一つの恋の⋯⋯報告①
其れから2時間程してリリアナは目を覚ました。
枕元から離れなかった兄や父は安堵のため息を漏らした。
医師が呼ばれもう少し休む様に言われた後、政務に戻っていた王太子殿下に知らせる様にと侯爵が言ってようやく二人は一息入れる事ができた。
「リリアナよく頑張ったね、喉が渇いただろう。ほら飲みなさい。ゆっくりだぞ」
脱水を補う為の飲み物をサイモンに背後を支えられてゆっくり飲んでいた時、慌ただしくエドモンドが入って来た。
「リリアナ!」
「王太子殿下」
リリアナは掠れた声で言った後姿勢を正そうと背筋を伸ばそうとした。
「リリアナは無理しなくていい、ねっ!」
サイモンがエドモンドの声を遮る様に優しくリリアナに言って、最後にエドモンド相手に同意を求めるかの様に力強く言った。
「あぁ、勿論。リリアナ大丈夫か⋯⋯」
その言葉を遮る様にサイモンが口をまた挟む。
「リリアナは今水分を摂ってます。少し待っていて貰えませんか?気管に入りでもしたらどうしてくれるんですか?」
「ああ、気が利かず済まない」
「お兄様それはあんまりです」
「いや、それをゆっくり飲んでからにしよう」
エドモンドがその役を代わりたかったが、猛犬の様にサイモンが睨むので諦めて見守る事にした。
まるで小姑の様だ、側近のロイドは心の中で密かに思った。
エドモンドは先程の時間を使って聞き取りした内容に調べの付いているものを交えて中間報告として王に提出する文章にまとめていた。
側近のロイドに書記をさせていた為手早く纏めてロイドと漏れがないか確認していた所だ。これから中間報告を上げる。
学園時代のリリアナは長く辛い学園生活を強いられた、いい思い出はほとんど無いと言っていい位だった。とても王太子の婚約者に対してしていい事では無かった。
悪い噂が蔓延し、そして皆が遠巻きにした。
中には同情的な者もいたが自分に火の粉が飛んでくるのを恐れ口をつぐんで見て見ぬ振りをした。
その内見も知らぬ生徒からあらぬ疑いをかけられ暴力は無かったが寄ってたかって責められるようになった。
嫉妬や妬みがそうさせたのだがそれを上手く利用して操ったのがアリーシャ嬢だった。
アリーシャ嬢は皆がわざと誤解するような物言いをし、怖いと言って噓泣きまでしてみせた。
皆がそれぞれの満たされない望みや鬱屈とした思いを晴らすように大人しいリリアナにその矛先を向けた。
メリッサ嬢だけがリリアナの学園での味方となり心の支えだった。
リリアナはそれでもじっと我慢し学園に通い続けて卒業を迎えた。
その間エドモンドはハワードとアリーシャ嬢の三角関係を楽しんでおり、リリアナは顧みられる事の無い惨めで評判の悪い婚約者として過ごした。
勿論王城にもその噂は届いており婚約の破棄に至った。
そして先程の話し合いの内容を付けて中間報告は完成した。
「リリアナ嬢はその後どうした?」
「はい。2時間程して目を覚まされましたので侯爵家に帰られました」
「無事なのですね、安心しました」
「陛下と王妃様にご挨拶できなくて大変気にしておられました。私の事は大丈夫ですのでご心配なさらぬ様にとのご伝言です」側近のロイドが言った。
王も王妃も胸を撫で下ろした。
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