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一つの恋の⋯⋯瑕疵

 大きな声でひとしきり泣いた事でメリッサ夫人は落ち着きを取り戻した。

 心の中に溜め込んでいたどうしようも無い思いを吐き出せて憑き物が落ちた様にスッキリした様だ。

 これからの事はまだ決めかねる様だがまだ若い彼女は再出発することになるのだろう。

 エドモンドはウェールズ公爵家を後にした。




 一方でアリーシャ被告は(わめ)き疲れてようやく現実が見える様になったらしい。

 もう頼れるものが居ないと知ると家族に面会をと要求していた。

「あれは正当防衛。仕方のない事故だったのよ、家族には連絡がいっているの?」

 事情聴取の最中であるにも関わらず真摯な態度を示す事なく相変わらずだった。

 取り調べ官はそれに動じる事なく告げた。

「君のご家族は爵位を返上されて平民となった」

「ど、どう言う事よ!何でわざわざ平民なんかになるのよ!」

「君のせいだろう。公爵様にご家族で土下座をされたと聞いたよ」

「⋯⋯正当防衛だって言ってるじゃない。土下座なんてみっともない」

「罪を犯した君が一番反省しないといけないのに亡くなったハワード様に謝罪は無いのかね」

「あれがハワードですって?化け物でしょう!あんなになっているって知ってたら助けなんて求めないわよ」

「君には罪の意識が欠落(けつらく)しているらしい。ご家族は平民に落ちこの国を出て行かれたよ」

「私の弁護はどうなるのよ!一流の弁護士を付けてもらわないと困るのよ」

「雇うだけの金を出す者がいない以上、国選弁護になるだろうね」

「そんな三流付けられたら有罪になっちゃうじゃない!」

「他に宛でも?」

「一族に誰かいるはずよ、調べて頂戴」

「ここに可能性のある者の名前と爵位を書いておいて下さい。至急手紙を出しますから」




 そして取り調べが終わる頃全ての返事が来たと告げられた。

「これが君に対する返事だ」

 そう言って手紙の束を差し出す。

 アリーシャは思いつく限りたくさんの名前を挙げていた。

 一族のみならず友人知人先輩後輩。誰か色良い返事をくれるはずだ。

 逸る心で一通ずつ目を通して行く、しかし我が家には関わりない事と断りの返事ばかりで終わった。

「全て断りの様だね、国選の手続きをしておこう。直ぐに決まるはずだ」

「国選なんて最悪」

「弁護士を付けず自分で弁護することも可能だが」

「知識も無いのに出来るわけないでしょう。もう良いわ、居ないよりマシでしょうから」

「君は事の重大さが分かっていない様だね、来週には裁判が開かれる。覚悟したほうがいいと思うよ」

「それ脅し?」

「いや、事実を言ったまでだ。君は本当に一時(いっとき)でも王太子殿下の婚約者だったのか?」

「そうよ、私はアリーシャ・ドクトール伯爵令嬢よ」

「違うだろう、今は(ただ)の平民、アリーシャだ」

 そう言うと取り調べ官は速やかに出ていった。

 そしてアリーシャは手枷を付けられ独房へと戻された。




「王太子殿下、裁判は来週に決まりましたが傍聴に行かれますか?」

 書類を取りに来た文官が聞いてきた。

「あぁ、そのつもりだ。スケジュールを調整してくれ」

「かしこまりました」

 決済書類を持って文官が出て行くと同時に側近のロイドが入ってきた。

「殿下ご報告します。アリーシャ被告なんですが国選でいくそうです」

「やはりそうか」

「家族は国を出て居ませんし、一族のみならず友人知人にも断られたらしいです」

「まあそうなるよな」

「諦めが悪いそうで幼い頃の知り合いにも手紙を出させろと言っているらしいですが時間がないので決まったそうです」

「アリーシャ被告らしいじゃないか」

 エドモンドは笑った。

「もう未練はこれっぽっちもありませんよね?」

「当たり前だ!黒歴史だよ、全く」

「笑えたと言う事は本当の意味で吹っ切れたのでしょう。本当に良かった」

「心配かけたな」

「いえ、それが私の仕事ですから」

「仕事ついでにもう一つ、頼まれてくれないか?」

「ハイ。何でしょう?」

「ある人物を呼び出して欲しいんだ」

「⋯⋯ある人物?」


「あぁ。リリアナをあの日呼び出したと思われる人物だ」



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