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一つの恋の……哀別

  王太子殿下に駆け寄ろうとしたアリーシャは兄に背後から羽交い締めにされ強引に止められる。

「兄様何をなさるの?離しなさい」

 揉み合っているうちに両親が王太子殿下を応接室に案内していく。

「兄様、いい加減にしてちょうだい!エドモンド様お待ちくださいっ、離せっ」

 兄とメイド達によって進路を妨害され愛しい人との距離が離されていく。

「落ち着きなさい。先に両親がお話をするのだ」

「何故私が同席出来ないのよ?折角久し振りにお会い出来たのよ」

「後でちゃんと時間を作るからこちらで待ちなさい」

 ロビー横の小さな待合室で左右にメイドと座らされる。

「私も先に行くからお前達分かっているな」

「はい」

 そう言い残し兄様も出て行った。

「どう言う事よ、挨拶さえも出来てないのよ」

「お嬢様、先にお話をされると言う事なのでお待ちしましょう」

 そして暫くののち応接室に呼ばれる。




「エドモンド様お会いしたかったですわ」

「久し振りだな」

「酷いですわ、こんなに一人にして」

「代理でサインも無事貰ったし、今日はお別れを言おうと思ってな」

「サイン?」

「本日を以て婚約は破棄された」

「冗談にしてもタチが悪いですわ」

「いや、正式に受理されるよ。今日でお別れだ」

「えっ、えっ破棄なんてしませんわよ。結婚するのですもの」

「アリーシャ、もう無理なのだ。父親としてサインして書類も受理された。殿下は最後のお別れにいらしたのだ」

「もう決定事項で覆らないのです。いい加減諦めなさい」

 この二人は私の両親の筈よね?

「さぁ、殿下にお詫びしてお別れするのだ」

 兄様まで。

「嫌よ、何故愛し合っているのに別れるの?」

 縋る様な上目遣いで目線を合わせようとじっと見つめる。


「君の今までして来た事はおおよそ把握出来たよ。特にリリアナ嬢にした事は赦されない」

「何もしておりませんわ、私」

「彼女はね、君ごと受け入れようとしてたんだ。君を好きな私の為に」

「はぁ?受け入れる?意味がわかりませんわ」

「見習おうとしたんだ、足りない部分が自分には多いからと⋯⋯」

「あはは、勝手な想像で。侯爵家にでも都合よく吹き込まれましたの?」


「彼女はね、私にラブレターをくれたんだ」

「遺書に恨言でも書かれていたのでしょう?陥れられたから当て付けに死にます〜とか」

「そんな事しか言えないんだ、やっぱり君は⋯⋯。いや私の見る目が無かっただけだ。愚かだった」

「エドモンド様、妄言に惑わされて真実の愛が見えなくなったのですね。大丈夫私が目を覚まして差し上げますわ」

「いいや、リリアナは私を深く愛していてくれたんだ。だからこそラブレターは見せるつもりは無かったんだと思うよ。君を悪く言ったり恨んだりは一切していなかった、私との思い出を綴って有ったんだ」

「実際見る様に仕向けられているではないですか、後で発見される様に仕組んだんですわきっと!」

「侯爵家ではね最初見せるつもりは無かったらしいよ。私に促されて渋々出して来たからね」

「⋯⋯」

「侯爵も私に対しての恨言が書いてあるとでも思ったのかもな」

「⋯⋯」

「遺書じゃ無いよ、あれは紛れもなくラブレターだ。思い出を綴った後に思ったんだろう、もし目に触れたら私が苦しむと。だからリリアナを忘れて欲しいと書いてあったよずっと忘れて欲しいと」


「はぁ?意味がわかりませんわ」

「リリアナはそのラブレターと私が初めて贈ったイミテーションの髪飾りをしっかり持って飛んだんだ、あの日バルコニーから」

「う、ううっ⋯⋯」

 アリーシャの家族が思わず嗚咽を漏らす。

「同情を買おうとして⋯⋯」

「君はそんな事しか言えないの?神様は見てたんだよ」

「⋯⋯神様?」


「君には言って無かったけど私はリリアナの思い出の全てをその時から全て忘れていたんだ、顔さえも思い出せなかった。神様がリリアナの願いを聞き入れたんだ」

「⋯⋯」

「だからこそ調べた。リリアナに何があったのか、何が彼女を追い詰めたのか」



「アリーシャ嬢、さようなら。元気で」

 それだけ言うと席を立って部屋を後にする。

 事情が呑み込めなくて反応が遅れた。

「エドモンド様!」

 必死で追い掛ける、後ろ姿が遠くなる。

 馬車に乗り込んでしまう。

 倒れそうになった所を兄のロイドに抱き留められる。

「夢を見たんだ、アリーシャ。叶わない憧れの夢を……」

「ぎゃー!」

 アリーシャの叫びが響き渡った。




「……あれで良かったのかな?」

 エドモンドは従者に問う。

「はい、あれで良かったのです」

「私が惑わされ無ければ沢山の不幸は生まれなかった」

 それには誰も答えなかった。

 王太子殿下は同意が欲しいわけではない、ただ聞いて欲しかったのだ。




  それから暫くして伯爵邸から一台の馬車が辺境に向けて旅立った。

 荷物も少なく何の装飾もない平民が乗る馬車のようだ。

 辺境の修道院に向かう令嬢とメイドが乗っていた。

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