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一つの恋の……同情

 親戚も帰ってしまい屋敷が閑散として居た時、葬儀に参列してくれた王太子殿下が再び公爵領を訪れた。先触れがあった時何となく全てが露呈(ろてい)したのだと感じた。

 私と二人で話がしたいとの事だったので殿下の側近と三人でハワードが療養して居た別館で人払いをした上で会うこととなった。




「夫人、お疲れでしょう。体の具合はどうですか?」

「葬儀に参列頂きありがとうございました。夫もお顔が見られて喜んでいたと思います」

「お疲れのところ、時期尚早(じきしょうそう)かとも思いましたがアリーシャの裁判がもうすぐ開かれるのでその前に聞いておかなくてはならなかったのです」

「そうでしょうね、分かっておりました」

「こんな風に聞きたくはなかったのですが⋯⋯」

「いえ、構いません。全てをご存知なんですよね」

「えぇ。リリアナにも話を聞きましたから」

「リリアナ様はお元気?」

「お陰様で、体力は少し不安がありますが時間をかけてゆっくり回復して行くでしょう」

「そうなのですね、安心しましたわ」

 リリアナからもお悔やみの手紙と花が届いて居た、相変わらず優しい女性なのだと感じた。



「それで早速なのですが、学生時代からアリーシャ被告に手を貸して居ましたね」

「ハイ、その通りです。でもなぜそれが分かりましたの?」

「買収したメイドのアン、彼女からずっと報告を。それで調べていたのです」

「不思議に思われたでしょうね、アリーシャの言いなりになる私が」

「学生時代からの経緯を良ければ話して貰えませんか?お辛いですか、思い出すのは」

「いえ、大丈夫です。ちゃんとお話しできますわ」

「側近がメモを取っても宜しいですか?」

「構いません」


「では始めます。貴方とアリーシャ被告、そしてハワードの関係性から」

「薄々分かっておいででしょう?ハワードはいえ夫はあの悪魔に対してだけ本気だったのです。女遊びの絶えない人でしたけどあの悪魔だけは自分から追いかけて今までとは違うとすぐに分かりました」

「⋯⋯」

「私は婚約当初から彼の素行が心配で人を使って調べさせていました、学園に入ってからもです。私がカバーできない部分で。その私から見てもあの悪魔は別格でした」

「どう言う意味で?」

「夫は去るもの追わずなのです、いくらでも代わりが湧いてきましたから。でもあの悪魔だけは王太子殿下との仲が取りざたされても婚約されても内心ではどうしても諦められなかったのだと思います。自分では諦めた風を装いながら心は常にそこにありました」

「そうだったのか」

「あの悪魔は夫の気持ちを知っていて巧みに利用し自分が婚約者に成り代わる手伝いをしろと私に迫ったのです。そうしないとハワードが夫になるだけだと笑って。リリアナ様は大人しい方だったので王太子殿下との逢引きを何度も見せつけ噂でも流してやれば精神的に参って婚約を辞退するからと」

「⋯⋯」

「嫌だった、やりたくなかった。でもハワードの気持ちを知っている私からすれば弱みを握られあの悪魔が幸せでないと私の幸せは訪れないことを思い知ったのです。それからは命令されるがまま、リリアナ様をお二人が仲睦まじくされているところに偶然を装って連れて行くだけでした」

「悪質だな」

「リリアナ様は段々追い詰められました。でも死にたいと思うほど追い詰めていたとは知りませんでした。助かって本当に良かったと神に感謝しました。でもあの悪魔はそこまでしても生き残ったリリアナ様の存在が許せなかったのでしょう。お見舞いと称して家まで乗り込みお腹の中で大笑いしたわと聞かされた時、目の前が真っ暗になりました」

「⋯⋯」

「わざわざここに来てそれを聞かせると言うことは私に何かさせるつもりかと。まさか殺せと言うのではないかと怯えましたがメイドを買収したので見舞いに行ってもおかしくない私に監視しろと命令されたのです」

「⋯⋯」

「その後殿下はご存知ですよね、悪魔の失態で有耶無耶(うやむや)になったのでリリアナ様の事は報告しませんでした。私も自分のことで手一杯だったので」

「ありがとう、聞かせてくれて。辛い立場だったんだな」

「でも結婚できましたから。短いほんのわずかな時間ですが。あの悪魔が夫に魔の手を伸ばすまでは」


「ハワードはアリーシャ被告の本性を知らなかったんだろう?」

「いいえ。全て知っていましたよ」

「何?」

「殿下との婚約破棄をされるかどうかの頃、手紙が来てあの悪魔が助けを求めたんです。夫は直ぐに駆け付けようとしたんです。それを王都の手前で私が捕まえて全て、あの悪魔の全てを話しました。一旦は納得して領地に戻ったのですが修道院からの手紙でまた狂ったのです」

「そうか、知っていたのか全てを」

「それでも(なお)愛する気持ちが抑えられなかったのでしょうね、私というものがありながら」

「何と言って良いか……」

「いえ、大丈夫です。あの悪魔の手紙で二人の企みを知ったお義父様が領地に戻って叱って下さいました。金銭の援助もあったようですが賄賂の横流しだったので」

「……」

「そして夫の心はやっとあの悪魔から離れかけていたのです。修道院での事件は予測できませんでした。本当に夫を愛していたのならまず体調の心配をするはずですが、化け物扱いでした。悲しい事に」

「リリアナにも謝ったのだが巻き込んでしまったようで済まなかったな」

「いいえ。夫の気持ちは常にあの悪魔に有りましたから。こんな悲惨な終わり方は想像しませんでしたが」

「そうだな、早すぎる。寂しいよ」

「リリアナ様にも謝罪したいと考えていますがお会いして頂けるでしょうか?」

「あぁ、この度の事も心を痛めている。落ち着いたら会いに来てくれるか?」

「宜しくお願いします。でもリリアナ様への仕打ち、私は罪にはならないのですか?」

「リリアナは事情を分かっていて仕方の無かった事だと思っている。望んでいないんだ、君を裁くことを」

 それを聞いてメリッサは長い事堪えていた気持ちが(あふ)れ出した。

 大きな声で子供のように泣き出した。

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