オレがお前を100発殴る間に、一発でも返すことが出来たら、お前が竹中に何をしても手出しはしない」


「いや、いいです」


「おお! いいのか! それはやってやるって事だな!? オオオオオォォォ!!! 嬉しいぞッ!さあッ、来いッ!!!」


 すげえ迫力のファイティングポーズ!


 試合開始前にレフェリーストップ。


 TKO


 


 


「あ~俺のセリフが無い」






☆★☆ 渡辺大弥視点 ☆★☆




 教卓に陣取り、俺たちは昼食を食う。


 原田、関口、奈良と共に、魂が抜けた福士と太田を連れて。


「みんなの中で、今の、動画撮ってた奴いるか? もしいたら全知り合いに『拡散希望』とコメントして送信してくれ」


 これでこいつらにとどめを刺す。これで完成…俺の過去の過ちの清算だ。


 だが、ここでストップがかかった。


 竹中だ。


「待ってくれみんな! 送信はするな!」


 なぜだ?オレはお前の為に……


「俺はいじめられっ子だ。いや、元いじめられっ子と言った方が正しい。今の俺には理解者が何人もいるから……」


「遼太、お前がいじめられっ子だったというのは過去だ。過去を乗り越え、お前は最強の漢になった! そんなお前を虐めていたこいつらには(みそぎ)が必要なんだ! 止めるな!」


「いや、違う! いじめられていた過去があるからこそ言える! 渡辺、お前はやり過ぎだ!」


「やり過ぎなどではない! 必要な行いだった! なぜ竹中にはそれが分からん!?」


「わかる! わかっている! だって、お前がやった事は、俺がガキの頃に望んだ、幼稚で、稚拙な、ただの復讐なんだ!」


「ええい、復讐の何が悪い!?復讐なくして過去の因果は断ち切れないのだッ!」


「それは渡辺、お前の精神が幼いからだ! 悪意に揉まれて来なかったからだ!」



☆★☆ 竹中遼太視点 ☆★☆



 すううううう~~~うう(深い呼吸)


「俺は悪意に揉まれ続けたおかげで今の俺を築き上げることが出来た。悪意を超克したからだ!」


「オレもたった今超克した!」


「いや、お前は悪意を超克してなんかできていない! お前がやった事は、ただの八つ当たりだ!!」


「なんだと!?」


「逃げ道を塞ぎ、トラウマを植え付け、屈服させるだけの復讐など、ただのお前の自己満足だ! お前の独りよがりだ! それが分からないうちはお前など、ただの復讐マシーンに過ぎない! 自分自身さえも救えない、心無い人形にしか過ぎない!」


「違う! オレは今、救われている! 間違いなくオレの心は今、救われたんだ! 自分自身の手で!」


「クッ、確かにお前は福士と太田を生贄にして、一時的に満足してはいる! しかし! お前は今、福士と太田の未来の可能性の全てをも消し去ろうとしている! 神ならぬ人間の行いとしては傲慢に過ぎている! 優しく頼もしいと遥香さんに評されているお前がそんなことに気付けないなんて、俺は認めない! 絶対に認めてたまるかァッ!」


俺はかつての俺を認めない! だから! 今のお前を認める訳にはいかないッ!


「他人を犠牲に得た救いなどに、これっぽっちも価値などあるものか~~!!」


「クッ……」


「逃げ道を作れ! 一度凹んだ人間は、立ち直った時に、人に対して優しい気持ちを持つ可能性が開かれる」


「……」


「俺はそうだった! 俺は開いたよ心を。持てたよ優しさを。俺の力だけじゃなくて、遥香さんと亜子としおりちゃんのおかげが大きいけれど……福士と太田がこの先、心と優しさを持つことが出来るかは彼ら次第だし、どうなるのかは俺にもわからない。けれど! その可能性まで塞いでしまうのは、俺の中の俺が許さない!」


「だ、だが…」


「選べっ! 渡辺大弥ッ! ガキの心のままで復讐を続けるか? それとも、少しだけ大人になって、馬鹿(あいつら)に優しさを求めてみるか! さあッ!今すぐ選べ! 大弥ッ! 時間は無限ではないんだぞ!!」


 

俺は渡辺から目を逸らさず、渡辺は俺から目を逸らした。それが結果だ。


「福士…太田…行け。今すぐにここから出ていけ……そして、卒業までは二度とオレと関わるな」


「は、はい……」


 福士と太田が2組から出ていった後も、俺は渡辺大弥をずっと睨みつけていた……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 渡辺君がみんなの前で自分の立ち位置を口にした事。 [気になる点] ごめんなさい、今話は私は素直に受け入れられませんでした。 渡辺君に共感出来、感情移入していましたので、主人公に感謝もされず…
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