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一つの恋の……予感

 メリッサは報告書に目を通しニヤリと笑った。

 ハワード監視の為に雇っていた者に王都の事、ドクトール伯爵家の事を詳しく調べさせていた。


 アリーシャ・ドクトール伯爵令嬢は正式に婚約を破棄された。

 貴族籍剥奪の上、辺境の修道院に平民として無期限で入ったらしい。

 それと時期を同じくしてドクトール伯爵家は子爵家に降爵、領地替えして辺境に引っ込んだようだ。


 それと同時に前婚約者リリアナ・モンタギュー侯爵令嬢の名誉回復がなされた。

 モンタギュー侯爵家には王家より正式な謝意と慰謝料が支払われた。


 アリーシャは自業自得だとしてもこれで幕引きだろうか?

 ハワードと私には何かお咎めがあるのか?

 それもメリッサは気になっていた。


 どこまで事が明るみに出ているのか、責任の有無がはっきりしない者に罪を問う事が可能なのか?

 今の所、事情聴取も無いしさりとて問い合わせるのも変だ。

 藪蛇になり兼ねない。

 そこに悪意の有無が関係あるとしたらハワードは悪意無く噂を広めたに過ぎないから責任なし?

 あっても厳重注意が妥当だろうか。

 私は脅されていたとはいえ協力者であり、リリアナの婚約破棄に大いに協力したのだから有罪?

 そこは露呈しているのだろうか、あの悪魔が自分から罪を認めるとも思えないが。

 いずれにしても私は公爵家の婚約者、ハワードの父親である公爵がもみ消す事も可能だろう。


 そこまで考えて今王都はそれどころじゃない事を思いだす。

 現在空きが出来た王太子妃選びが早速始まるようだ。

 国中どころか近隣諸国まで乗り出してきそうな勢いらしい。

 このまま私達については忘れて欲しい、メリッサの切なる願いであった。




 しかしメリッサはまだ気が抜けなかった。

 ハワードが最近大人しすぎるのだ。

 確かに父である公爵様よりお叱りを受けた。

 結婚式も大幅に早める事となり三か月後となったし本人も反省してそれを了承した。

 にも関わらず言い知れない胸騒ぎがする。


 あのアリーシャがそのままで甘んじるのか?

 何とかしようと手を打つに決まっている、そう言う悪魔なのだ。

 その悪魔が唯一頼れ力を持つ者。

 その可能性に思い至った時メリッサの心は決まった。


 アリーシャは婚約破棄されフリーで平民。

 もしかしてハワードが愛妾として囲うかもしれない、その可能性に鳥肌が立った。

 一生顔を合わせてハワードを取り合う、考えただけでもぞっとして目眩がした。

 その可能性は何としても潰しておきたかった。


 まずハワードの動向を密かに探らせる。

 修道院にも手を回しアリーシャの監視も暫くは強化するつもりだ。

 もし怪しい動きがあれば、アレの出番が来るだろう。

 メリッサはある一点を見つめる。

 メリッサ専用の金庫にある一通のハワードのサイン入り白紙用紙が。

 手紙にも委任状にも化けるもの。


「私の切り札」


 ニヤリと笑いそしてもう冷たくなった紅茶に口をつけた。








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