一つの恋の⋯⋯懺悔②
リリアナは当時の辛い記憶を思い出したのか掠れた声でポツリと言った。
「それであの頃よくお二人でいる所をお見かけしたのですね」
「酷すぎる!リリアナは生死の境を何度も彷徨ったんだ。こんな奴の為に!」
サイモンが怒鳴り父である侯爵が肩を怒らせて言う。
「リリアナという婚約者が居ながらそんな不誠実な事をされていた訳ですか。それで娘が傷物扱いとは!」
「お父様、お兄様落ち着いて下さい」
「しかしリリアナ、あんまりではないか。やはり許すべきでは無かった」
侯爵は悔しげに眉間に皺が寄る。
「お叱りは後程受けます、まずは話を最後まで聞いて下さい」
「⋯⋯」
「この辺りの前後ははっきりしないのだが、リリアナの噂が流れていると人伝てに聞いたんだ。最初はアリーシャ嬢を真似しているとかつけ回しているとか軽いものだったんだが」
「つけ回しているかの判断はさて置き、その頃はもう既に王太子殿下が彼女をお好きな事がわかっていましたので好みに少しでも近づこうとしていたのは確かです。段々と王太子殿下が遠くなられてお会い出来る機会も減り、お声がけも滅多に無くなり自分に自信がありませんでしたので好かれようと努力することにしたのです。彼女を側室としてお迎えになるかもしれないことも十分理解していましたし」
「そうだったのか。それを悪い様に取られたのだな」
「良い事はどんどん取り入れて関係改善になればと。でも私の思いとは裏腹に王太子殿下はお忙しく、いつお訪ねしても会えませんでしたしお茶会は途中で席を立たれることも多くいつの間にか疎まれていると噂にのぼり私の方が孤立してしまったのです」
「色々根も歯もない噂が飛び交ったからな、流していたのはアリーシャ嬢だ」
「そうですか。段々色々な方から直接非難される様になり誤解を解くことすら出来ませんでした。私の言う事は全て嘘だとでも言う様に。その内周りに誰もいなくなり味方はメリッサ様だけになりました」
「⋯⋯その様だね」
「メリッサ様は私と同じ気持ちをお持ちでしたのでお互いに分かり合えたのです」
「同じ気持ち?君に同情では無くかい?」
「はい、ハワード様もアリーシャ様がお好きでしたから」
「知っていたのかい?」
「はい、多分王太子殿下の事を見聞きするより前だったと思いますが、図書館の書棚の影で逢引きとも言える親密な場面を偶然目撃しました。慌てて引き返すとそこでクラスは同じですがお話しした事の無かったメリッサ様と知り合ったのです」
「何とふしだらな!二人の男を手玉に取っていたのか」
侯爵は黙っていられずに声を大にして言った。
「ぶん殴ってやりたい」
サイモンが拳を震わせ暗い声で言った。
「メリッサ様は人を使って調べたりしてお二人の関係を全てご存知でした。その上で沈黙を選ばれていたのです。誰にとっても良い事ではないからと。それで寂しそうな彼女を最初は励ますつもりでした。私には大好きな兄がいましたが彼女は一人だったから」
サイモンが嬉しそうに笑ってリリアナを見つめる。
「励ます?」
「そうです。予感があったのかもしれませんね、他人事には思えなかったのです」
「そうか」
「そして確かメリッサ様が言われたのです、アリーシャ様絡みで嫌な予感がすると」
「⋯⋯」
「片方の気持ちが離れてしまうのは辛い事です。でも残酷な事に気が付いてしまうのです。好きであればある程。お気付きでしたか?殿下もアリーシャ様だけは呼び捨てにされていた事に」
「エッ?」
リリアナは乾いた喉を潤す為冷めたお茶をゴクリと飲んだ。
「とても関係が親密に感じました、そして殿下が私に彼女を見習うようにおっしゃったのです」
「何と!」侯爵が身を思わず乗り出す。
「私は既に殿下の心にはいないと感じました」
「⋯⋯」
「そしてある日メリッサ様が落ち込んでいる私を元気付ける為にタルトのお店に誘ってくださったのです。途中でもう一人クラスメイトも合流して。そこでお二人が仲良く腕を組み体を寄せて街中を歩いている所を見つけてしまったのです」
「リリアナ、やはりこの婚約は断ろう。今からでも遅くはない。とてもリリアナが幸せになれるとは思えん!誠実さの欠片も無いではないか!」
サイモンが射殺す様な目でエドモンドを睨む。
「確かに、娘がそんな思いまでして辛い学園生活を過ごしたとは。そんな女の手練手管に簡単に嵌る殿下がこの先同じ事をしないとも限りませんからな」
「本当にあの時はどうかしていた、申し訳ない。でもこれは言っておかなくてはいけない」
「……?」
「メリッサ嬢もグルだったんだ」
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