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一つの恋の⋯⋯昇華

 メリッサ夫人は静かに立ち上がり窓辺から外を見ながら言った。

「お義父様、お義母様申し訳ありません」


「相談してくれさえいれば⋯⋯」

 公爵夫人が非難を込めて言うと振り返ったメリッサ夫人はキッパリと言い切った。

「例え相談したとしても夫の心が変わらない限り私の未来は生き地獄でしょう。愛されない悲しみ、もがき苦しんだ年月(としつき)が分かりますか?」

「いや、諦めの悪いハワードが悪いのだ。メリッサは看病も領地経営も全て良くやってくれていた。全てはハワードの不徳が招いた事だ」


「それなのに(もてあそ)ぶ様な事をして⋯⋯今更ですがごめんなさい」

 憑き物が落ちたようなアリーシャが頭を下げた。


「私も謝らなくっちゃ、リリアナ様今までの事許して下さい。酷いことを、リリアナ様を追い詰める様なことをしてしまいました」

 メリッサは努めて明るい口調で言った。

「もう良いのですよ、こうしてお会いできましたし。頭を上げて下さい」

 リリアナはそう返事をしたもののどう言う風に声を掛けたらいいか困惑しながら成り行きを見守る事にした。


 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎


 顔を上げたメリッサ夫人の口元から不自然な一筋の赤い液体が垂れた。

「どうなさったの?メリッサ様!」

 顔色を無くしたメリッサがゆっくり膝を折る。

 皆が一斉に駆け寄る。


「リリアナ様ごめんなさい⋯⋯皆さんごめんなさ⋯⋯」

「誰か医者を!早く」

 リリアナが叫んだ。

「良いの、もう手遅れよ。この部屋に入る前に飲んだから。思い残すことも無いし、ハワードの元に行かないといけないから。お世話しないとゴホッ」

「話さないで、今お医者様が来るから」

「寂しがって⋯⋯いると思うのよ、一人が嫌いな人⋯⋯だから。私だけでも側にいないと⋯⋯ゴホ」

「何故こんな事をしたの?」

 リリアナは腕の中で重みを増して行くメリッサを支え続けた。


「彼の薬を⋯⋯手に入れた時この薬も手に入れたの⋯⋯ゴホッ。こんな日が来る予感がしたのかしら。あんなに憎んだのに⋯⋯か、彼が死んだら心にポッカリ穴が空いてゴホ、神様が天罰をお与えになったの⋯⋯だと思ったわ⋯⋯ゲホゴホッ」


「イヤよ、メリッサ様生きて、生きて頂戴」

「私あなたが大好きだったのよゴフッ、学生時代に戻りたいわ」

 メリッサ夫人は真っ直ぐリリアナだけを見て言った。

「また仲良くしましょう、寂しくなんてしないから」

「ありがとう、リ、リリアナ様。ゴボッ、ハ、ハワードと二人で⋯⋯い、いつも見守っているわ」

「⋯⋯」


「あ、ハワ⋯⋯ハワード迎えにきてくれたの?あなた⋯⋯」

 会いたくて堪らなかったハワードが今自分だけに手を差し伸べている。

 メリッサ夫人の目には温かい涙が溢れてよく夫が見えない。

 笑顔のメリッサの震える手が(くう)を切る。


 そのままリリアナの腕の中でメリッサは穏やかな笑顔で逝った。


「愛するハワード様が迎えに来てくださったのね、もう決して寂しくないのね」

 寂しいメリッサの人生を思い、リリアナの声が虚しく響いた。


 現世では決して叶えられなかったメリッサの願いがどうぞ叶えられます様にと祈らずにはいられなかった。

 リリアナの目には光に包まれた二人が仲良く抱き合って天に昇って逝く姿が見えた様な気がした。



いよいよ最後が近づいてきました。

私の拙い初めての小説に巡り合ってくださり、感謝しております。

今迄感想、レビュー欄を閉じていましたが今後の励みにしたいと思い今日より開けることとしました。

お返事は書けないかと思いますがキチンと目を通すつもりです。

それでも宜しければ是非ご意見をお聞かせください。ブックマークと評価も宜しくお願いします♪

ただし辛口はやんわりとオブラートに幾重にも包んでお願いしますm(_ _)m

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