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一つの恋の⋯⋯明光

 リリアナは王宮で最後の王太子妃教育を終えようとしていた。

「リリアナ様、よく頑張りました。これで全行程終了です」

「ご指導ありがとうございました」

 リリアナは講師陣に敬意を込めてお辞儀をした。

 婚約破棄前にあらかたの教育は済ませていたので今日その総まとめを終えた。

「これからリリアナ様は王太子妃になられます。これまで学ばれた事を糧に王太子殿下と共に素晴らしい国をお造りください」

「分かりました。国民の皆さんの為に尽力を惜しみません」


 王宮はリリアナが戻った事により随分様変(さまが)わりしていた。

 アリーシャ人事とでも言えるリリアナを陥れる事に加担し優遇されていた者達は職を辞したり遠方へと移動させられたりしていた。

 派閥の頂点であった宰相も失脚し後任には中立派で新たに力をつけた者が抜擢された。


「随分風通しが良くなって皆が生き生きしている様だ」

 王太子殿下はそれはご機嫌でリリアナの手を取った。

「あの、所でエドモンド殿下、御公務はどうされたのですか?」

 リリアナはなぜ此処にエドモンドが居るのかが理解できないらしい。

「そろそろ終わる頃だと思ってね、ティータイムにしないかい?」

「それは良いのですが、文官が書類仕事が溜まっていると嘆いていましたよ」

「リリアナにそんな事を!」

「そうでは有りません、忙しそうにされていたので私から尋ねたのです」

「そうか、ティータイムが済んだら頑張るから付き合ってはもらえぬか?」

「勿論、喜んで」

 そう言ってバルコニーに誘おうとした時、リリアナの次兄であるサイモンがやって来た。

「リリアナ疲れただろう、お茶でも一緒に⋯⋯此れは殿下失礼しました」

 わざとらしく今気が付いたかの様に言う。見えていただろう!


 サイモンは文官としての王城勤めが決まり今月より登城していた。

「今から二人でティータイムを楽しむのだ、遠慮して貰えないか?」

「私も丁度休憩時間でして、我が妹と共にティータイムを楽しむ予定です」

「侯爵家に帰ればいつでも一緒に出来るではないか、此処は私に譲っては貰えぬか?」

「私はリリアナが生まれた時から()()()離れた事が有りません、ですから⋯⋯」

「あの、ご一緒すれば良いのではないですか?時間も押していますし」

「「エッ」」

 二人の声が重なった。

「其れに先日から感じていたのですが、とても気があっている様に感じます」

「「エッ⁈」」

「良い友人関係になれるのではないですか?」

「「エー」」

「息ぴったり!」

「「⋯⋯」」

 二人共渋々といった(てい)でお茶が用意されているバルコニーへと向かった。





 リリアナはバルコニーから見える城下を見下ろしながらかすかに風に乗って聞こえる人々の生活に想いを馳せた。

 爽やかに吹く風を頬に感じながら其々(それぞれ)(つつ)ましい暮らしがそこにはあると実感する。

 笑い、時には喧嘩もして地に足をつけて人々は逞しく生きてゆく。

 今ある物が当然だと思ってはいけない、そんな人々に支えられて私達は生きている。

 だから平和な世が続く様努力をしよう、決して国が荒れる様な事は望まない。

「何を考えていたんだい?」

 暫く黙ってリリアナを見ていたエドモンドが声をかける。

「風を感じていました」

「風?」

「えぇ、風が心地よくてこの穏やかな暮らしがずっと続く様にと」

「リリアナ、疲れてしまうよ。ほら、お茶が冷めてしまう。飲みなさい」

 サイモンが甲斐甲斐しく世話を焼く。

 勧められて紅茶に口を付ける、香り高い茶葉の香りが鼻腔を刺激して喉を過ぎる温かさが体を心を癒すのを感じた。

紅茶を静かに堪能するリリアナを見惚れていたエドモンドはそれでも伝えないといけない事があった。

「リリアナ」

「はい」

「実は話があるんだ、君を巻き込んだこの一連の騒動について」

「⋯⋯」

「君には辛い話になるかもしれない」




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