一つの恋の⋯⋯疑惑
馬車でリリアナの元に向かいながら部屋から持ち出した絵姿をエドモンドは見つめていた。
元婚約者との事だったが記憶にまるで無い。
絵姿は7、8歳の頃だろうか。
そこには可愛らしい少女がこちらを見ていた。
「おかしいと思わないか?」
メイド長を呼び出して一緒に馬車に乗っていた。
思い出せない以上、状況を近くで見聞きしていた者の話を内密に聞きたかった。
ある意味馬車と言う動く密室は都合が良かった。
「はい、リリアナ様関連の事を全てお忘れとは問題だと思います」
「いつ婚約したんだ?」
「7歳だと伺っております、王妃様が気に入り殿下も仲睦まじかったとお見受けしておりました」
「昔の事は覚えているのにリリアナ嬢の事だけだとは作為的なものを感じるな」
「私には分かりかねます」
「メイド長から見て私達は最近険悪だったか?」
「殿下は年々政務がお忙しくなり、段々とご一緒の時間が少なくなっていた事は事実ですが、少なくとも関係が悪化した決定的な事は城の中では無いと思います」
「何故だ?」
「リリアナ様は王太子妃教育も前向きに頑張っておられ、大変優秀だと聞いております。それに……」
「それに?」
「はっきり申し上げて大変仲睦まじく婚約を破棄されると噂を聞いた時は皆驚いた位ですから」
「……」
「そう言えばそれからでしょうか、リリアナ様に関する悪い噂が出回るようになったのは」
「順番が逆だと?」
「今思えば変なのです、あんなに好意的に見ていたのに一斉に悪感情が蔓延した様な印象があります」
「よく見ているのだな」
「私とその周りの人間は少なくともリリアナ様に嫌な事をされた事がありませんし、将来国を背負って立つ王太子殿下に最も相応しい方と認識しておりました」
「そのリリアナ嬢があの様な行動に出た事、どう思う?」
「私には分かりません」
「嫌がらせであの日にあの様な事をしたとは考えられないか?」
「‥‥少なくとも嫌がらせする様な方とは思えません」
あの日何かがあったと見るのが正解だろうか、調べる必要がありそうだな。
「参考になった、忙しいのに済まなかったな」
「いえ、一日も早いご回復を願っておりますと侯爵様にお伝えください」
一方ハワードは何故か胸騒ぎがしていた。
王太子殿下とは従兄弟同士であり関係は今の所良好。
学園在学時に婚約者がありながらお互いアリーシャにのめり込みライバルとして三角関係だった。
しかし最終的にアリーシャは殿下を選び婚約者に成り代わった。
図らずも手助けした形になったが今となってはこれで良かったと思える。
自分は多情だ。絶対アリーシャで無ければとまではいかなかった。
ついあちらこちらに目移りするのがアリーシャには分かっていたのだろう。
現に婚約者のメリッサは諦めの境地なのか何も言わなくなりこれ幸いと羽目を外している。
しかし間の悪い事に殿下の婚約披露パーティで若い未亡人とお近づきになり、チョットしけ込んでいたら大事件が起きていた。
⋯⋯とそこで顔見知りの女官に捕まった。
此処だけの話、と城は噂で持ちきりだ。
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