一つの恋の……朗報
ウェールズ公爵領にもその朗報は届けられた。
今までなるべく考えないようにして心に封印したリリアナとの事。
メリッサにとってあの頃はああするしかなく申し訳ない気持ちが拭えなかった。
「リリアナ様、おめでとうございます。愛を取り戻されたのですね、遠くからお二人の幸せを祈っております」
誰に聞かせる訳でも無いのに自然と言葉が紡がれる。
遠くの地からその幸せを祈る。本当は好きだったのだ、彼女との何気ない時間が。そして人柄が。
あの悪魔が自分の欲望を叶える為に利用したかつてそこにあった友情を想って顔を歪めた。
やりたく無かった、リリアナを追い詰める様な事を。
あの悪魔は平気で人から大切な人をいとも簡単に奪う。
窓辺から翳りゆく庭園をぼんやり眺める。
「結局自分が一番可愛いのよね⋯⋯でもその結果がコレよ」
とうとう私にはどんなにどんなに望んでも手に入らなかったもの、踏み躪られた恋。
メリッサは泣きそうな顔で唇を嚙みしめて何が二人を分けたのか考えていた。
そして再び幸せを手に入れたリリアナが羨ましかった。
本当に愛した人が心から悔いそして彼女を欲しいと再び努力を惜しまなかったのだから。
ハワードは王都からもたらされた朗報をメリッサから手渡された新聞の号外で知った。
これはメリッサの実家が気を利かせて送ってくれたものであった。
「そうか、あの二人は幸せになるのだな」
夫がポツリと漏らした。
「結婚式には行けるだろうか?」と不安そうに聞いてくる。
「その頃にはきっと良くなっていますよ。これだけ頑張っているのですから」
メリッサはその場限りの気休めを囁いた。
まるで老年に差し掛かった夫婦の会話の様だ、これで新婚と言うのだからむしろ笑える。
自分が選んで進んだ道だけど虚しさのあまりにこの身を嘆いた。
ハワードはふとメリッサの小さな違和感に気が付いた。
いつもと変わらない優しい表情も思いやり深い言葉も何故か心に響いてこない。
号外からあの二人の本物の愛に充てられたか。
今思えばメリッサには散々可哀想な事をした。
他の女に常に脅かされた妻に今更ながら同情の念を持った。
殿下は失った愛を取り戻す戦いに勝った。
じゃあ、自分は?
自分中心で我儘放題のアリーシャに振り回され、追い詰められてこの様な病を患った。
良い香りでいつも癒してくれる女達はいつの間にか離れて行った。
誰もいなくなった自分に残されたのは妻のメリッサだけ。
痒みに思考を奪われて何となく大事なものを置き忘れたかのような寂寥感に苛まれる。
背中を木の棒でがりがり掻きむしりながらそれならばせめて見えるところだけはメリッサの為に掻くのを控えようと言う事だけだった。
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