一つの恋の⋯⋯奸計
僕は昔から妹が嫌いだった、いや苦手と言った方がしっくりくるか。
外面が良く、柔和な表情の裏では何を考えているのか分からない得体の知れない生物だった。
妹は自分に疑いの目が向けられない様に周りの人間を上手く誘導する術に長けている。
二人で過ごす事が多かった僕は、実害が無い限り仕方なく妹に合わせる様に接していた。
そうでないと百倍面倒な事になる。
そう、妹は狡猾で平気で嘘をつく。
それでタチが悪いのは嘘をつく内にそれがさも本当かの様に思い込む癖がある事だ。
それで何度煮え湯を飲まされた事か。
自分を中心に世界が回っていると思っているのではと思う。
こんな妹を見てきたせいか、近頃は女性に夢が持てなくなった。
ただ一日も早く嫁に行ってくれと思っていたら王太子妃になるらしい。
ここにきて驚きの展開だ。
頼むから王太子には本性を知られるなよ、尻尾を掴まれる事はないと思うが。
ご愁傷様、返品不可でと声を大にして言いたい!
その頃アリーシャは部屋に戻るなり笑顔でメイドを下がらせ、イライラと暫く歩き回った。
そして枕元のいつものぬいぐるみを手に取った。
これはアリーシャの祖母からの贈り物で小さい頃からの宝物⋯⋯という事になっている。
長く綺麗に整えられた桜貝の様な優美な爪をウサギの顔に容赦無くギリギリとめり込ませる。
優しげな顔は醜悪に歪み目の上の筋肉がヒクヒク痙攣する。
自分の望みが叶わぬ時、蔑ろにされた時それは幼い時から繰り返されて来た儀式である。
哀れなぬいぐるみは物言わぬ生贄であった。
そんな事を繰り返しながら今後自分がどう行動すればいいか、誰を動かせば有利に事が運ぶのか策を巡らせながらふとうさぎのぬいぐるみに目をやるとつい首を捻りあげていた。
いけないわ、ついやり過ぎた。
うさぎの首から手を離し、何事もなかったかの様に頭を撫でる。
⋯⋯そうだ!適任者が居るじゃない。
何事も無かったかのように、いつもの優しく慈悲深い仮面を被る。
それからエドモンドが来るまでの時間を潰すのであった。
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