一つの恋の……御影
エドモンドはリリアナの手を片時も放そうとせず部屋に移ってからは車椅子からソファーに自分が抱いて座らせると、リリアナの次兄サイモンと不毛な舌戦を繰り広げていた。
そうこうしている内に業を煮やしたリリアナの父であるモンタギュー侯爵がヒョイと娘を抱き上げその役得を奪ってしまった。
眉を八の字にひそめてモンタギュー家の男性陣にだけ見える様に最大限の抗議の意思を伝えた。
そしてすぐさま満面の笑顔でリリアナの隣に陣取りその白く小さな手を再び握る。
「疲れただろう?話が長かったからね。あぁ、手が冷たくなっている」
『そこの君、済まないがリリアナにオシボ……』
サイモンが言い終わる前に
「熱いオシボリを頼む」
メイドにオシボリを頼もうとしていたサイモンを素早く遮った。
「……はい、ただ今」
メイドが慌てて出ていく。
エドモンドは会えなかった時間を取り戻そうとするかの如くリリアナに関しては過敏に反応する。
「車椅子だったので大丈夫です。それよりも王太子殿下の方がお疲れでは無いですか?」
「いやいや、リリアナの顔を見たら疲れなんて吹き飛ぶよ。済まないがリリアナにお茶を……」
『リリアナの好きなローズティーを頼む』
先程の仕返しかこれまた早口でサイモンが遮る。
事、リリアナに関しては全然引く気が無いようだ、このシスコンが!
「あの、仲良くしてください。お二人ともリリアナ様に関してはとても気が合っていらっしゃるようですから」
側近が見かねて声を掛ける。
侯爵は呆れて届いたオシボリをリリアナに渡す。
「えっ、私が拭いてあげたのに……」
エドモンドががっかりして言った。
「自分で何でも出来ますから」
リリアナも少々的外れな事を真剣な表情で言った。
その後リリアナに逢えない間の事や眠っている時の事を聞いた。
100日祈祷の間は眠っている時間が長かったらしく夢の話になった。
「100日祈祷前、最後にお会いした時に申し上げた事覚えていらっしゃいますか?」
「あぁ、そろそろお迎えが来るようですとお別れの時が近いのかもしれないと」
「覚えていて下さったのですね」
「あの言葉で教会を訪ね教皇に泣き付いたのだ。藁にも縋る気持ちで」
「あの時は私が最期にお会いしたかったという願いを持ってしまっていたので一時的に時間を頂いただけだったのです。多分、お別れする時間を」
「……」
「神様だったのかは分かりません。その方は形が無く光の粒子の様な姿をされていました」
「……」
「話も言葉に出すのではなく心を読んで頭の中で話すような感じと言えば良いのでしょうか」
「……」
「最初は残念だが私の役目はもうここにはない、一緒に行こうと仰っていました」
「それで?」
「それがいつしか諦めない者が願うのだと。迷いが出てきたと」
「迷い?」
「えぇ。王太子殿下が一生懸命祈って下さったのでしょう?」
「そうだ。必死に祈った。まだ連れて行かないでくれ。絶対に自分が幸せにするからと」
「私の為にありがとうございます。きっと願いが届いたのだと感じます」
「感じる?」
「はい。光がもっと眩しく温かくなって私を包んだのです」
「……」
「そしてこの地に留まりやり遂げて見せよと。それからでも遅くは無いと」
「何か使命があるのか?」
「何も命令されてもいませんし、聞かされてもいません。ただやるべき事は言われなくとも分かっていると思います」
「そうか。そうだったんだな」
「そして体に何かが戻るような感覚で目覚める事が出来ました」
「聞かせてくれてありがとう」
「いいえ。ご心配をおかけしました」
「教皇が言ったのだ。リリアナは神の愛し子なのだろうと」
「愛し子?何なのですかな?それは」
侯爵が聞いてくる。
「神が使わした使命を持つ者と」
「使命とは?」
「国民の為に尽力する崇高な立場の者と言う事だ」
「うちのリリアナが……」
「この話は陛下と王妃様にも伝えるつもりだ」
「そうですね、それが良い。きっと」
侯爵は自分の娘を眩しいものを見る様に見つめた。
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