一つの恋の⋯⋯追憶
母とのやり取りでエドモンドは混乱していた。
いくら思い出そうとしてもリリアナの顔さえも思い出せない。
自分の記憶に辻褄が合わない事があるがアリーシャとの思い出だと思っていた。
取り敢えず見舞いに行かなくては。
「殿下!」
婚約パーティー以来姿を見ていなかったハワードが飛び込んで来た。
パーティーで知り合った未亡人の領地が王都から近いからとしけ込んでいたらしく今朝戻ったらしい。
「顔見知りの女官に聞きました、大変な事になっていると」
「ハワード、リリアナの絵姿がどこかに無かったか?」
「絵姿?」
「頭が混乱している、思い出せないんだ本当に」
「もう侯爵家に返還されたのだと思いますが⋯⋯リリアナ嬢の部屋にあるかも知れません」
「どこだ、案内してくれ。その様な部屋があるのか?」
「嘘だろ⋯⋯」
「早く!」
ハワードも余り詳しく無かったが場所なら分かる、二人は足早に向かった。
その部屋は3階の日当たりのとても良い場所にあった。
扉前には兵士が立ち他者の出入りを制限しているらしかった。
扉を開けると懐かしい様な香りがした。
小さめの部屋ではあったがバルコニーが付いておりポプリと見事な刺繍のクッションがあった。
小さなピンクの室内履きが揃えてありテーブルには見事なレースのカバーが掛けてあった。
風が心地よく落ち着いた色のカーテンを揺らした。
引き出しを開けると額装された少女の絵姿があった。
なんだか懐かしくて胸が切なくて心臓が鼓動を早めた。
その時部屋付きのメイドが呼ばれたらしく慌てて部屋を出ようとしたが、ふと気になって声を掛ける。
「この部屋は何故このままの状態なのだ?」
「は、はい。リリアナ様の私物を持ち込まれておりましたのでご自身で整理されるとの事で」
「婚約破棄となった時点で速やかに行うべきでは無かったのか?」
「王妃様より急がずとも心の整理が付いてからで良いとのご配慮があったと伺っておりました」
それがたまたまあの日だったのか、それともわざとあの日を選んだのか⋯⋯。
「数日前この部屋を訪れた様だが女官かメイドは手伝わなかったのか?」
「あの日は大広間で、その⋯⋯皆が忙しくしておりましたので一人で大丈夫だからとおっしゃって、終わり次第お声がけして下さるとの事でしたので、その⋯⋯」
「分かった、まだこの部屋はこのままにしておいてくれ」
「はい、かしこまりました」
文官に侯爵家訪問の先触れを頼み準備をしていた時、アリーシャが髪を乱して入って来た。
「父に止められ家から出られませんでした。一体どう言う事ですの?」
「アリーシャ済まないが見舞いに行くと先触れを出してしまった、良ければ待っていて貰えないか?」
「私に此処で待てと仰るの?」
「共に行く訳には⋯⋯今夜其方にも伺おう、遅くなっても待っていて貰えないだろうか」
やりかけの書類を纏めて急いで顔を上げると目を吊り上げ今まで見た事もない様な表情をした婚約者が居た。
「私よりも其方を優先するんですの?せめて説明してからでも⋯⋯」
「時間が無いんだ本当に済まない、あぁハワードが詳細を知っている。気になるなら聞いてくれ」エドモンドはアリーシャを置いて足早に馬車へと向かった。
皆さん今日は。
今日も読んで下さって有難う御座います。
作品は短編の予定だったのに何故だか長々としたものになっています。
初めての投稿で本人ジタバタしております。
もう暫くお付き合い頂けましたら泣いて喜びます!
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