一つの恋の……麗容
王太子殿下は遂に100日祈祷を無事にやり遂げることが出来た。
教皇にこの件に協力してくれた者達全てに感謝の意を伝えて貰えるように頼み教会を後にした。
出来ればその足で直ぐにリリアナの元に向かいたかったが、長く留守をした王城からの命令で一旦王城に戻る事となった。
その為リリアナとモンタギュー侯爵宛に手紙を書き側近に届けさせた。
王城では王と王妃が待ち兼ねており、王太子妃が既に決定したことが告げられた。
「……そうですか、分かりました。長い間留守をお許し頂きありがとうございました」
エドモンドはペコリを頭を下げた。
「100日間よくぞやり遂げた、政務の方もそちらで滞りなく済ませたと聞いた。ご苦労だったな」
「いえ、元はと言えば自分で蒔いた種。我儘をお許し頂けただけでも感謝しております」
「元気そうで何よりですけどお相手は気にならないの?」王妃が苦笑いをしながら言った。
「そうだぞ、一生を共にするのだ。特に気を配ってやるのだぞ」
「はい。心得ております」
「リリアナ嬢以外なら誰でも同じとでも言いそうだな」
「えぇ、本当に」
父親と母親でもある二人は顔を見合わせて笑った。
「丁度、王城に親子でいらしているのよ。ご挨拶しなさい」
そう言いながら王妃は横の扉の前に立つ侍従に言った。
「王太子が戻りましたから顔見せしましょう、お連れして」
「はい。ただ今」
「どちらの御令嬢に決定したのですか?」
「遅い!やっと聞いてきたか。余程無関心なのだな」
「い、いえ。決してその様なことは。ただ……」
「ただ何ですの?」
「いえ。ただ、リリアナ嬢を側妃に認めてくれる方ならと」
「はぁ、お前は口を開けばリリアナ嬢の事ばかりだな」
「本当に。先が思いやられますわ」
「いえ。過ちは繰り返しません。王妃も大事に致します」
その場に微妙な空気が流れた後、侍従が戻って来た。
「お越しになられました」
「……入りなさい」
王が言った。
静かに扉が開かれて大きく開け放たれた。
そこには会いたくて夢にまで見た車椅子に乗ったリリアナと父親のモンタギュー侯爵が車椅子を押して来た次兄のサイモンと共に入って来た。
「あぁ……神よ感謝致します」
両手を広げて天に向かって感謝を表す。
そして震える足を一歩一歩慎重に愛しい人に向かって歩みを進める。
頬には熱い涙が伝い目の前が霧でもかかったようにボンヤリする。
後から後から流れる涙を袖口で拭い侯爵に素早く一礼して直ぐ様リリアナの前に膝を突く。
「リリアナ元気だったかい?とてもとても会いたかったよ……」
リリアナの手を震える両手で包み込み声を絞り出す。
「は、はい、ご心配お掛けして申し訳ございません。まだ歩行は無理がありますが元気になりました」
「リリアナ。良かった、本当に良かった」
少しでも体を寄せようと車椅子の横に膝立ちのまま移動して包み込んだ両手に顔を埋めようとしたらスーと車椅子が後ろに引かれた。
サイモンが何食わぬ顔でそのままリリアナを王の元に連れて行ってしまう。
「あぁー!」
エドモンドの情けない声が漏れる。
王も王妃も笑いを堪えてプルプル震えている。
感動の再会に涙を堪えてでは無い、明らかに頬を膨らませ笑いを堪えてだ。
侯爵は明後日の方向を向き平静を保とうとしているかの様だ。
「王様王妃様を差し置いて……さぁリリアナ。もう一度ご挨拶を」
サイモンが明らかに嫌がらせをしてくるので急いでリリアナの横に並ぶ。
「再びのご配慮ありがとうございます。一日も早く体を治し王太子殿下のサポートが出来ればと思います」
「父上母上ありがとうございます」
エドモンドは深くお辞儀をした。
我が子であるエドモンドを見つめる二人は優しい眼差しで愛し合う二人を見つめた。
そのニュースは瞬く間に国内外に広がった。
王都では号外として新聞が配られて王太子殿下とリリアナ・モンタギュー侯爵令嬢の婚約が発表された。リリアナの名誉回復はすでになされていた為、概ね好意的に受け止められたが我が娘のチャンスと張り切っていた貴族達や近隣諸国の姫達は意気消沈した。
平民達は世紀の恋物語として多くの者がこの婚約を祝福した。
後にこの事をモチーフにした恋愛小説が世の中に出回る事となる。
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