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一つの恋の⋯⋯決意

 リリアナはすぐさま王城の医務室に運ばれた。

 横で世話を焼いていたサイモンが抱き上げてエドモンドには触らせもしなかった。

 医務室のベッドにはサイモンと父であるモンタギュー侯爵が張りつきエドモンドは蚊帳(かや)の外に追いやられた。


 リリアナにとって負担が大き過ぎ、しかも親友と思っていた相手からの手酷(てひど)い裏切り、そしてあの日の辛い出来事を証言せねばならなかった。

 精神的負担が大きすぎたのだろうと言う医者の見立てだった。

 今はゆっくり休ませてそれから侯爵家へと帰る事となった。


 王と王妃も心配して見舞いに訪れたが会う事は(かな)わなかった。

「リリアナは大丈夫なのですか?」

 王妃である母が医者に尋ねる。

「今は静かに眠っておいでです、お辛い事を無理して思い出された様ですので」

「分かりました、ゆっくり休ませて下さい。目覚めたら連絡をお願いしますね」

 そう言ってからエドモンドをひと(にら)みして戻って行かれた。





「王太子殿下、失礼を承知で申し上げます」

 騒ぎを聞きつけて集まっていた者達だった。

「何だ?」

 そして遠巻きにしていた文官達の一人が意を決した様に突然話しかけて来た。

「こう言っては何ですがリリアナ様は王妃となるには体力的な意味で無理があるのではありませんか?」

 これは事情を知らない彼等にとってみれば当然とも言える懸念(けねん)事項だった。

「その⋯⋯人格的には何の問題も無いとは存じますが王太子妃、王妃となれば多忙を(きわ)めます。この様に倒れられていては政務をこなすのも無理がお有りかと⋯⋯」

 其処(そこ)にいた沢山の文官や兵士の共通した思いらしい。

 エドモンドは皆を見渡しながらキッパリと言った。

「君達には理解できない重圧を強いてしまったんだ。リリアナに起こった事を思い出させて聞き取りをしていた。多分真実が全て明らかになったら分かって貰えると思う。他の令嬢ならとっくに逃げ出して部屋で震えるだろう。でもリリアナは強いよ、誰よりも。私は王太子として残酷だが真実を明らかにしなければならなかった。もう少しだけ待って貰えないだろうか」

 エドモンドの説明にその場にいた沢山の者達は納得したようだ。


 足早に医務室に戻るエドモンド殿下を見て其処にいて事情を知っている側近が口を開く。

「話を全て聞いていた男であるこの私でさえ耐えられず涙した。ほら目が赤く(まぶた)が腫れているだろう。それだけの事をたったお一人で耐え抜かれたのだ。王太子妃としての品格は勿論(もちろん)、強さにおいても他の方々では太刀打(たちう)ち出来ないだろうと断言できる」

 その場にいたたくさんの者達は納得して其々の場所へ帰って行った。

 城内、いやこの国にこの事が直ぐに広がるだろう。


 リリアナ様を不安視する余計な事はこの私が(ことごと)く潰す。

 あの方を悪く言う事はこの私が絶対に許さん!

 この側近、名をマイク・カスケイドと言う。

 四大公爵家に(つら)なる分家の出で伯爵位を継ぐ事になっている。

 この後リリアナを支える頼もしい一人となる。


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